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強敵撃破の近江 次は因縁の相手と41年ぶりに対戦!

森本栄浩毎日放送アナウンサー
3大会連続初戦突破の近江。2回戦では鶴岡東と41年ぶりに対戦する(筆者撮影)

 1回戦屈指の好カードと注目された鳴門(徳島)との初戦を8-2で快勝した近江(滋賀)。悲願の甲子園初優勝へ絶好のスタートを切った。2回戦では鶴岡東(山形)と対戦するが、近江が甲子園初出場した昭和56(1981)年の1回戦で当たって以来、41年ぶりの顔合わせとなる。(文中敬称略)

鶴岡東は当時、鶴商学園

 近江は鳴門戦の勝利で甲子園通算26勝(春9、夏17)となった。うち25勝が多賀章仁監督(62)の指揮によるものである。残る1勝が、先述の初出場時。鶴岡東は当時、鶴商学園という校名で、ユニフォームはグレー縦じま、深緑のアンダーシャツで、現在と大差ない。41年前の大会では、同校の三浦淳一主将が立派な選手宣誓をした。一方の近江は、今や高校球界の常識となっている「近江ブルー」のユニフォームではあったが、胸の文字は漢字で「近江高校」。県大会までは太いゴシック体で「OHMI」だった。率いた監督は、佐賀龍谷~法大OBの田中鉄也さん(故人)。のちに綾羽を率い、メジャーリーガー・前田健太(34)のいたPL学園(大阪)と秋の近畿大会で戦うなど、甲子園まであと一歩に迫った。

守り勝った近江が初陣飾る

 試合は近江の2年生エース・加藤州宏(くにひろ)が、ゆったりしたモーションから速球を低めに投げ込むが、失策に乗じて鶴商学園が2回に2点を先制。追いかける近江は3回、9番・森国光晴(2年)の三塁打を足掛かりに追いつくと、中盤にはスクイズと森国の適時三塁打で、4-2とリードを奪う。森国は3安打全てが長打という活躍ぶりだった。熱戦は終盤まで1点を争う攻防となり、8回には疲れからか、加藤が死球を連発して押し出しで1点差に迫られる。そして9回2死となっても諦めない鶴商学園は、再三の美技で近江の好機をつぶしてきた遊撃手の三浦主将が三塁打を放ち、同点機を迎える。しかし加藤が最後の力を振り絞って三ゴロに抑え、近江が4-3で逃げ切った。加藤は速球を武器に10三振を奪い、要所でバックが好守を見せたが、将来の近江の姿を予感させるような試合運びは、まさに伝統の始まり。その因縁浅からぬ相手が2回戦で待ち受ける。

当時のエースは現在の山田に通じる

 見事、初陣を飾った近江は、2回戦では打線が振るわず和歌山工に完封負けしたが、エース・加藤は典型的な正統派右腕で、近江の投手の礎と言うべき存在。近江の40年にわたる歴代エースを見ても、木谷寿巳(元楽天)、小熊凌祐(元中日)、石田光宏(関大~東京ガス)、京山将弥(DeNA)ら、右腕の本格派が圧倒的に多く、筆者は加藤投手こそが原点であると確信している。その系譜は現在のエース・山田陽翔(3年=主将)にまで受け継がれ、山田は近江史上、最高のエースとなった。ちなみに加藤さんは現在、近江のOB会長として、後輩たちを優しく見守っている。

鶴岡東は初戦3本塁打で点の取り合いか

 さて、肝心の試合の展望であるが、近江投手陣と初戦3本塁打12得点の鶴岡東打線の勝負が最大のポイントになるだろう。投手陣と敢えて表現したのは、多賀監督が山田に先発させるか、星野世那(3年)、河越大輝(1年)の両左腕のいずれかに先発を任せて、山田を救援に回すか、これによって鶴岡東の対応が大きく変わってくるからだ。山田が先発すれば大量点は考えられないが、先発を打ち崩して山田を引きずり出す展開に持っていければ、様相は一変する。ただ、近江の打線は好調なので、5点以上は取れるだろう。前述の「甲子園デビュー」時とは違って、大味な点の取り合いも予想できる。悲願の初優勝へ、近江は因縁の相手を倒して勢いに乗れるか。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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