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なぜエムバペの移籍は決まらないのか?レアルの“思惑”と健全なマネジメント。

森田泰史スポーツライター
ボールを追うエムバペ(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

ビッグプレーヤーの移籍には、時間が必要なのかもしれない。

キリアン・エムバペの周囲が騒がしい。今季終了時にパリ・サンジェルマンとの契約が満了するエムバペだが、現時点で新天地は決まっていない。

エムバペの移籍先として、濃厚だとされてきたのがレアル・マドリーだ。マドリーは昨年夏にも移籍金2億ユーロ(約270億円)を準備してエムバペ獲得に動いていた。しかしながらパリSGにオファーを断られ、エムバペの残留が決定していた。

■エムバペの夢

マドリーは今夏、再びエムバペ獲得に動くつもりだった。ただ、フロレンティーノ・ペレス会長に焦りはなかった。

そもそも、エムバペは少年時代からマドリーでプレーすることを夢見ていた。14歳の時に初めてマドリーの練習場を訪れ、クリスティアーノ・ロナウドやコーチングスタッフとして入閣していたジネディーヌ・ジダンと知り合った。

「エムバペのマドリー加入はほとんど決まっていた。だが彼はモナコを選んだ。これ以上、それについては話さない。あの年齢で、あれだけのプレーを見せている。本当に素晴らしい選手だ」とのちにジダンが語っている。

エムバペ自身は「最終的にはマドリーに行かなかった。自分の国であるフランスでプレーを続けたかった。あまりに若くして外国に行くのは得策ではないと思った」と当時を回想している。

■金満クラブのイメージ

マドリーは今季開幕前にエドゥアルド・カマヴィンガとダビド・アラバを獲得カマヴィンガ獲得に移籍金3100万ユーロ(約41億円)を支払ったものの、アラバに関してはフリートランスファーでの移籍だったために移籍金ゼロだった。その前の夏も、マルティン・ウーデゴール、アルバロ・オドリオソラ、アンドリュー・ルニンらをレンタルバックしたのみで、補強に資金を投じていない。

レアル・マドリーというと、金満クラブというイメージがあるかもしれない。

ジダン、ロナウド、ルイス・フィーゴ、デイビッド・ベッカム、マイケル・オーウェン…。確かに、“銀河系軍団“と称されたチームには、スター選手が揃っていた。

ただ、近年のマドリーはそれとは異なる。ヴィニシウス・ジュニオール(移籍金4500万ユーロ/約54億円)、ロドリゴ・ゴエス(移籍金4500万ユーロ)を筆頭に、 若い南米の選手を青田買いする格好で確保して、欧州で大きく成長させる方針にペレス会長は切り替えている。

ゴールを喜ぶマドリーの選手たち
ゴールを喜ぶマドリーの選手たち写真:ロイター/アフロ

「3年前、僕は間違いを犯した。セレモニーの場で、自分の将来についてコメントして場を独占してしまった。いまは、そういった輝きを探すのではなく、セレモニーを大切にしたい」

「ほとんど決まっている。でも、すべての人たちを尊重しなければいけない。僕にも少し焦りはある。しかし、僕だけの問題じゃない。あとはディテールを詰めるだけ。もうすぐ決まるはずだ」

先日、2021-2022シーズンのリーグ最優秀選手に選ばれた際、エムバペはそう語っている。

ベルナベウでゴールを決めたエムバペ
ベルナベウでゴールを決めたエムバペ写真:ロイター/アフロ

エムバペ、そして加入が濃厚だとされるアントニオ・リュディガー、いずれもフリートランスファーでの移籍になる。これはひとえに、マドリーがクラブとして健全な経営を目指してきたからだろう。

5月17日付のスペイン紙『マルカ』では、シー(イエス)と銘打たれた表紙に「エムバペとマドリーの合意が最終局面」と報じられた。また一人、野心を抱えた若者がマドリードに到着しようとしている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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