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2月22日は「猫の日」 ニャンコのヒゲは切っても大丈夫? 獣医師が臨床経験から解説

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:アフロ)

2月22日は、ニャーニャーニャーで「猫の日」です。

今日は、猫のトレードマークとも言えるヒゲについて考えましょう。

人の場合は、ヒゲを剃るなどの言葉がありますが、自分が飼っている 猫のヒゲが乱れていたら刈っても大丈夫なのでしょうか。そのことについて解説をします。

猫のヒゲはどこにあるか?

撮影は筆者の知人 猫の顔のヒゲ
撮影は筆者の知人 猫の顔のヒゲ

・口の左右、両目の上、両側の頬、あごの合計4ヶ所(全部合わせると50本程度)

・顔にある全てのヒゲの先端を結ぶと丸い円になります。

・ヒゲは顔の周りだけでなく、前足の後ろ側にも生えています。

撮影は筆者の知人 前足のヒゲ
撮影は筆者の知人 前足のヒゲ

ヒゲの役割

・空気の流れを感じることができます。

・目など、顔の器官などを保護しています。

・目の前を自分が通れるかどうかを判断しています。

・耳で捉えることのできない、微妙な空気の流れを感じることができます。

・風の向き、風の強さを感じることができます。

・闇夜の中で歩き回れるのもヒゲがあることで役立っています。

ヒゲを切るとどうなるか?

ヒゲを切ると、食欲が無くなるとか、元気が無くなるといわれています。実際に実験するわけには、いかないので、これだけヒゲに役割があるのなら、そのようなことが起こるだろうと考えていました。

ところが、筆者は、本当に猫のヒゲを全部、切られた子を診察したことがあります。

赤ちゃんを産んだばかりの母猫で、ミルクを与えていました。そこの家の子どもが、母猫のヒゲが子育てに邪魔だと思って、ハサミで全部切ってしまったのです。母猫は、精神的におかしくなり、自分の乳房を噛み切ってしまいました。それで私の病院に運ばれてきたのです。

その体験を通して、本当に猫にとってヒゲは大切なものだということを知っています。

ヒゲで健康状態がわかる

診察をしていて「この子、綺麗なヒゲをしていますね」とうっとりして褒めることがあります。飼い主にすればもっと他にあるだろうと思っているでしょう。しかし、猫のヒゲで健康状態がわかるのです。

・いちばん、ヒゲが長くて立派なのは、オスの去勢手術をしていない若い子。

・シニアになると、ヒゲが短くなり、勢いがなくなり、カーブする。

・病気になると、ヒゲが折れる。

・体調が優れてないときは、ヒゲが枝毛になる。

などです。一度、愛猫のヒゲを観察してくださいね。

ヒゲはお守り

撮影は筆者 猫のヒゲを入れるもの
撮影は筆者 猫のヒゲを入れるもの

猫のヒゲは、日本では金運、ヨーロッパでは恋愛運が上るといわれています。それで猫のヒゲをお守り代わりに持ちあるく人もいます。写真は、猫のヒゲを入れておける桐の箱です。

おまけ 犬のひげ

犬のヒゲは、猫のヒゲほどいろいろな役目がないですが、それでも風の動きなどわかるといわれています。それで、猫と同様にヒゲは切らない方がいいのです。気をつけてあげてね。

まとめ

私たち獣医師は、ものをいわぬ子を相手に診察をしています。

もちろん、飼い主に、食べる速度はどうだったか? 帰宅したら迎えに来たか? ウンチはしているか? どこで寝ているか? などを事細かに尋ねます。そして血液検査や尿検査や画像診断もします。

それ以外に、猫のヒゲを見て、健康状態や気持ちを判断したりもしているのです。2月22日は、猫の日ですが、じっくり猫のヒゲを観察してみませんか。くれぐれも大切な猫のヒゲを切ることのないように!

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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