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わかりづらい「スマートワーク経営」 ~スマートワーク経営調査でどんなことがわかったか?

横山信弘経営コラムニスト
(写真:アフロ)

わかりづらい「スマートワーク経営」

日本経済新聞社は12月17日、「働きやすさ」の視点で格付けした「スマートワーク経営調査」をまとめ、発表しました。その結果、社員の能力を最大限に生かした会社が、高い成長につなげているという。

「スマートワーク経営」とは、「1.多様で柔軟な働き方の実現」「2.新規事業を生み出す体制」「3.市場を開拓する力」の3つの要素によって、組織のパフォーマンスを最大化させる取り組み。いかにも抽象的で、わかりづらい。

わかりづらいのは、前述した3要素が同じ階層(レイヤー)に並んでいるからです。「多様で柔軟な働き方の実現」をするから、「新規事業を生み出」し、「市場を開拓する力」が芽生える――というのであれば、確かに「スマートなワークスタイル」が実現できている会社は違うな、と理解できます。

しかし、これが逆だとどうでしょうか。

「新規事業を生み出」しているから、事業が高い成長を記録している。だから「多様で柔軟な働き方」が許容できる、というのであるなら。……それなら、普通の「理想的な経営」のあり方です。

同じように、

既存の事業で「市場を開拓する力」があるから、企業の高い成長が実現した。だから「多様で柔軟な働き方」が実現した、というのであるなら。……これも普通です。理想的ではありますが、従来の考え方と同じ。「スマートワーク経営」といった、あらたなネーミングを付与する必要もありません。

「スマートワーク経営」なんてあるのか?

私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。「働き方」「ワークスタイル」を変えるためには、まず「結果を出してから」というスタンスをとっています。

働き方を変えるから……>好業績につながる

のではなく、

好業績になるから……>働き方を変えられる

のです。

社員の能力を最大限に引き出そうとするから……>高い成長につながる

のではなく、

高い成長をしようとするから……>社員の能力を最大限に引き出せる

のです。

本当に成果を手に入れたいなら、この違いを理解すべきです。

メディアや調査会社はそのことを理解せず、「原因」と「結果」の順番を反転させて報道しているようにしか思えません。

現在の”実態”だけを調査・分析したら、確かに「柔軟な働き方」「社員のモチベーションアップ」が「好業績」「高成長」につながっているように見えるでしょう。しかし、これは新しい発見ではなく、昔から普通に言われていることです。

経営のネーミングを時代の潮流に合わせて発表することで、経営の現場が混乱しないかと、コンサルタントとして危惧します。業績が停滞している会社が「働き方」だけを変えても意味がありません。社員に「働きがい」を感じられるように配慮しても、正しい答えは見つかりません。

企業に融資している金融機関やファンド会社は理解いただけるでしょう。「そんな甘いものではない」と。「結果」だけを調査するのではなく、その「原因」や「プロセス」についても調査し、報道することも考えていただきたいですね。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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