本当に富裕層優遇?NISA恒久化見送りで国民が受ける2つのデメリット
政府は10月16日に期限付きで導入された少額投資非課税制度(NISA)について、恒久化を見送る方針を固めました。現行制度は富裕層への優遇だという指摘もあって認めるのは難しいということです。
NISAは元々イギリスのISAをモデルにしています。ISAは日本のNISAより15年早い1999年から導入され、恒久化されています。その利用者の多くはマス層です。「一般NISA」の場合は、年間120万円までの投資枠の中なら、株式投資に対する収益(配当や売却益)に対して税金がかからない(非課税で運用できる期間は投資をした年から5年間です)というもの。投資額が少額に限られていますが、本当に富裕層優遇となるのでしょうか。
日本で非課税制度の歴史を振り返ると、1963年に導入された「マル優」があり、導入当初は非課税額が段階的に上昇しましたが、1988年に廃止されています。日本の貯蓄率を見ると、1970年代の貯蓄率は20%を超えていましたが、1980年代から低下傾向となり、2000年には急速に低下し、昨今は2%代になっています。現在は日本の貯蓄率は主要先進国と比べると低くなっています。
<ますます懸念される貯蓄率の低下>
低い貯蓄率を底上げするには税制の優遇も寄与しそうで、貯蓄から投資を促すにはNISAのような投資への優遇措置は重要と言えそうです。
家計の金融資産構成を見ると、現金・預金の割合は日本53.3%に対して、米国は12.9%、ユーロエリアは34%となっています。米国は債務証券6.5%、投資信託12%、株式等34.3%、保険・年金・定型保障31.7%とその多くが投資に回されています(日本銀行調査2019年8月29日)。株式市場を盛り上げる意味でも投資を促す制度は充実させた方がよさそうです。
確かにまとまった金額を投資に回すNISAやジュニアNISAは一定以上の資産がある中流以上への優遇になる傾向があります。特に未成年向けのジュニアNISAに関しては富裕層の子や孫への贈与として使われています。
しかし、非課税枠が小さく、少額を積み立てていく「つみたてNISA」の場合はマス層への応援になるはずです。
つみたてNISAとは、定期・定額での積立投資に限定した制度で、年間40万円までの投資枠に対し、その利益が20年間非課税となる制度です。一般NISAとつみたてNISAの違いは非課税期間と年間の非課税枠、投資対象などです。
<懸念される老後資金の積み立て不足>
年間40万円の優遇であれば富裕層にとっては非常に微々たる金額になりますが、マス層にとってはなんとか老後のために1年間で貯めていける金額ではないでしょうか。老後資金2000万円問題で老後不安が広がる中、少額からリスク市場にお金を投下して時間を味方につけてお金を育てていかなければなりません。こうした難しい問題に直面をしている逃げきれない世代たちを税制で優遇してもよいはずです。
もちろん「個人型確定拠出年金(iDeCo)」など他の税制優遇制度もあります。しかし、自由に売却ができるNISAはライフプランがまだ固まっていない若者にも気軽に始めやすい制度だと言えます。国全体の景気を押し上げていく上でも税金の優遇を作り、投資を促していっていただきたいものです。つみたてNISAに関しては恒久化していって欲しいと願います。