スマホ決済や電子マネーの「ポイント」は集めないほうがいい
■ 広告キャンペーンの裏側
ファミリーマートが始めた「ファミペイ」に、申し込みが殺到しています。たった1日で100万ダウンロードを記録したそうです。「ファミチキ」などのクーポン券がもらえるキャンペーンのせいでしょう。
セブン-イレブンも「セブンペイ」をスタート。500億円以上をポイントやクーポン券で還元するキャンペーンが始まっています。
「●●ペイ」と呼ばれるスマホ決済が大型キャンペーンを繰り返しています。私もキャンペーンを利用して、2種類のスマホ決済を新たに始めましたが、これ以上は増やしません。このような広告キャンペーンには、戦略的に付き合わないと、かえって損するからです。
私は営業・マーケティングコンサルタントですから、消費者というより、企業サイドで物事を考える「思考のクセ」があります。どんな広告キャンペーンも、企業の思惑が絡んでいます。
■ 企業の思惑
私たちコンサルタントが店舗マーケティングを支援するとき、必ずお客様のデータベース化、ロイヤルカスタマー化をどうするかを考えます。「客単価」も「リピート率」もアップできる取組みです。あらゆる手段を使ってお客様に専用カード、専用アプリを持ってもらうよう仕向けます。
お客様のお得感アップ、利便性アップのためだけに、企業側がポイントカードやアプリを用意するはずがありません。それらの仕掛けを運用するために企業側が支払うコストは、人員や情報システムなどを含めて大変な額にのぼります。さらに、会員募集のために大規模キャンペーンをすれば、電通や博報堂などの広告代理店に支払うコストも尋常ではないほど膨らみます。
そういった大きなコストを企業が支払っても回収できると考えているわけです。新たなアプリをダウンロードしたり、ポイントカードを作れば作るほど損をすると考えたほうがいいでしょう。
■ 私は損をしていない、というバイアス
「そんな世の中のカラクリはわかってる。でも私はキャンペーンをうまく利用し、損はしていない」
と考える人は「自信過剰バイアス」にかかっています。
人間の消費行動は、後付けで肯定する傾向があり、「企業のマーケティング戦略に引っかかってムダにお金を支払った」などと、なかなか自覚できないもの。
スマホ決済もポイントカードも、習慣化された消費行動だけのために作ることをお勧めします。毎月必ず利用する飛行機、毎回必ず行く美容院。必ずここで買うと決めているコンビニエンスストアで利用できる決済手段なら、始めてもいいでしょう。しかしそうでなければすべて断ります。「自動ノイズ発生装置」を手に入れるだけだからです。
店員から「ポイントカードを持ってますか?」と尋ねられてはじめて「ああ、そういえば持っていた」と思い出すぐらいのレベルならOKです。店員に言われる前からポイントカードを出すような人は、ポイントを意識し過ぎ。
ポイントを貯めることに意識を向けはじめると、消費行動に影響を与えます。「あと1000円買えば、ポイントが余分につく」「どうせいつかは買うんだから、ここで買えばポイントが増える」という雑念が生まれるのです。
■ ポイントを集めないほうがいい理由
富裕層の人ほど、財布はスマートです。財布の中に、ポイントカードがいっぱい入っていることなどあり得ません。「●●ペイ」のアプリをスマホにダウンロードしまくっている人も多くはいないでしょう。
お金持ちだからポイントなどに興味がない、というわけではなく、何事にも、自身の判断基準にしたがって自己管理しているからです。「ポイント集め」が趣味ならいいですが、ポイントやクーポン券は「ノイズ」「雑念」を自動発生させる装置のようなもの。
先述した通り、どんな広告キャンペーンも、企業の思惑が絡んでいますから、それを見抜いたうえで利用することをお勧めします。