超高エネルギー環境でしか生成されない「未知の超重元素」の痕跡を新発見
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「自然生成された超重元素の痕跡を新発見」というテーマで解説します。
ミシガン大学などの研究チームは、これまで自然で発見されたことがないほど非常に重い原子核が生成されることを突き止め、その成果を2023年12月に公表しました。
●宇宙で元素ができる方法
現在の宇宙には様々な元素が存在しますが、宇宙誕生時には実はほとんど水素とヘリウムしかなかったと考えられています。
水素は最も軽い元素で、ヘリウムはその次に軽い元素です。
それ以上に重い元素は恒星の核で核融合反応が進むことで生成されます。
ですが恒星内部の核融合で生成されるのは鉄までの元素で、それ以上に重い元素については例えば恒星の内部など、中性子が豊富な環境で起こる「中性子捕獲」という反応によって生成されます。
原子核内に中性子を取り込み、その後中性子が陽子へと崩壊(ベータ崩壊)することで、より原子番号が大きく重い元素が生成されるのです。
中性子捕獲反応は「r過程」と「s過程」に分けられます。
中性子捕獲がベータ崩壊に比べて速く(rapidに)進行するのがr過程、遅く(slowに)進行するのがs過程です。
r過程は超新星爆発や中性子星同士の合体など、より高エネルギーで中性子が豊富な環境下で起こります。
またr過程で生成される原子核は、ベータ崩壊が起こる前にどんどん中性子を捕獲する分、s過程で生成されるよりも中性子が豊富で、非常に重い原子核が生成されます。
r過程でどこまで重い元素が生成されるのかについてはまだよくわかっていない部分が多い現状です。
またr過程で生成されるような非常に重い原子核は不安定であり、2つのより軽い、中質量の原子核のペアに分裂します。
よってr過程によっても、中質量の原子核が生成されると言えます。
逆に、分裂後の2つの中質量の原子核のペアを見つけられれば、それらを足し合わせることで、分裂前の非常に重い原子核の情報が得られそうです。
●最重量の原子核の痕跡を新発見
ミシガン大学などの研究チームは、これまで自然で発見されたことがないほど非常に重い原子核が、r過程によって生成されることを突き止め、その成果を2023年12月に公表しました。
研究チームは天の川銀河の恒星から、これまでによく分析されている古い恒星を42個厳選し、それらに含まれる、r過程によって生成される重元素の存在量を調べました。
ここで研究チームは、これらの星に含まれる各重元素の量を個々に調べるのではなく、各グループに分け、それらの間の関係性を調べました。
具体的には原子番号が44~47かつ質量数が99~110の原子核(以下グループ1)と、原子番号が63~78かつ質量数が150以上の原子核(以下グループ2)の関係を調べました。
その結果、グループ1とグループ2との間に、存在量の相関が見られたのです。
一方でグループ1は、それより少し軽い原子核(原子番号が34~42)と、少し重い原子核(原子番号が48~62)に対しては存在量の相関が見られませんでした。
これらは、r過程によって非常に重い原子核が生成され、それが分裂することでグループ1とグループ2の原子核が同時に生成されたと考えると上手く説明できます。
ここで分裂前の原子核の情報は、グループ1とグループ2の原子核を単に足し合わせることで得ることができます。
その結果、質量数260を超える超重元素がr過程によって生成されていたことが示されました。
これほど重い原子核が自然に生成されることはこれまで知られていなかったほどです。
今回の研究により、r過程でどこまで重い元素が生成されるのかのより深い理解に繋がるだけでなく、実験するには危険な核分裂反応のより詳細な性質を理解することにも繋がると期待されています。