“ラーメン女”と巡る。豚骨ラーメンの聖地・久留米探訪
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kamimuratoshiyuki/article/01781010/title-1716772784438.jpeg?exp=10800)
福岡県・久留米市は“豚骨ラーメン発祥の地”である。
1937(昭和12)年に、久留米の屋台「南京千両」で史上初の“豚骨”ラーメンが生まれ、その10年後、同じく久留米の「三九」で、煮込み過ぎてしまった偶然の失敗から現在も馴染みのある白濁豚骨スープが誕生したという麺史はラーメン好きの間では知られるところだ。
まだ先の話であるが、2027年が生誕90周年、そして2037年にはついに迎える100周年。久留米ラーメン7店からなる「久留米ラーメン会」の雄たちは、節目の年を見据えて着実に一歩を踏み出している。今年2024年においては、同会が定めている“トンコツの日”(10月2日)を広く認知してもらうべくイベントを開催。素材の豚“様”に感謝を表す恒例の神事“豚供養”のほか、久留米ラーメン会による限定ラーメンの販売なども10月に行う予定だ。
“トンコツの日”まで定められているとはさすが聖地久留米。豚骨ラーメンの人気がワールドワイドになっている今こそ歴史に想いを馳せながら、原点の地での麺巡礼をおすすめしたい。
そこで今回は、福岡を代表する女性ラーメンインフルエンサー「ラーメン女」と久留米啜り旅へ。久留米ラーメンの名店、豚骨ラーメンにまつわる路上遺産を改めて紹介しよう。
1)JR久留米駅に降り立ち速攻「来福軒」で豚骨注入。屋台モニュメントも鑑賞
2)国道3号系のレジェンド「丸星ラーメン」の和子お母さんに会いにいく
3)こんなところに! 豚骨ラーメンが産声を上げた場所にある隠れた記念碑
4)「大栄ラーメン」で久留米の伝統具材“カリカリ”を味わう
5)「拉麺 久留米 本田商店」で多彩な“ホンダラーメン”を堪能
![ラーメン女。福岡出身。ラーメン業界に彗星の如く現れた麺女子。「ラーメンは育った環境で好みが違うから評価はしない」がモットー。ひたすら美味しそうに食べるライブ感、愛のある投稿が人気@ramen.onna](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kamimuratoshiyuki/article/01781010/image-1716772963719.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
(1)JR久留米駅に降り立ち速攻「来福軒」で豚骨注入。屋台モニュメントも鑑賞
旅の始まりはJR久留米駅から。駅前広場には、久留米発祥ゴム3社の一つ「ブリヂストン」の巨大タイヤや、久留米出身の発明家「からくり儀右衛門」(田中久重)にちなんだ時計などがあり、メイドイン久留米の文化にふれることができる。
![JR久留米駅。博多駅から九州新幹線を使えば20分弱](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kamimuratoshiyuki/article/01781010/image-1716773289291.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
と、その展示の中に、見過ごしそうな小さいものであるが、屋台を細かく描写した「屋台モニュメント」を発見。
![JR久留米駅ロータリーの一角にある屋台モニュメント。豚骨ラーメン史が刻まれている](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kamimuratoshiyuki/article/01781010/image-1716773366140.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
決して大それたものではないが、「豚骨ラーメン発祥の地に来た」と気分を盛り上げてくれる。さあ、聖地で啜りまくろうか。
![久留米駅に電車で着いて、“まずは”の一杯はこの「来福軒」がおすすめ](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kamimuratoshiyuki/article/01781010/image-1716773413114.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
久留米ラーメン1杯目は、駅と直結している「来福軒」。創業は1954(昭和29年)で70年の歴史をもつ。昭和の時代、駅前には多くの屋台が軒を連ねていた。この店も屋台から始まり、後に路面店へ。2021年に現在の場所に移転オープンした。
![路面店開業時の「来福軒」。当時はラーメンではなく、中華そばと呼ばれていたのが分かる](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kamimuratoshiyuki/article/01781010/image-1716775513551.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
父から店を継いだ現店主の吉野亮さんは久留米ラーメン会の会長も務めている。「久留米を巡る際は、まず会長にご挨拶」と、ラーメン女も真っ先に飛び込んだ。
![「来福軒」のラーメン。脂を抑えているのでさっぱりとした飲み口](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kamimuratoshiyuki/article/01781010/image-1716773467263.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
熱伝導が良く、理想的な対流を生む羽釜を使い、熟したスープとフレッシュなスープをブレンドする呼び戻し手法。豚骨100%で、ラードなどの脂は使わないためライトな味わい。久留米ラーメンは濃厚、こってり。というイメージがあるが、老舗の多くはこのように、比較的さっぱりとしている。日常に寄り添い、毎日でも食べられそうな優しい味。それが久留米ラーメンである。
![吉野会長から厨房に招かれ、ラーメンの製法を学ぶラーメン女](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kamimuratoshiyuki/article/01781010/image-1716773574587.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
(2)国道3号系のレジェンド「丸星ラーメン」の和子お母さんに会いにいく
次は、1958(昭和33)年創業、国道3号系「丸星ラーメン」へ。ラーメン女自身も幼少時から親しんできた、家族との思い出が詰まった一杯だ。
![「丸星ラーメン」の一杯。現在1杯550円、白飯は150円。高菜や惣菜はセルフでお代わり自由。安すぎる!](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kamimuratoshiyuki/article/01781010/image-1716773659701.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
いつも温かい笑顔で迎えてくれる和子お母さんは、創業者である星野吾三郎氏の次女で現在77歳。12歳のころから店を手伝い始め、以来65年にわたりほぼ毎日のように店に出ている。まさに九州ラーメン界のレジェンドだ。
![和子お母さん、ご主人と](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kamimuratoshiyuki/article/01781010/image-1716773823467.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
この日はお母さんのはからいで、普段は入れない麺場に案内してくれた。巨大な羽釜にあふれんばかりの豚骨が詰まっている様子にラーメン女も驚愕。野趣あふれるスープを、無料の高菜、たくあんなどとともに最後の一滴まで楽しんだ。
![豚の全身の部位をこれでもかと煮込んでいく。羽釜から繰り出されるスープは芳醇な豚骨フレーバーが立つ](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kamimuratoshiyuki/article/01781010/image-1716773883831.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
![創業者の星野吾三郎さん。夏になるとスイカが店頭を埋め尽くしていた。創業当時はトラックドライバーのために無料宿泊所も設置し、無料惣菜を充実させたのもこの頃から。心意気のある職人であった](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kamimuratoshiyuki/article/01781010/image-1716774014557.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
![伝説的なラーメン職人と同じ場所に立つラーメン女。星野吾三郎さんゆかりの屋号なので、正確には「マルボシ」でなく「マルホシ」なのである。ま、どっちで呼んでもいいけど](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kamimuratoshiyuki/article/01781010/image-1716774029728.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
(3)こんなところに! 豚骨ラーメンが産声を上げた場所にある隠れた記念碑
立て続けに2杯完食し、食後の散歩がてら立ち寄った久留米明治通り。実はここに、豚骨ラーメン史における最重要ポイントがある。それが「豚骨ラーメン発祥の石碑」。先に紹介したJR久留米駅前のモニュメントとはまた別物で、こちらは、豚骨ラーメンの祖である屋台「南京千両」がかつて営業していた場所。つまり、「豚骨ラーメンが産声を上げた場所」に他ならない。
![明治通り沿いにさりげなく立っている豚骨ラーメン発祥の地の石碑](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kamimuratoshiyuki/article/01781010/image-1716774411576.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
豚骨ラーメンファン垂涎の場所なのであるが、石碑はとにかく目立たずさりげなく立っていて、知らないとまず通り過ぎてしまう。ヒントは久留米文化街の近く。ぜひ探し出してもらいたい。
![豚骨ラーメンの聖地・久留米の中でも、ここは絶対に外せない場所。もはやパワスポ](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kamimuratoshiyuki/article/01781010/image-1716774607302.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
ちなみに「南京千両」のかつての屋台そのものは「久留米ラーメン会」が保存している。詳しくは、「文化遺産級の屋台「南京千両」の未来を久留米ラーメン会と共に考えてみた」(豚骨注入)を読んでみてもらいたい。
(4)「大栄ラーメン」で久留米の伝統具材“カリカリ”を味わう
久留米ラーメン3杯目は「大栄ラーメン」。1973年創業、昨年50周年の節目を迎えた。
![スープ、麺、具材と各スペックを丁寧に撮影するラーメン女](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kamimuratoshiyuki/article/01781010/image-1716775198645.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
同店のラーメンは、豚ラードを揚げた久留米の伝統具材「カリカリ」が入っているのが特徴。コク深い呼び戻しスープに、香ばしさを添える。この日は、さらに山芋も入った「山かけラーメン」を注文。現店主・大垣敏久さんの父が考案したメニューで、今も根強い人気を誇っている。山芋がねっとりと麺に絡みつき美味。さっぱりと食べられる。
![年表で「久留米ラーメンの歴史」が学べる](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kamimuratoshiyuki/article/01781010/image-1716775379094.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
また「大栄ラーメン」を訪れたら、ぜひ壁にかけられた、豚骨ラーメンヒストリーの年表を見て欲しい。豚骨ラーメンの沿革が実に詳しく書いてあり、これを見れば久留米ラーメン通になれる。
![「大栄ラーメン」店主の大垣敏久さんもラーメン女のファン](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kamimuratoshiyuki/article/01781010/image-1716775671472.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
(5)「拉麺 久留米 本田商店」で多彩な“ホンダラーメン”を堪能
![「拉麺 久留米 本田商店」のホンダラーメン1号「純味」(半熟味玉入)。](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kamimuratoshiyuki/article/01781010/image-1716775988983.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
久留米ラーメン啜り旅、ラストを飾るのは「拉麺 久留米 本田商店」。店主の本田眞一さんはまさに久留米ラーメンの伝道師。全国のラーメンイベント、催事にも積極的に参加し、地元では食育イベント、小学校の教壇に立つラーメンの特別授業などでも我が街が誇る財産・豚骨ラーメンの魅力を伝えてきた。
![ラーメンを作りながらポーズをとってくれる本田さん](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kamimuratoshiyuki/article/01781010/image-1716776071597.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
前身のラーメン店「筑後丸福」の時代から数え半世紀以上、一度も釜を空にすることなくとことん煮込み続けた呼び戻しスープを基本に多彩な“ホンダラーメン”を作る。ラーメンだけでなく、豚骨ベースの「久留米式ちゃんぽん」もバリうま。「久留米本店」「キャナルシティ博多店」「筑後店」のほか、今年3月には滋賀県に系列「麺屋 眞(Makoto)」も開いた。久留米ラーメンの輪は広がりを見せている。
![「久留米ラーメン会」の副会長を務める本田さん](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kamimuratoshiyuki/article/01781010/image-1716776109393.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
豚骨ラーメンの聖地・久留米啜り旅。いかがだっただろう。
ラーメンの名店だけでなく、ラーメンにまつわる路上遺産も合わせて巡ることで、いつもの豚骨ラーメンがより楽しく、美味しく、そして、より丁寧に味わおうという気持ちになるはずだ。
先に待つ豚骨ラーメン生誕90周年、そして100周年へ向け、静かに動き出した久留米ラーメンの麺々。
歴史に想いを馳せ、現地で啜りまくってほしい。
【来福軒】
住所:福岡県久留米市京町87-3
電話:0942-33-7957
時間:11:00〜15:00、17:30〜21:00、日曜は昼のみ営業
休み:月曜、第3日曜
席数:17席
駐車場:近隣駐車場割引サービスあり
【丸星ラーメン】
住所:福岡県久留米市高野2-7-27
電話:0942-33-6440
時間:9:00〜21:00、土曜、日祝日は8:00〜
休み:第2・4木曜
席数:80席
駐車場:100台
【大栄ラーメン】
住所:福岡県久留米市東町30-25
電話:0942-39-3877
時間:11:30〜14:30、18:00〜23:00(日曜〜22:00)
休み:なし
席数:18席
駐車場:あり
【拉麺 久留米 本田商店】
住所:福岡県久留米市南3-27-29
電話:0942-55-4065
時間:11:00〜15:00、金・土・日曜11:00〜15:00、18:00〜22:00
休み:木曜
席数:34席
駐車場:あり