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藤井聡太三冠(19)将棋日本シリーズ決勝進出! 永瀬拓矢王座(29)とのタイトル保持者対決を制す

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 11月3日。愛知県名古屋市・ポートメッセなごやにおいて第42回将棋日本シリーズ・JTプロ公式戦準決勝▲藤井聡太三冠(19歳)-△永瀬拓矢王座(29歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 15時54分に始まった対局は17時7分に終局。結果は99手で藤井三冠の勝ちとなりました。

 藤井三冠は本棋戦初の決勝進出。11月21日におこなわれる決勝戦で前回覇者の豊島将之竜王(31歳)と対戦します。もし藤井三冠が決勝で勝つと、1991年優勝の羽生善治棋王(当時21歳)を抜いて、史上最年少19歳での優勝となります。

 藤井三冠と永瀬王座の対戦成績は藤井7勝、永瀬1勝となりました。

 両者は11月24日、王将戦リーグ最終戦でも対局します。

 藤井三冠の今年度成績は37勝7敗(勝率0.841)となりました。

藤井三冠、受けて反撃、最後は一気

 藤井三冠は愛知県瀬戸市出身。名古屋は「ホーム」の地です。対局が始まる前、両対局者は観戦のファンを前にして、次のようにあいさつしました。

藤井三冠「私自身はJT杯での準決勝進出は今回が初めてで。またこういったJT杯の公開対局というのも2年ぶりということでとても楽しみにしてきました。全力を尽くして熱戦にできれば、というふうに思っています。永瀬王座とは普段から研究会などで教えていただいているんですけど、常に序盤から工夫をされていて、中終盤もとても正確、という印象を持っています。(地元東海地区のファンに向けて一言)本日、こうしてJT杯東海大会に対局場として来られることをとてもうれしく思っています。地元のファンの方にご観戦いただける機会ですので、せいいっぱい指して、楽しんでいただけるように、がんばりたいと思います。よろしくお願いします」

永瀬王座「(壇上で)この場所に立ってみるとすごい緊張するんだな、という印象で、慣れていきたいなと思っています。藤井三冠がおっしゃったようにVS(ブイエス、1対1の研究会)で長く教えていただくばかりなんですけど、少しでも教えていただいたことを返せるように、がんばりたいと思っております。(東海地区のファンに向けて)一番来ているのがここの愛知でして、地元ではないんですけど少し親しみを持っていますので、藤井三冠を応援する方が多いと思うんですけど、自分も少し応援していただければ幸いです」

 振り駒をおこなうのは抽選によって選ばれたファンの男性。その結果「歩」が4枚出て、藤井三冠が先手と決まりました。

 戦型は、両者の対戦では久しぶりの角換わり。現代風の間合いのはかり合いのあと、46手目、永瀬王座が桂を跳ねて動いてきます。

永瀬「初見ではあったんですけど、条件的には仕方ないかなと」

藤井「本譜、仕掛けられて、ちょっとうまく動かれてしまったというか、受け止めるのが難しい形なのかな、と思ってました」

 47手目。次の一手問題を出題するために封じ手がおこなわれます。ここで藤井三冠は銀取りにどう対応するか熟慮。慎重に考えて、封じ手用紙に次の手を記しました。

 さぬきうどんのゆるキャラ、コシノツヨシさんは玉頭に銀を引く手を予想します。果たして、藤井三冠の次の一手はその通り。「コシノツヨシ、いったい何者・・・?」と思わせるほどの強さを見せました。

 飛車を前線に進め、不退転の決意で攻め続ける永瀬王座。対して藤井三冠は強気な受けで応じます。

 永瀬王座が攻めきるか。それとも藤井三冠が受け止められるか。局後、大盤を使っての感想戦では、両者により熱心な検討がされました。

中村修九段「もう私、二人の会話についていけないです。よくあるんですね、タイトル戦でも。二人だけわかってる」「すみません、なにいってるかわからないです」

 大盤解説の中村九段が苦笑するほど、両者の間で瞬時に、省略された言葉で、難解な手順が言い交わされました。

 本譜、少し攻め続けるのが難しそうな永瀬王座。62手目、飛車取りにかまわず中段に角を打つ勝負手を放ちました。対して藤井三冠は冷静に自陣に角を打って受け、頑強にしのぎます。それから飛車を取って反撃に転じ、形勢ははっきり藤井よしとなりました。

 優位に立ってからの藤井三冠の勝ち方はいつもの通り、堂々たるもの。最後は横と縦からのコンビネーションで、最短のルートで永瀬玉を寄せにいきます。永瀬玉が受けなしに追い込まれる一方、藤井玉に詰みはありません。

 99手目、永瀬玉には両王手がかかりました。

「10秒・・・。20秒、1、2、3、4、5」

 そこまで秒を読まれたところで、永瀬王座は投了。

「まで99手で藤井三冠の勝ちとなりました」

 場内からは大きな拍手が起こり、熱戦に幕が降ろされました。

 またもや地元の名古屋で白星を飾った藤井三冠。決勝は東京大会(千葉市)で、前回覇者・豊島将之竜王と対戦します。この1年だけで豊島-藤井戦はすでに13局おこなわれ、豊島3勝、藤井10勝。トータルでは豊島9勝、藤井11勝という成績が残されています。

 藤井三冠は先手番で今年度21勝1敗(勝率0.955)。後手を持って藤井三冠に勝ったのは、豊島竜王しかいません。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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