緊急事態宣言発令の要請も、早稲田大学は大学選手権決勝の開催を信じる。【ラグビー旬な一問一答】
祈るだけだ。信じるだけだ。
早稲田大学ラグビー部が1月2日、大学選手権決勝への進出を決めた。優勝した昨季に続き2季連続。東京・秩父宮ラグビー場で、帝京大学との準決勝を33―27で制した。
この日は、1都3県が日本政府へ緊急事態宣言の発令を要請したとみられる旨が報じられた(その後、正式に要請されたことも伝わる)。選手権決勝は11日、東京・国立競技場でおこなわれる。
準決勝の直後に会見した相良南海夫監督、丸尾崇真主将は、感染拡大防止への協力を惜しまないのを前提に試合の開催を望んだ。
以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。
相良
「コロナで大変ななか、正月に大学選手権準決勝ができたこと、無事勝利ができたことを嬉しく思っています。帝京大のフィジカルに対してどれだけ身体を張れるかが鍵でした。選手が粘り強くディフェンスをして――最後は接戦になりましたけども――しっかりと勝ち切ってくれた」
丸尾
「コロナで大変ななか準決勝を迎え、勝利でき嬉しく思います。帝京大の強いフィジカル、セットプレーに早稲田から仕掛ける。そこにフォーカスしました。できたところ、できなかったところはありますが、勝利できてよかったです」
――1都3県が日本政府へ緊急事態宣言の要請をする見込みですが。
相良
「そこは行政の判断。日本中に感染が広がらないことが第一。それは従うしかない。でも、そんななかでも、学生たちには時間が限られている。何らかのできる方法で、どんな形であれ、その場(試合)は作って欲しい。そう切に願っています」
丸尾
「それは政府が決めること。そこを変に考えすぎず、(試合が)ある事を信じて積み重ねるしかない」
帝京大学戦では、前半4分にペナルティーゴールで先制されながら、続く6分には敵陣ゴール前右でラインアウトモールを押し込み7―3と逆転。以後も相手の反則を契機にモールを組んだり、大外のスペースを突いたりと前半33分までに21―6とリードを広げた。
ハーフタイム直前にペナルティートライを喫するなどスクラムでは概ね苦戦したが、後半も持ち前の展開力を活かして22分までに33-20とした。
フルバックの河瀬諒介は2トライ1アシストの活躍で、後半28分から司令塔のスタンドオフに入った(後半40分に交代)。帝京大学の得意な突進へは、フランカーの相良昌彦のタックル、ナンバーエイトの丸尾のジャッカルなどで対抗した。
決勝の対戦相手が天理大学に決まる前、指揮官と主将はこんな話もしていた。丸尾主将の強烈な意志がにじむ。
――前半終了間際、スクラムからペナルティートライを奪われた。ハーフタイムには何と話したか。
丸尾
「特別何かを変えることはせず、それまで通り激しく行こう、と、セットプレーを中心にやりました。立ち返る部分があったので、そこに立ち返ろう、と」
――自軍スクラムの脇から仕掛ける際、相手は「丸尾、エイタン!」とその攻撃を警戒していました。心境は。
丸尾
「何人が僕をマークしようと行く時はいく。強い覚悟を持って(プレーを)選択しました」
――モールはいい形で押せた。また相手のモールへの防御もよかった。
丸尾
「マイボールのモールはラインアウトで宮武(海人、フッカー)がいいボールを放ってくれて、ジャンパー、リフターも精度高くできた。相手ボールは、(練習で)Bチーム中心に精度高くやってくれたのでいい対策ができた」
――前半、丸尾選手のジャッカルでピンチを救ったシーンがありました。
丸尾
「ショートサイドディフェンスにはこだわっているし、その精度も上げてきた。しっかりセットして前に出ればディフェンス、ターンオーバーできると思っていた。我慢強く激しくやり続けることを意識しました」
――活躍した丸尾選手、相良選手、河瀬選手らが途中で交代した。
相良
「3人とも足をつるというか、そういうところがあったので。拮抗した試合を23人で戦うという意味でも、元気な選手を入れようということでした。本当はキーマンになる選手には最後まで…というところもあるのですが、意図としてはそういうこと(足をつった選手と元気な選手を交代した)でした」
――チームの雰囲気は。
相良
「拮抗した試合でやり切ってくれた。次のステージで、選手はもう1回、やり切るという思いになっているはず。もう1回、やり切る9日を過ごし、決勝を迎えたい」
日本ラグビーフットボール協会は2日夜、「各自治体が政府に緊急事態宣言発令の要請との報道がありますが、現時点では当協会が主催する試合に関してのコメントはありません。もし、緊急事態宣言が発令された際には、その内容を十二分に理解することに努め、速やかに対応を検討していきたいと考えます」と書面で説明した。