昼食代の節約35.9%、水筒の持参26.0%…サラリーマンのこづかい防衛作戦の中身
節約方法のトップは「昼食代を削る」
多くのサラリーマンにとってこづかいはもっとも身近で、自分自身に大きな影響を与える金銭問題となる。そのこづかいが自分の望む額を下回る場合、多様な工夫を凝らし、節約をすることになる。今回は新生銀行が毎年発表している、サラリーマンのこづかい事情を調査した定点観測の報告書「サラリーマンのお小遣い調査」(※)の最新版にあたる2023年版などから、サラリーマンにおけるこづかいの防衛作戦の実態を確認する。
今報告書によればサラリーマンの直近における平均こづかい額は4万557円(月額)となり、昨年と比べて増加した。
個々の金銭感覚や消費実情はそれぞれだが、この額では不足する人もかなりいる。必要経費に近い昼食代、携帯電話料金などを差し引くと、自分の自由意思をある程度以上反映できる余剰資金にどれだけ残せるかを考えれば、誰もが納得できるはず。
「こづかいが足りない、首が回らない」。その際、どのような工夫・節約で「こづかい防衛」を果たしているのだろうか。やりくりをしている人は全体で8割近くとなった。
そこでやりくりをしている人に限定し、上位項目について年齢階層別に区分し、グラフ化したのが次の図。全体、そして各階層でも「昼食代(を削る)」がもっとも多く、3割台の結果が出た。
40代の昼食代節約率は39.3%と、他の年齢階層より高め。出費が何かとかさむため、日々使うことになる昼食代へ注意を払う人が多いということか。
「飲む回数(を減らす)」は全体で28.0%。サラリーマンにとっては昼食同様、数少ない憩いの場、息抜きの時間であることから、それを減らさねばならないのはよほどの苦痛に違いない。20代で高い値が出ているが、若年層は付き合いなどでの飲みにはドライな考えを持つことから、むしろよい大義名分になったのではとも考えられる。
続く回答は「水筒持参」で全体では26.0%。20~30代が低く、40代は特に高い値。同じ持参の「弁当持参」よりも値が高めなのは(30代ではむしろ「弁当持参」の方が高いが)、弁当を作る・作ってもらうよりも気軽に用意できるからだろう。その「弁当持参」では40代が一番高い値を示している。既婚率が高く子供がいる可能性も高い、つまり子供の弁当作りの際に一緒に作ってもらえる機会が多いであろう30~40代で高い値が出ているのは、必然の話かもしれない。
「衝動買い(を)避ける」は全体で24.4%だが、50代は高めの27.2%。ちょっとしたもののはずみ、勢いに任せてサービスを受けたり商品を購入してしまう行動を、できるだけセーブする心がけ。普段衝動買いの機会が多い人ほど、それをひかえる・止めることでこづかい防衛の効果が出ることを考えれば、効果がある手段として多くの人が選択しているのも道理は通る。20代の値が低めなのは、衝動買いは仕方がないとあきらめているのかもしれない。
節約しても足りなかったらどうしよう
出費がかさむ、あるいは支出したいものがある、しかし節約しただけではどうしても足りない。その場合、どのようにしてその資金をねん出するのか。サラリーマン諸氏におけるもっとも多くの人が同意した回答は、「使わずに我慢」だった。6割近くの人が「こづかいが足りない時は我慢して使わない」と答えている。
後述するが「使わずに我慢」は数年ほど前の景況感の悪化時には、増加の傾向を示していた。こづかい面では「サラリーマン」ならぬ「ガマ(ン)リーマン」的な状況だったといえる。もっと、減少に転じた昨今でも他の項目と比べれば、群を抜いて高い値を示していることに違いはない。
次いで多いのは「ポイントで買物」「預貯金取り崩し」「家計からねん出」。不足理由次第だが、一時的な出費、突発事項による不足の場合(例えば友達の結婚式へのお呼ばれ)ならば、それも仕方あるまい。もっとも、ポイントでできることは限られているが。
直近2023年調査分から項目に加わった(細分化。2022年までは「副収入」のみだった)された「フリマやオークションで副収入」は5.5%、「FXや株式で副収入」は4.8%。ねん出できるとの回答が、意外に多いものだと感心させられる。これらの手段は必ずしも「収入」が手に入るとは限らないからだ。むしろさらにこづかいが減る可能性も十分にある。
このねん出方法の上位陣、気になる項目につき、経年変化を見たのが次のグラフ。
「預貯金取り崩し」「家計からねん出」「クレカ利用」のような、他方面から融通する方法は中期的に減少している。他方「使わずに我慢」は2011年から2012年にかけて大きく増加した後はおおよそ高止まりにある。この上昇が始まった2011年は、こづかい額が大きく減少した2010年の翌年にあたり、こづかい実額の大削減を受けて、サラリーマンにおいて心境の大きな変化が生じたことを示している。具体的には「やりくりしてもどうにかなる額ではないので、あきらめよう」といったところか。またこの数年は増加の動きにあるのが気になるところ。消費税率引き上げや新型コロナウイルスの流行がこづかい不足につながり、しかし手の打ちようがないために我慢するケースが増えているのかもしれない。なお2023年に「使わずに我慢」が大きく減っているのは、社会情勢の変化のためではなく、設問の選択肢が増えて回答値が大きかった「使わずに我慢」に影響が生じたものと考えられる。
出費上の我慢は浪費を防げるとの考え方もできるが、同時にストレスは溜まる。浪費を奨励するわけではないが、6割近くが「足りなかったら我慢する」との状況は、健全か否かについて判断に苦しむレベルである。見方を変えればこの値が、2010年当時の50%台半ばぐらいにまで低下すれば、サラリーマンのこづかい事情も改善の兆しが見えてくると考えればよいのだろうか。あるいはサラリーマンの心情そのものに大きな変化が生じ、この値はこの水準のまま半固定されてしまうかもしれないが。
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※サラリーマンのお小遣い調査
直近年分となる2023年分は2023年4月25日から28日にインターネット経由で行われたもので、有効回答数は2718人。男女会社員(正社員・契約社員・派遣社員)に加え、男女パート・アルバイト就業者も含む。公開資料で多くを占める会社員は男性1252人・女性842人。年齢階層別構成比は20代から50代まで10歳区切りでほぼ均等割り当て(実社員数を基にしたウェイトバックはかけられていないので、全体値では社会の実情と比べて偏りを示している場合がある)。未婚・既婚比は男性が43.5対56.5、女性は56.8対33.2。
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