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三遊間コンビのうち、遊撃手ではなく三塁手を引き留めた理由

宇根夏樹ベースボール・ライター
ザンダー・ボガーツ(左)とラファエル・デバース Jul 16, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 昨年まで、ザンダー・ボガーツラファエル・デバースは、ボストン・レッドソックスで三遊間コンビを組んでいた。

 彼らのうち、遊撃手のボガーツは、今オフにFAとなり、レッドソックスを去った。サンディエゴ・パドレスと11年2億8000万ドルの契約を交わした。数日前に「レッドソックスのオーナーが地元でブーイングを浴びる。吉田正尚を手に入れただけでは不十分!?」で書いたとおり、レッドソックスがボガーツに提示した契約は、パドレスとはかけ離れていたらしい。

 一方、三塁手のデバースは、これからもレッドソックスに残る。先日、年俸調停を回避し、前年比630万ドル増の年俸1750万ドルで合意に達した時点では、FAまであと1年のままだったが、続いて、長期の延長契約もまとまったようだ。ファンのブーイングも、これで収まるかもしれない。

 延長契約を最初に報じたのは、カルロス・バイエガだ。インスタグラムに、11年3億3200万ドルと書き込んだ。その後、ジ・アスレティックのケン・ローゼンタールは、11年3億3100万ドルの延長契約、とツイートしている。バイエガは、14シーズンにわたってメジャーリーグでプレーし、2002年はレッドソックスで73試合に出場した。現在は、スペイン語の試合中継で解説者を務めている。

 総額には100万ドルの違いがあるものの、どちらにせよ、デバースの契約は、ボガーツがパドレスから得た契約を上回る。

 直近2シーズンの出場は、2人ともほぼ同じ。デバースが297試合、ボガーツは294試合だ。このスパンに、デバースは、打率.287、出塁率.355、65本塁打、OPS.885、ボガーツは、打率.301、出塁率.374、38本塁打、OPS.848を記録している。パワーはデバース、出塁率(と四球率)はボガーツが上だ。もっとも、ボガーツも、2019年は33本のホームランを打っている。それぞれのポジションを考慮すると、必ずしもデバースが勝るとは言いきれない。

 ちなみに、総額3億2000万ドル以上の契約を手にした10人のなかに、遊撃手は3人いる。三塁手はデバースだけだ。

 ただ、3億ドル前後を投じ、デバースではなくボガーツを引き留めるという考えは、レッドソックスにはなかったと思われる。デバースは26歳、ボガーツは30歳だ。2人とも、10月に生まれた。同じ11年契約でも、26~36歳と30~40歳では、年齢による衰えのリスクが異なる。

 同じ状況ではないものの、アトランタ・ブレーブスの三遊間コンビだった2人も、デバースとボガーツに似た動きとなっている。三塁手のオースティン・ライリーは、昨年8月にブレーブスと10年2億1200万ドルの延長契約を交わした。遊撃手のダンズビー・スワンソンは、今オフにFAとなり、7年1億7700万ドルの契約でシカゴ・カブスに入団した。ライリーは、開幕直後に26歳となる。スワンソンは、来月、29歳の誕生日を迎える。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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