注目楽曲を数字化…CDやインターネット配信の「ミリオン認定」などの実情をさぐる(2023年公開版)
創作者にとって「ミリオン(100万)」は金字塔的存在であり、ヒットの代名詞に他ならない。日本の音楽業界における「ミリオン」の実情を、日本レコード協会が2023年3月に発表した音楽業界に関する白書「日本のレコード産業2023」から確認する。
書籍やゲームソフト市場でもよく使われている言い回しで、作家・出版元の立場からは夢、目標の一つ「ミリオンセラー」(100万単位以上売れること)。しかし「日本のレコード産業」では数年来この言い回しは使わず、代わりに「ミリオン認定」なる言葉を用いている。これは「会員各社からの申請に基づいた出荷枚数」を定期的に確認し、「発売日からの累計正味出荷枚数が100万枚を超えた場合」に認定する称号である。また累計正味出荷枚数が200万枚に達した場合、その時点で改めて2ミリオンが認定されるとともに、それ以降は100万枚毎に改めて認定されることになる。
ちなみにミリオンより下には10万枚以上の「ゴールド」をはじめ、25万枚以上の「プラチナ」、50万枚以上の「ダブル・プラチナ」などがある。あくまでも出荷枚数であり、販売枚数よりはハードルが低いことに留意しなければならない。
次に示すのは、過去の分も合わせ、経年の「日本のレコード産業」で確認できる限りにおける「ミリオン認定」の推移。「アルバム」はミリオン認定の数、「(アルバム2ミリオン以上)」はミリオン認定のうち2ミリオン以上の認定作品数を意味する。
直近分となる2022年はアルバムではミリオン認定1本、シングルはミリオン認定1本。
●アルバム
■ミリオン
・Snow Labo. S2(Snow Man)
●シングル
■ミリオン
・ツキヨミ/彩り(King&Prince)
※年月表記が無いのは2022年中発売
シングルはいわゆる「選挙」や「握手会」との絡みをはじめとするさまざまな「仕組み」もあり、ここ数年来の状況から大きな変化はなかったが、2022年では新型コロナウイルスの流行による外出忌避感も影響してか、ミリオン認定に至る作品は1本しか登場しなかった。
2014年に生じた、グラフの緑線の大きなイレギュラー的動きだが、これは2014年発表分からミリオン認定のカテゴリ区分に変更が生じたことによるもの。これまで「着うた」「着うたフル」はCDとは別途「音楽配信」として数え、さらにパソコン(PC)やスマートフォンなど向けの「PC配信(シングル)」は今件項目では対象外としていた。しかし2014年分から「着うたフル」「PC配信(シングル)」を統合して「シングルトラック」として数え、「ミリオン認定作品」に加えている。
2014年分では2014年1月において、これまで数えていなかった過去の「PC配信(シングル)」分の作品が大量にミリオン認定されている。つまり2014年分が跳ね上がったのは、2014年に大量のミリオン認定作が突如出現したのではなく、これまで未認定だったものが一挙に認定されたことによるもの。
2015年以降はそのイレギュラー的な動きも収まり、2022年では全部で3タイトルがカウントされる形となった。ちなみに2022年中に「配信を開始」し、ミリオン認定されたのは皆無である(2019年開始が1タイトル、2020年開始が2タイトル)。
2012年以降は携帯電話市場におけるスマートフォンへのシフトが進み、それに併せてモバイル端末の有料音楽配信市場が大きく変動、従来型携帯電話(フィーチャーフォン)による「着うた」「着うたフル」の需要が大きく減退している。その動向はシングルトラックのミリオン認定数の減少として表れていたが、2014年からカウント方式が変わり、パソコンやスマートフォン向けの有料配信もカウントされることで、動きが読みにくい状況となったのは否めない。
かつて宇多田ヒカルの初アルバム「First Love」は初回出荷280万枚、1999年だけで800万枚を超えるヒットとなった。このような「超ヒットセラー」は、現在の市場では奇跡でも生まれえないのが現実。2014年に顔を見せたあの「アナと雪の女王」ですら、アルバムはダブルミリオンに届いていない。趣向が分散・拡散し、手法が多様化する以上、同一作品が集中的に売れることが難しくなったのが一因と言える(もちろん無料の音楽配信に音楽利用客が流れているなど、複合的要因はある)。2013年以降、定額制の聴き放題サービス部門が大きく伸びたのも、その状況変化を示す数字の一つであろう。
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