NASAの記録的大発見!水星軌道より狭い領域に大質量星が密集した異常な連星系
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「記録破りの連星系を新発見」というテーマで解説していきます。
NASAなどの研究チームが地球から約5000光年の距離に、恒星系「TIC 290061484」を新たに発見しました。
この恒星系は三重星系であり、外側を公転する恒星が観測史上最も短い公転周期を持つことが確認されています。
3つの大質量星全てが、太陽系における水星の公転軌道よりも小さい非常に狭い領域で安定して存在し続けていることがわかりました。
●連星系の形成と重要性
太陽は単体の恒星ですが、宇宙においては半数以上の恒星が他の恒星と重力的に拘束し合い、お互いを公転し合っている「連星系」であると考えられています。
それだけ連星系はありふれた存在なのですが、なぜこれほど連星系が多いのでしょうか?
恒星は誕生する際、ガス雲内の高密度領域から複数の星々と共に誕生します。
そんな誕生時の恒星の高密度環境では、近接する恒星が重力的に拘束し合い、連星系を成すケースが多いのです。
連星系は、恒星の様々な性質を理解する上で極めて重要な存在です。
なぜなら連星系はその恒星の光度変化や運動の様子などから、単一の恒星系と比べて恒星の様々な特性を正確に知ることができるからです。
特に、地球から見て恒星の一部が他の恒星に覆い隠されて見える「食連星」は、恒星同士の相互作用から、恒星の質量、半径、密度、表面温度などの様々な情報を伝えてくれる貴重な存在です。
●新発見の連星系について
NASAなどの研究チームが地球から約5000光年の距離に、恒星系「TIC 290061484(以下新発見の恒星系)」を発見し、その研究成果を科学誌「アストロフィジカルジャーナル」で2024年10月に公表しました。
この恒星系は三連星系であり、外側を公転する恒星が観測史上最も短い公転周期を持つことが確認されています。
○発見までの経緯
地球近傍にある恒星の光度変化から、その周囲を公転する太陽系外惑星を発見することを目的としたNASAの宇宙望遠鏡「TESS (Transiting Exoplanet Survey Satellite)」が三連星系を新発見しました。
新発見の三連星系は地球から見ると食連星系であり、特殊な光度変化のパターンから、その記録破りな構造が判明しています。
○連星系の星々の特徴
新発見の連星系の特徴として、まず2つの恒星が非常に近い距離を公転し合っています。
2つの星の質量は太陽の6.85倍と6.11倍で、公転周期は1.8日と非常に短いです。
そしてそれらの共通重心を中心として、質量が太陽の7.9倍ある第3の恒星が少し離れたところを公転しています。
いずれの恒星も太陽と比べてかなりの質量を持っており、表面は高温で青く輝いて見えます。
第3の恒星の公転周期は25日で、これまでの3連星系の公転周期の最短記録である33日を大幅に更新し、観測史上最短記録となりました。
3つの恒星全て、太陽系における水星の公転軌道よりも小さい領域に密集して存在しており、非常に特異な例といえます。
これらの星々はほぼ同じ平面状で公転しており、重力的な干渉が最小限に抑えられていることから、密集している割に非常に安定していると考えられています。
また確定的ではありませんが、この連星系にはかなり遠く離れた位置に第4の恒星が存在している可能性もあるようです。
太陽の約6倍の質量の恒星が、3200日周期というこれまでと比べて非常に長い周期で公転している可能性があります。
この連星系の運命は、内側の星が年を取るにつれて膨張し、約2000万~4000万年後に合体し、超新星爆発が起こると予想されています。
その際には中性子星が形成される見込みです。
○次世代望遠鏡の期待
NASAの「ナンシー・グレイス・ローマン宇宙望遠鏡」は、2027年までに稼働開始予定の次世代宇宙望遠鏡で、天の川銀河の中心部方向を深くまで観測することできます。
今回の連星系を発見した「TESS」が1ピクセルで観測している領域を、ローマン宇宙望遠鏡はなんと36000ピクセル以上で観測できるそうです。
圧倒的に詳細な情報まで把握可能になり、例えばダークエネルギーの影響や銀河の形成プロセスを詳細に観測することが可能になり、宇宙の構造理解が大きく進展することが期待されています。
そんなローマン宇宙望遠鏡により、さらに多くの三連星系を発見できるはずです。三連星系はどこまで近くを公転できるのか、その周期の最短記録の限界に迫っていきます。