特濃豚骨派は、福岡西エリア「ラーメン処 西谷家」を目指すべし!
ひたすら濃く、猛々しい。
豚骨ラーメンの聖地・福岡には、“特濃”豚骨派の胃袋を掴む名店が多々あるが、中でも西エリア最強の呼び声が高いのが「ラーメン処 西谷家」(さいたにや)。創業は2006年。
「あまりに濃い」「片栗粉でも入っとうと?」。開業当時、周辺には高濃度のポタージュ豚骨はなかったため、地元民からそのような指摘も受けた。しかしながら18年たった今、この豚骨100%のドロリとした粘度、重厚感こそ西谷家の個性として愛され、遠方からもファンが詰めかける人気店へと成長。
今回は、うますぎる同店のラーメン、さらには豚骨チャンポンの魅力を紹介する。
「ラーメン処 西谷家」は現在、野方本店と前原店の2店舗、さらに系列の「元祖糸島ラーメン 銅鑼(どら)」も展開している。店主は富田一憲さん(昭和45年福岡糸島生まれ)。
幼少時から、西エリアの巨匠「安全食堂」のラーメンに親しんで育つなど、無類のラーメン好きであった富田さん。「20代前半には好きが高じて、自宅の庭にバーナーと寸胴を持ち込んでラーメンを作っていました。地元の友人が肉屋をしていたので素材の豚骨も簡単に手に入ったんです。趣味とはいえ本格的に炊いてましたね」と振り返る。「ラーメン作りを独学で」というのはよく聞く話であるが、製法が動画で手に入る今の時代においても、豚骨をガンガン炊くタイプのものは、火力やにおいの問題もあるので自宅では難しい。当時の富田さんには炊ける環境と、何より好きなことを極めたいという熱意があった。そしてラーメンを商売に、という思いが膨らんできた頃、出会ったのが“ど・どんこつ”で名を馳せる「魁龍」の一杯だ。
「『魁龍』のインパクトは本当に衝撃でした。子供の頃からさまざまな豚骨ラーメンを食べて育ってきましたが、あの“ど・とんこつ”は未知との遭遇。感銘を受け、すぐに入門を志願したんです」。富田さんは、昨今“ずんだれ”伝道師としても知られている『魁龍』の森山日出一さんの元で5年間みっちりと修業。2006年、福岡市野方に「ラーメン処 西谷家」を開業する。屋号は、坂本龍馬好きの富田さんが“才谷屋”にちなんで付けたものだ。
「西谷家」のラーメンは、豚頭、ゲンコツ、背脂、皮などで作られる。強火で10時間炊き込んだものが「ラーメン白」のスープ。そして、追い骨をしてさらに10時間煮込み、骨がボロボロになるまで混ぜ込んだものがデフォの「ラーメン」のスープとなる。
「福岡市の西エリアや糸島界隈にはない、とにかく濃いラーメンを作ってやろうと。ただしケモノ臭は極力抑え、心地よいフレーバー、醤油が香り立つような一杯です。最初は『ラーメン』のみだったんですが、年配のお客様から『濃いすぎん?』という声も頻発したので『白』も作ったという流れですね」と富田さん。骨の量がとにかく多く、コッテリした方は、丼1杯に1kg入る計算になるという。
また、「西谷家」は豚骨ベースのチャンポンも激うま。絶対に食べて欲しい。豚骨スープとラードを中華鍋で炒めることで再乳化し、さらには野菜のエキスも染み出し、トロリとキメの細かい舌ざわりのスープに。
ラーメンと同じく自社製麺室で作っている中太チャンポン麺のモチモチ感も申し分ない。
普段使いの店として、「濃い豚骨ラーメンが食べたい」という来福客を連れていく店としても頼もしい。福岡西エリアに濃厚豚骨「ラーメン処 西谷家」あり。糸島、唐津方面へのドライブついでに立ち寄ってみてほしい。