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ゼロコロナ抗議デモ「習氏が中国全土を統制できないことの表れ」「中国はスパイ」超タカ派ボルトン元補佐官

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 中国各地に広がっている、中国政府のゼロコロナ政策に対する市民の抗議デモ。“天安門事件以来の大規模なデモ”とCNNは指摘しており、デモ参加者の中からは「PCR検査はいらない。自由が欲しい」と叫ぶ声や「習近平は辞めろ」と習政権に退陣を求める声もあがっている。

 トランプ前大統領の下で国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めた、超タカ派として知られるジョン・ボルトン氏は、現在では、すっかり世界の安全保障問題に関するご意見番となってしまった感があるが、そんなボルトン氏が、イギリスのラジオ局LBCタイムズ・ラジオGBニュースなどで、ゼロコロナ抗議デモや高まる中国の脅威について見解を述べた。ここのところ、ボルトン氏のイギリスメディアでの発言が目立つ。

中国全土は統制できないことの表れ

 ボルトン氏は、抗議デモは、中国の人々がゼロコロナ政策についてどう思っていたかを露呈しただけではなく、中国政府に対して人々が多くの不満を感じていることも映し出したという。

「これ(抗議デモ)は、彼ら(中国政府)が予期していなかったことだと思う。驚くことに、コロナが始まって3年間、中国の中で何が起きているか我々は実際多くがわからなかった。中国の人々が、抑圧的なゼロコロナ政策をどう考えているのか、また、その影響の多くについて、数週間前に習近平が毛沢東以来の非常にパワフルな指導者になったことも含めて、評価する機会が我々にはなかった。抗議デモは、明らかにコロナの規制が原因で起きているが、とはいっても、中国の人々がたくさんの不満を抱えていることを示している」

 また、抗議デモは、中国政府が、国全体を統制できる可能性がないことも示しているともいう。

「抗議デモが現政権を脅かすか?というなら、ノーだ。しかし、抗議デモは、プレジデント(習近平氏のこと)が中国共産党は統制できるが、中国全土は統制できない可能性があることを示しているのか?というなら、デモはそれを示していると思う」

 習近平氏は次の20年間も権力の座に座り続ける可能性があるとも言われているが、それについて「西側諸国を脅かす独裁者は、夜、安心して休むことが許されるべきではない」と明言。

 さらには、抗議デモが続けば、香港で起きたような中国政府による弾圧が起きると懸念を示す。

「中国政府が抑圧する力を使う準備ができていることは、香港で彼らがしたこと、尊重すべき国際協定に違反したことを見ればわかる。これらの抗議デモが続けば、そういうことが起きると思う。もし、習近平や金正恩、アリー・ハーメネイー、ウラジミール・プーチンを普通の指導者だと受け入れたいのであれば、そうするのは自由だが、私は間違ったアプローチだと思う」

中国は脅威であり、スパイ機関

 中国の脅威が高まっていることも警告。

「中国は西側諸国が21世紀に直面している脅威だ。彼らは30年以上、知的財産権を盗んできた。西側諸国にチャレンジしている」

 また、タイムズ・ラジオでは、同氏は中国は課題ではなく脅威であり、スパイ機関だと強調した。

「スナック首相は中国は課題だと言った。恐れながら、それは間違いだと思う。中国は脅威だ。現在脅威であり、前から脅威だった。我々は最近になってそのことを理解し始めた。脅威は高まっている。台湾やインド太平洋の国々に対する脅威であるだけではない。今は、私たちにとっても脅威になっている。例えば、ファーウェイやZTEなどはテレコミュニケーション企業ではない。彼らは中国の武器だ。彼らの狙いは第5世代テレコミュニケーションを世界的にコントロールすることで、5Gテレコムで通信される情報は北京に送られ得る。アメリカやイギリスなどの国々はファーウェイに対して強い措置を講じたが、我々は競争という脅威に対処しているのではない。我々はスパイ機関に対処しているのだ。軍事や政治活動など多岐にわたる中国の姿勢を見ると、その姿勢は経済分野で彼らが行っていることを補完している。BBCのレポーターが殴られた問題はもちろん受け入れられないが、脅威は広範囲にわたっているのだ」

バイデン政権の中国に対する幻想

 また、バイデン政権は中国に対して幻想を持っていると批判。

「我々は幻想を持っていると思う。特に、バイデン政権が、気候変動問題に関し、中国に対処できると幻想を持っているのはひどい間違いであり、国の安全保障を危険に晒す」

 実際、バイデン政権と中国政府は、昨年、COP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)で、地球温暖化対策で共同宣言を発表したが、中国側には、気候変動問題でアメリカと協力することで、対立が起きている分野での対立を解消し、アメリカとの融和を図るという政治的思惑があるとも指摘されている。また、中国政府は、COP27では、世界最大の規模を持つ同国の石炭火力発電所を増強する計画を明らかにした。

 さらに、ボルトン氏は、中国は協定は結んでも、それに従う意志がないとGBニュースで断罪した。

「これは重要なポイントだが、ヨーロッパやアメリカの左派の多くの人々は、正式な国際協定を重視する。しかし、中国が香港でしたことは、まさしく彼らが国際協定についてどう考えているかを示している。つまり、貿易協定や軍縮協定、環境保護協定となると、中国は協定に署名はするだろうが、それに従おうとは全然思っていないのだ」

戦争に勝つことより、抑止がまず重要

 西側諸国はウクライナに対する野心を見せていたロシアを無視していたが、同じ間違いを台湾に対して野心を見せている中国についても犯すのではないかという懸念については、ウクライナ戦争の教訓を学んで、攻撃が起きる前に抑止能力を高めることが重要だと訴える。

「ウクライナでの過ちを我々は学んでいると願いたい。2月24日にロシアを抑止できなかったことが大きな間違いだった。効果的なロシア政策を持っていたら、侵攻は起きなかっただろう。今、重要なのは、中国が台湾を攻撃した場合、中国との戦争に勝つことでなく、まず攻撃を防ぐことだ。我々の抑止能力や抑止戦略は必要とされているよりもはるかに弱い」

 バイデン大統領は中国の抗議デモを注視している状況だが、新型コロナはアメリカでも論争の源になってきたことを踏まえ、ボルトン氏は「バイデン政権が何もしていないことには驚いている」と述べている。

 世界が注目するなか、ゼロコロナ抗議デモはさらなる拡大を見せるのか? 中国政府はデモの弾圧をしてゼロコロナ政策を強硬に推し進めていくのか? 今後の動きが注目される。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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