打ち上げ目前!ハッブル宇宙望遠鏡の後継機「ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡」まとめ
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡とは」というテーマで動画をお送りしていきます。
望遠鏡はガリレオ・ガリレイの時代から人類が宇宙の情報を得るのに欠かせない道具になっています。
ガリレオは当時の望遠鏡を使って木星の4つの衛星を発見しました。
それから約400年後、現在の望遠鏡は地球から100億光年以上離れた宇宙を観測できます。
現在では地上の望遠鏡の他に、ロケットで宇宙に打ち上げられるタイプの宇宙望遠鏡が数多く活躍しています。
その中でも多くの華々しい成果を上げたのは1990年に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡です。
宇宙の年齢やブラックホールの存在など、歴史に残る発見に貢献しています。
そして、今年2021年12月には、ハッブルの後継機とされる「ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡」の打ち上げが予定されています。今回はこの
ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡についてご紹介します。
ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡の概要
ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope,JWST)は、NASAがESAなどと共同で開発している新型の宇宙望遠鏡です。
この望遠鏡は、宇宙ベースの汎用天文台という意味では、ハッブル宇宙望遠鏡の後継機にあたります。
ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡の主な任務は宇宙で最初に生まれた星「ファースト・スター」を観測することです。
宇宙はあまりに広すぎるため、1秒間で30万進み、地球を7周半してしまうほど速い光ですら遠方の宇宙に行くには数億年単位で時間がかかってしまいます。
逆に言うと、遠方の宇宙から地球にやってきた光は到達するまでに宇宙空間をはるばる何億年間も旅し続けてきた、何億年も前に遠方にある天体から放たれた光ということになります。
つまり宇宙は遠くを見るほど古い宇宙を見ることになります!
ハッブル宇宙望遠鏡は約130億年前の宇宙を観測して1万個以上の生まれたての銀河を発見しました。
これは約138億年前に宇宙が誕生してからわずか8億年後に放たれた光を、現代の地球で見ていることになります。
ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた、深宇宙探査の成果を以下の動画でまとめているので、併せてご覧ください!
そしてジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡はさらに進み、宇宙空間に最初に生まれた星、ファーストスターを見つけることを目標としています。
宇宙は膨張しているため、遠くにある星は速いスピードで遠ざかっているように見えます。
遠ざかる星からの光は波長が引き伸ばされます。これを赤方偏移といいます。
ファースト・スターの光は元々可視光線ですが、赤方偏移によって波長が引き伸ばされ赤外線になると考えられています。
そのため、ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡の観測波長は主に赤外線域となっています。
そのほか、高解像度の赤外線画像センサーと分光器を利用した系外惑星の観測、さらにはプラネットナインについても、新たな発見があるのではと期待されています。
ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡の打ち上げスケジュールは度々延期されています。
2003年の時点では、2010年に引退することになっていたハッブル宇宙望遠鏡の後継として2011年の打ち上げが予定されていました。
しかし、開発の遅れのため一旦2015年以降に打ち上げが延期されました。
その後もコストの問題や技術的な問題のために延期を繰り返し、打ち上げ予定日は2021年12月18日に再設定されていました。
しかしつい先日再延期され、現時点では12月22日以降と予定されています。
ハッブル宇宙望遠鏡との比較
ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡はハッブル宇宙望遠鏡の後継機とされていますが、そのスペックにはどのような違いがあるのでしょうか?
2つの宇宙望遠鏡の性能を比べてみましょう。
サイズ、構造
ハッブル宇宙望遠鏡は全長13.2m、直径は最大4.2mです。
望遠鏡の本体である主鏡は直径2.4mです。
これに対して、ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡は、サンシールド(遮光板)の大きさが22m×12m、主鏡の直径が6.5mです。
主鏡は1枚ではなく、18枚の六角形の鏡を組み合わせた折り畳み式の構造になっていて、オリガミ望遠鏡とも呼ばれています。
この主鏡の口径はハッブル宇宙望遠鏡の2.5倍、面積では7倍以上になります。
望遠鏡でどれだけ遠くの細こまかいものが見えるかを表すのに「分解能」という指標があります。
人間でいうと視力のようなものです。望遠鏡の口径が大きくなると、それにほぼ比例して分解能も高くなります。
人間の瞳の口径は最大で7mm程度、平均的な視力は1.0です。
これは5m 先の1.5mm離れた点を見分ける能力です。
ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡の口径は人間の瞳の約1000倍なので、その分解能を人間に例えると視力1000です。
これは、富士山頂に置いた10円玉を東京から確認できるほどの視力です。
設置される場所
2つの望遠鏡が設置される場所も大きく異なります。
ハッブル宇宙望遠鏡は高度約570kmを周回し、そこから宇宙を観測していました。
それに対してジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡は太陽-地球系の「ラグランジュ点2(L2)」というところから観測を行います。
ここは地球から150万kmほど離れた場所です。
月の公転軌道は地球から平均約38万4400kmの距離なので、その4倍以上遠いところから観測するのです。
ラグランジュ点2(L2)とは、太陽から地球に延ばした直線の延長線上にある点で、重力的に特殊な点です。
ここに置いた物体に適当な初速を与えると、地球と太陽との相対的な位置関係を保ったまま、地球と同じ周期で太陽を周回します。
つまり、太陽に対してずっと地球の反対側に留まることができるのです。
太陽光を地球で遮ることができるので、太陽光の影響を受けません。
さらに地球から150万kmほど離れた場所なので、地球が発する赤外線の影響を受けずに済みます。
太陽や地球の影響を嫌う敏感な観測装置には最適な場所といえるでしょう。
保守性
ハッブル宇宙望遠鏡は、スペースシャトル・ディスカバリー号によって打ち上げられましたが、最初に送られてきた画像はピンボケでした。
そこで、スペースシャトルでメンテナンスに行き、補正光学系を取りつけて修理した結果、鮮明な画像が得られました。
しかし、ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡は一度打ち上げると、その後の保守や修理はできなくなります。
月よりも遠い場所にある望遠鏡を保守するためにロケットを往復させるのは技術的にもコスト面でも実現不可能です。
ハッブル宇宙望遠鏡のように修理に駆けつけるというわけにはいかないため、最初から完璧に作動する必要があります。
観測波長
ハッブル宇宙望遠鏡は主に可視光線と紫外線で観測を行っています。
可視光線は地上の望遠鏡でも観測できますが、宇宙空間では大気による光の揺らぎが少なくシャープな画像が撮影できます。
紫外線は天体の温度の高い部分を観測するのに適しています。
ほとんどの紫外線は大気上層部で吸収されてしまい、地上まで到達しません。
ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡は、主に赤外線で観測を行います。
先述のように主な任務としてファースト・スターを観測するために赤外線の観測機器を搭載しています。
赤外線はチリやガスを透過する性質があり、銀河の中心など可視光線では見えない天体を観測できます。
ただし、赤外線の場合、望遠鏡や観測装置自体が熱を持ち赤外線を放射するため、観測のノイズとなります。
そのため、赤外線検出器には最新の技術による冷却装置が装備されています。
ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡は初期の宇宙について驚くべき発見をもたらしてくれるかもしれません。
打ち上げが本当に待ち遠しいですね!
繰り返しになりますが、ハッブル宇宙望遠鏡による深宇宙探査で得られた実写映像を交えつつ、その成果を以下の動画で解説しているので、ぜひ併せてご覧下さい。