溢れかえる新型コロナの情報 信頼できる情報発信に尽力する医師たち
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関して、毎日様々な情報が飛び交っています。
そんな中、専門家集団がSNSを使って精力的に情報発信を始めています。
4月3日に開設されたクラスター対策班の公式Twitterアカウントは、あっという間にフォロワー数が40万人を超えました。
同月、専門家委員会に関連する専門家たちも「コロナ専門家有志の会」を立ち上げ、こちらの公式アカウントのフォロワー数も16万人を超えています。
また有志の会はnoteとも連携し、次々と一般に役立つコンテンツを発信されています。
他にも、感染症や公衆衛生の専門家たちが、Twitterで独自に情報発信されているのが目立ちます。
Twitterやnoteといった情報収集ツールを使い慣れた人たちは、こうした専門家らの発信を毎日見ることで、信頼性の高い一次情報に触れることができます。
かつてのSARSや新型インフルエンザが流行した時とは比較にならないほど、情報収集のあり方が大きく変化していると言えます。
一方で、「情報源が多すぎて何を信用していいか分かりにくい」という声も聞かれます。
今回は、情報収集のあり方について、感染症危機管理専門家(IDES)として世界各地で活動経験を持ち、現在クラスター対策班の一員として情報発信されている、米国感染症内科専門医・米国予防医学専門医の神代和明医師にお話を伺いました。
(※本インタビューでは、クラスター対策班としての発言ではなく、神代和明個人の意見として発言しております)
一般の方々が情報収集するには何に注意すればいいでしょうか?
私は、「何か心配ごとがある時は、まずは国からの発信を参考にしてほしい」と伝えています。
例えば、今回のインタビューでも引用していますが、厚労省のサイトや米国疾病管理予防センター(CDC)のサイト、ヨーロッパからですと欧州対策疾病センター(ECDC)には、一般論ですが、現時点でほぼ「確実である」と分かっている情報を載せている場合が多いです。
また、世界保健機関(WHO)からの情報も有用です。
今はGoogle Translateのような便利な翻訳ツールがあるので、英語が読めない方でも欧米から発信された情報を収集することができます。
とにかく、ググったり、テレビを見たりして得た情報に「本当だろうか?」と不安になった時は、まず公的情報を探してみてほしいと思います。
もし公的情報と異なる情報を得た場合、それは(まだ公的情報として載っていない)新しいことなのか、本当に正しいことなのか、常に疑問を持つことが大切ではないかと考えます。
クラスター対策班や有志の会はどのような情報発信を目指されていますか?
クラスター対策班や有志の会は、「国が対応するのが難しい発信を担っている」という位置付けだと思います。
まず、クラスター対策班の公式アカウントは、「クラスター対策に関する科学的な解説」が主体です。
詳しく知りたい人向けの情報発信、と言うべきでしょうか。
一方、有志の会は、例えば「再生産係数とは何か」とか「3密とは何か」など、専門家委員会の提言をなるべく分かりやすく噛み砕いて説明するのが目的です。
クラスター対策だけでなく、それ以外の知識も含めて、COVID-19に関わる情報を広く紹介しています。
いずれも独自の発信ですが、厚労省とは連携を取りつつ動いています。
個人の解釈という面もありますが、好き勝手に私見を話しているわけではありません。
信頼できる公的な情報源の一つとして、多くの方々に利用していただきたいと思っています。
こうした危機においては、公的機関からの情報発信や啓発が大切と感じます
私たち科学者は、多少のずれはあったとしても、何とか科学的知見を政策に反映させたいと考えています。
行政官と意見を戦わせながら、ベストな落とし所を日々探っています。
行政が科学者とともに協力しあって、同じ箱の中で感染症健康危機にシステマティックに取り組むのは、今回が初めてのことだと思います。
今後、新たな感染症や、感染症以外の健康危機が起きた時にも、同様な対応ができればいいなと思いますし、今回だけで終わらせてはいけない、とも思います。
様々な国が、健康危機管理に対応する「エマージェンシーオペレーションセンター(EOC)」と呼ばれる枠組みを持っていますが、日本も同様な仕組みを常時起動できるような方法を考える重要な機会だと思います。
平時から、科学の独立性が維持され、かつ政策面とうまく連携できるような仕組みづくりが大切だと強く感じています。
<第3回に続く>
(聞き手・編集:山本健人、協力:石黒義孝;本情報は4月27日時点での情報に基づいています。)