「迅速に一律で10万円以上現金給付を実施して欲しい」。緊急学生アンケート
感染拡大防止のために幅広い層への「生活保障」を
3月18日に「国民一人あたり10万円給付」を実施すべきだと書いて1週間が経つが(上記ツイートで書いたように、その時点でだいぶ遅いと感じていたのだが)、まだ大型の緊急経済対策が決まらない。
2月13日に第一弾の緊急対策を決定して以降、矢継ぎ早に緊急対策を実施しているが、下図を見ればわかるように、現時点(第二弾まで)では、予算規模が小さく、対象も明確な困窮者に絞っている。
報道によると、現金給付も所得制限をつけるという方向になりつつあるそうだが、生活困窮者に対しては第二弾の緊急対応策に含まれていた「生活福祉資金・緊急小口資金の特例貸付制度(最大80万円が無利子・保証人無しで貸してもらえる)」が3月25日から始まっており、次に必要なのはよりカバー範囲の広い対応策、そして何より「感染拡大を防ぐため」の生活費の支給(現金給付+納税/公共料金の延納・減免)である。
現金給付が優れている理由は、3月18日に書いた記事でも紹介した通り、社会保険の公平性だけでなく感染拡大防止の点でも優れているからである。
再び、グレゴリー・マンキュー ハーバード大学教授のブログ記事を引用する。
「外部性」のことを考えれば、一律ですみやかに現金給付を実施する、生活にかかる経費(税金や公共料金等)を削減するというのが「絶対的に」正しいのだが、いまだに「所得制限」や、景気刺激策と混同した「商品券」などの議論が行われている。
商品券に関しては、「貯蓄に回らないから」という理由があるそうだが、結局浮いた現金が貯蓄に回るだけで、使い道が限られる上、余計に時間や事務費用がかかりデメリットしかない。
どうしても、富裕層には支給したくないというのなら、落ち着いたタイミングで復興税のように1年程度最高税率を上げて回収すれば良い話であって、その細かい制度設計を議論している間に、多くの人々が困窮に陥りつつある。生活困窮者を救う、という意味でも所得制限は筋が悪い(その上、所得減を早急に把握することは難しい)。
困窮者を特定しきれない「コロナショック」
特に目が向けられていないのが学生である。
各種業界やフリーランス等の「わかりやすい」困窮者に対しては、政府・与党内でもヒアリングが行われているが、学生に対しては行われていない。
このままでは、学生や中間世帯が支援の対象から漏れることは明らかである(そしてその「中間世帯」でさえ、貯金もなく、生活費に困っているのが日本の現状である)。
日本人留学生の奨学金停止の問題に関しては、留学中の学生が声を上げ、それを日本若者協議会でも政治家に直接伝えたことによって、奨学金の継続は決まったが(早急に動いて頂いた公明党の浮島とも子衆議院議員、同じく公明党の三浦信祐参議院議員、国民民主党の城井崇衆議院議員、自民党の武井俊輔衆議院議員、その他関係者の方々に感謝したい)、まだ自費帰国+自費隔離の問題は解決されていない(この2つに関しては追加の予算措置が必要であり、総じて日本政府の問題は「資金の出し渋り」にある)。
関連記事:「自己責任」すぎる日本人留学生へのコロナ対策。政府は早急に対応すべき
そして、飲食店でアルバイトをしている学生も多く、自粛要請の影響が直撃している。
こうした現状を伝えるため、日本若者協議会では会員の学生(中学生〜大学院生)を対象にアンケートを実施、他に若手研究者の待遇改善を求める「Change Academia」、高等教育の無償化を求める「FREE」が実施した調査の結果も含めて、政府与党に要望を提出した。
中には「休業手当(アルバイトも対象になる)」や学費納付の猶予など、既に制度が整っているものもあるが、一部「学生の声」を紹介したい。
アルバイトや仕事がなくなり、学生生活が困窮している
・「バイト先(塾)が2週間休業になり、学費を確保できない」
・「バイトを一つしかしておらずそのバイト先が営業自粛してしまったためお金が稼げず今現在3月の収入が0になってしまい困っている。新しいバイト先を探すも今月分は賄え無さそう、、、」
・「営業のアルバイトをしている就活生です。全てのシフトが削除されてしまい。生活費だけでなく就活費も困難です」
・「学内イベントなどの補助をする付設研究所の助手のため、イベント類が軒並み延期になり予定が立たない。収入も入らない」
・「一律現金給付が見送られる話があるが、実家はいわゆる制度上の高所得者にあたっても、年収900万程度で子供二人を私立に通わせていたり、ローンの支払いがあるなどで余裕があるわけでもない。コロナウイルスは全員平等にリスクとなり、全員にその景気悪化は降り注ぐので、一刻も早い一律現金給付を求める」
授業や研究計画への支障
・「学校に行けない:高3になる目前で選択科目や評定について悩むことが多い時期であるにもかかわらず、先生への質問や進路相談ができない」
・「家にWifi環境がないので、お金を払ってカフェに滞在するか、大学に行くしか選択肢がない。そうすると、経済的負担もあるし、感染リスクも高まる。引っ越し直後で、Wifi環境をまだ揃えられていない新入生も多数いる。Wifi環境構築のために工事をしなくてはならないが、新年度シーズンであり、業者の予約も中々取れない。寮でさえ、結構遅いので、賃貸はより一層遅い」
・「研究集会がなくなったせいで、予定していた現地での研究調査ができなくなった」
・「査読が長引いている投稿済み論文の結果が出ない。この状態の論文が2本あり、今後の論文投稿スケジュールと就活が依存しているので、方向性が決められず困っている」
・「国際学会が中止になったことで業績が一つ減った。/ このまま続けば、進路に影響するのではないかと心配している」
・「研究遂行のための機関(学校や国会図書館)の閉鎖によって、史料研究ができない」
・「国内経済全体の停滞などから、来年度の収入(学振PDや応募ポストなど)について大きく不安」
留学生の自費帰国、自費隔離への対応
・「家族に迎えに来てもらうことで、その家族も同様に隔離となってしまい、本来働けるはずだった親の仕事にも影響してしまい、家計へのさらなる負担になっている」
・「私は留学生だったのだが、コロナの影響で日本に途中帰国を余儀なくされた。大学からコロナの影響で帰国命令がいきなり出されて、そこからできるだけすぐ帰れって言われてすぐ飛行機を変更して半年住んでいた部屋を全部片付けるのは本当に大変だった。(荷造りが普通に2日とかで終わる訳ない)
状況が良くなったらまた留学地(ドイツ)に戻れるかもしれないが、7月までに終息しない場合もあるわけで、、。今私はドイツの寮に荷物少し置いてて、寮の家賃も住んでないのに払っている。戻れなかったらそこがもったいないし困ったなと思っている。またドイツに戻る場合の航空券代もこっち持ちだし、、。ドイツに戻ることができなくなった場合、それを知るのは5月・6月頃になるはず。そうすると秋まで復学もできず半期私は何もできない、宙ぶらりんになってしまうのでは?という不安もある」
・「帰国の際の航空券代、事態が収束し留学地に戻る場合の航空券代の支援(もちろん全額でなくても構わない)」
・「多くの都立高校に設置している『留学先での単位を日本でも認めて、学年を落とさなくても大丈夫っていう制度』について。途中帰国したため、留学先で単位取得ができないままになっている。このままだと学年落とさなくちゃいけなくなる。ただその経済的余裕もない。コロナの影響で一時帰国したために、もう一年学校に在学しないといけない、みたいになると経済的に厳しくなります。単位認定若しくは学費負担等の救済措置が欲しいです」
補償のない自粛要請
・「自粛だと、飲食店バイトなどはなくならないので外出控えるにも控えられない。バイト代がないと暮らしていけないし、バイト先もお店を休んだら潰れてしまうと思うから、結局行動を変えられない。自粛がどの程度なのか、何をしたらいいのか、安倍首相の会見を見たがよく分からなかった。今の日本の状況がはっきり分からず、結局自粛要請を無視した行動を取ってしまう」
・「自粛要請の線引きが曖昧で、サークル活動においてAサークルは全面禁止されているがBサークルはほぼ通常通りということが実際に起きている。また、音楽活動をしているが、中止になったイベントの主催者へのキャンセル料を求められている。当然支払うが、負担は大きい。1出演者ですら負担に思うのだから、主催者は相当だろう」
・「控えるだとか要請するだとか曖昧な言葉を使わず、明確に現状を説明して欲しい。カフェに行くくらいならオッケーですとかライブハウスはダメですとか。政府がコロナの深刻さを発信するとき、表現がはっきりしてないと、特に遊びに行きたいしか考えていない中高生には事態が深刻であるにしろ、そこまででもないにしろ何もかもが全く伝わらない。今政府が本気でやばいと思っていて未来を担う人間を失いたくないなら明日にでも学生の外出禁止を強く訴えるべき。
そして国民全体に外出禁止を命令する事態になった場合、自粛期間中の一部給料や家賃・光熱費等を負担すればほとんどの国民は受け入れる」
・「自粛要請を出すなら、具体的に『〇〇は絶対にやめてください』と言って欲しい。線引きを明確に。また、それに対する企業や個人の損失の責任は、自粛要請を出している以上政府にあるので、しっかりと現金で補填をしてほしい。また、それとは別枠でこのような情勢で景気の悪化は避けられないので、緊急景気刺激策として赤字国債を発行しての機動的な財政出動、具体的には一律10万円以上の現金給付を迅速に行うことを提案する。商品券や高所得者の排除には事務的負担がかかり即応性がなくなってしまう。後で所得税で高所得者から取ることは出来るのだから、一刻も早く一律に現金給付を求める」
一律の現金給付に一縷の望みも
こんな状況下にありながら、明らかに的外れな政府検討案に呆れるばかりであるが、一部の与党議員からは「正論」も出ている。
公明党税制調査会事務局長の竹内譲衆議院議員は24日、全ての国民に1人当たり10万円を給付すべきだとして、「対象者を限定するのは、自治体の手間と時間、コストが大きく望ましくない」と主張。
党の財務・金融部会がこの日にまとめた提言素案でも、同様の内容が盛り込まれた。
また、公明党の伊佐進一衆議院議員も、所得制限をつけても、正確な「困窮者」を見つけられず、「一律で配るべき」だと指摘した。
なお、ここ数日ニュースで話題になっている「業界ごとの商品券」はあくまで自民党の部会で挙がったものであり、「給付や減税で個人の可処分所得を増やすことで、消費を回復させるべきというのがほとんどの自民党国会議員の考え」だということは指摘しておきたい。