なぜレアルはベンゼマの“後継者”を確保しないのか?ロドリゴの契約延長とチュアメニを獲得した意味。
後継者を探すのは、大変だ。
レアル・マドリーは今夏、ルカ・ヨヴィッチの放出を決めた。2025年夏までマドリーと契約を残していたヨヴィッチだが、移籍金ゼロで将来的な売却値をマドリーが50%受け取るという異例の形でフィオレンティーナ移籍が決定している。
マドリーは2019年夏に移籍金6300万ユーロ(約88億円)でヨヴィッチを獲得した。カリム・ベンゼマの後釜を確保するため、フランクフルトで活躍していたヨヴィッチに触手を伸ばした。
だがベンゼマの壁は厚かった。ヨヴィッチは2019−20シーズン(リーガエスパニョーラ17試合出場)、20−21シーズン(4試合/シーズン後半戦フランクフルトにレンタル)、21−22シーズン(15試合)と思うようにプレータイムを得られなかった。
マドリーは、ヨヴィッチの獲得に関して失敗したと言わざるを得ないだろう。マドリーの目利きに問題があったかどうかは今後のヨヴィッチのフィオレンティーナの活躍でわかる。
■若いタレントの発掘
ヨヴィッチの獲得は、うまくいかなかった。しかしながら、マドリーが若手発掘に注力するという姿勢は変わらない。
マドリーはこの夏、ロドリゴ・ゴエスとヴィニシウス・ジュニオールの契約延長に向けて動いてきた。ロドリゴについては、2028年夏までの契約延長が決定的となっており、契約解除金は10億ユーロ(約1400億円)に設定されるとみられている。
マドリーは移籍金4500万ユーロ(約63億円)でロドリゴを、移籍金4500万ユーロ(約63億円)でヴィニシウスを獲得した。
「我々は歴史的な傾向を分析した。ヴァラン、ラモス、カゼミロ、アセンシオ、マルセロ…。彼らは22歳より前にマドリーに移籍している。バルセロナの歴史というのは、カンテラの選手の昇格だろう。それがバルサというクラブのエコ・システムなんだ。ネイマールは例外だよ。最近では、28歳のアルダ・トゥラン、30歳のマテュー、26歳のラキティッチを獲得している」とはヴィニシウスの移籍が決まった時の代理人フレッド・ペナのコメントだ。
「マドリーでは、モドリッチが25歳で移籍している。ジダン、ロナウド、フィーゴといった選手がいた時代とは違い、マドリーの方針には変更が加えられている」
若いタレントを発掘する。“銀河系軍団”と呼ばれた時代は去り、マドリーに変化が訪れている。
■CMKと世代交代
また、マドリーは今夏、オウリエン・チュアメニを獲得している。移籍金8000万ユーロ(約112億円)をモナコに支払い、22歳の中盤の選手を獲得した。
昨年夏には、移籍金3100万ユーロ(約43億円)でエドゥアルド・カマヴィンガを獲得した。チュアメニ、カマヴィンガ、そしてフェデリコ・バルベルデ。この3人を中心に、マドリーは中盤の世代交代を推し進める考えだ。
カゼミロ、ルカ・モドリッチ、トニ・クロースはマドリーで盤石な中盤を築いてきた。「CMK」と称されるミドルゾーンのプレーヤーたちを、超えていくような選手が必要だ。
「パリ・サンジェルマン戦、チェルシー戦、マンチェスター・シティ戦を見て、『マドリーに移籍できるようにベストを尽くしてほしい』と代理人に伝えたんだ。レアル・マドリーにノーを言うことはできない」
「レアル・マドリーでの歴史を始められることに、非常に喜びを感じている。このクラブがタイトルを勝ち取り続けられるように、全力で働きたい。会長、代理人、家族のみんなに感謝したい。アラ、マドリー(マドリー、万歳)!」
これはチュアメニの言葉である。
他方で、マドリーは現在、マリアーノ・ディアスの放出を検討している。ボルハ・マジョラルに残留の芽があり、カンテラーノのフアンミ・ラタサに昇格の可能性がある。しかし、新たなFWを獲得するかは定かではない。
マドリーが密かにプランニングしているのは、将来的なアーリング・ハーランドの獲得だろう。この夏、ボルシア・ドルトムントからマンチェスター・シティに移籍したハーランドだが、2024年夏に契約解除金が2億ユーロ(約280億円)に、2025年夏に契約解除金が1億7500万ユーロ(約245億円)になるといわれている。
ベンゼマの代役を見つけるのは困難な作業だ。ただ、「CMK」の世代交代が行われているように、ストライカーの確保にも無策ではない。それがレアル・マドリーというクラブの強(したた)かさである。