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球場改装でレフト方向のホームランを出やすくするのは、テオのような右のスラッガーを迎え入れるため!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
オリオール・パーク・アット・カムデンヤーズ Mar 28, 2024(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 2022年のシーズンが始まる前に、ボルティモア・オリオールズは、オリオール・パーク・アット・カムデンヤーズの改装を行った。レフトのフェンスを26.5フィート(約8.1m)後ろに下げ、5フィート8インチ(約1.7m)高くした。

 そこから3シーズンしか経っていないが、その距離と高さは、再び変わる。MASNスポーツのロック・クバッコらによると、編成責任者のマイク・イライアスは、ズームの記者会見において、レフトのフェンスを9~20フィート(約2.7~6.1m)前に出し、高さも少し下げる、と語ったという。ボルティモア・サンのジェイコブ・カルビン・マイヤーらは、具体的な変更のプランを報じている。

 スタットキャストのパーク・ファクターによると、ここ3シーズン(2022~24年)のカムデンヤーズは、右打者のホームランが出にくい5球場に入っている。数値は79。平均は100なので、平均の79%ということになる。その前の3シーズン(2019~21年)の数値は、125だった。

 2024年にカムデンヤーズで10本以上のホームランを打った5人――いずれもオリオールズでプレーした――のなかに、右打者はいなかった。ガナー・ヘンダーソン(23本)、コルトン・カウザー(12本)、セドリック・マリンズ(12本)が左打者、アンソニー・サンタンデア(18本)とアドリー・ラッチマン(10本)はスイッチ・ヒッターだ。

 今回の変更は、前回の改装前に戻すわけではない。「右打者に有利」から「右打者に不利」となりすぎたのを是正するのが目的だ。

 そこには、FA市場に出ている右打者にアピールする、という意図もあるのかもしれない。

 昨オフ、J.D.マルティネスは、ニューヨーク・メッツと1年1200万ドルの契約を交わした。USAトゥディのボブ・ナイテンゲールらによると、サンフランシスコ・ジャイアンツからは、1年1400万ドルの契約を申し出られていたという。入団会見に臨んだJ.D.は、記者からの質問に答え、ジャイアンツを選ばなかった理由として、球場を挙げた。

 2024年に30本以上のホームランを打ち、今オフにFAとなった選手のうち、一塁手のピート・アロンゾ、外野手のテオスカー・ヘルナンデスタイラー・オニール、遊撃手のウィリー・アダメスは、右打者だ。

 オリオールズからは、44本塁打の外野手、サンタンデアがFAになった。MLBネットワークのジョン・モロシは、テオスカーに興味を抱いている球団の一つに、オリオールズを挙げている。

 もっとも、テオスカーの場合、球場という点からすると、ドジャースと再契約を交わすほうがいいように見える。スタットキャストのパーク・ファクターにおいて、ここ3シーズンのドジャー・スタジアムは、右打者のホームランの数値が126。どの球場よりも高い。その前の3シーズンも、カムデンヤーズと同じ、最高値の125を記録している。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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