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“バリうま”“ちかっぱうまい”。いやいや「ほんなこつうまか!」と賛辞を送ろう。7色豚骨「拉麺 空海」

上村敏行ラーメンライター
「拉麺空海 那珂川本店」の「チャーシューメン」。ほんなこつうまか!

突然だが、博多ラーメンにまつわる博多弁の小話を。

「“バリ”うまか」

「“ちかっぱ”うまか」

「“ほんなこつ”うまか」

博多弁で、すべて「本当にorすごく、おいしい」の意である。

「バリ」に関しては、博多ラーメンの麺の硬さの要望「バリかた」が広がることにより、もはや全国区で通じるフレーズであるし、「ちかっぱ」に関しても女子が話すと可愛く聞こえる方言の代表格で、“バリ”と並ぶキャッチーな博多弁として一定以上知られているというのが筆者の感覚だ。問題は「ほんなこつ」。人気としては“バリ”と“ちかっぱ”に大きく溝を開けられている印象だが、筆者自身は大好きな字面と響きで、特に濃い「豚骨ラーメン」に最大限の賛辞を送りたい時に“腹の底から感動を伝えてくれる”言葉だと思っているのだが、いかがだろう。

「ほんなこつうまか」を“とんこつ”ラーメンの賛辞の言葉として広めよう
「ほんなこつうまか」を“とんこつ”ラーメンの賛辞の言葉として広めよう

ちなみに「バリ」「ちかっぱ」「ほんなこつ」3つとも英語で言うと「very」、副詞であるが、「ほんなこつ」だけ、「本当のこと」(truth)の意味合いも強い。つまり「その話、ほんなこつ(本当)?」は成り立つが、「その話、バリ?」とか「その話、ちかっぱ?」とは言わない。一方、ラーメン店で替え玉をする時に「替え玉バリカタで!」これはいつものコール。「替え玉ちかっぱカタで!」バリの方が多いがまあ使わないことはない。が、「替え玉ほんなこつカタで!」は絶対に使わない。

このように“ほんなこつ”は奥が深い。そして、前述したように、野趣あふれる濃厚豚骨ラーメンを称する言葉として、とてもマッチするのだ。

豚骨大将が迎える、“ほんなこつ”うまか「拉麺 空海 那珂川本店」

本題に入るまで長くなってしまったが、今回はそんな「“ほんなこつ”うまか豚骨ラーメン」の一角。今年2024年で20周年を迎えた、福岡県・那珂川市の「拉麺 空海 那珂川本店」を紹介する。濃厚豚骨で名を馳せる店だ。

チャーシューメンは7、8枚の豚バラ炙りチャーシューがぐるり
チャーシューメンは7、8枚の豚バラ炙りチャーシューがぐるり

“豚骨大将”の愛称で親しまれる店主の柴田佳幸さんは1976年福岡出身。ホテルの中華料理店で腕を磨いた後「ラーメン暖暮」でラーメン職人としてのキャリアをスタートさせる。「暖暮」は、2002年の「九州ラーメン総選挙」(FBS)でグランプリに輝いた店。受賞した当時の長蛇の列には筆者も度肝を抜かれた。テレビがヘリコプターで上空から中継したラーメン店は、後にも先にもここだけではないか。

豚骨大将こと柴田佳幸さんは地域の子供たちにも人気がある。「いくつになってもラーメン屋のオヤジでいたいですね」
豚骨大将こと柴田佳幸さんは地域の子供たちにも人気がある。「いくつになってもラーメン屋のオヤジでいたいですね」

「妻の親戚が『暖暮』の創業者であったことがきっかけ。勤めていた4年間は本当に刺激的で勉強になりました。グランプリ受賞後の忙しさは半端なかった。でも、その経験があるからこそ、何が起きても動じなくなりましたね。それまでの料理の経験とは異なり、ラーメン作りは食材を余すところなく使うのでロスが出にくいというのも発見でした。おもしろい!やりがいもある!!人生をかけラーメンを極めていくことを決めました」と修業時代を振り返り、感謝を込めて話す柴田さん。

2004年、自身の店「拉麺 空海 那珂川本店」を開業した。屋号は子供の名前を一字ずつ取ったものである。

「福岡のラーメン業界には誇れる職人仲間がたくさんいます」
「福岡のラーメン業界には誇れる職人仲間がたくさんいます」

「2004年から始めたわけですが、当時の福岡のラーメン業界は特に盛り上がっていましたよね。同時期に創業した『博多一幸舎』の吉村幸助さんはじめ、『らーめん四郎』の黒田光四郎さん、『玄瑛』の入江瑛起さんなど、まわりにはすごい方ばかり。いろいろとアドバイスをいただき、自分でも食べ歩きを重ねる中で『やっぱり自分は濃厚ど豚骨系が好きだ』ということに改めて気づいたんです」。

奥のスープ室から営業用の本釜(写真)にスープを移す。程よいとろみのある豚骨スープ
奥のスープ室から営業用の本釜(写真)にスープを移す。程よいとろみのある豚骨スープ

柴田さんが作るラーメンは、豚頭を中心に、豚足、背脂を炊き込んだ濃厚味。下処理から含め20時間かけて煮出すことで、ガツンとした旨味を絞り出している。「豚頭はコク、豚足はなめらかさ、背脂は甘味を引き立てる効果があるんです」と柴田さん。

麺は、福岡の名製麺所「青木食産」に“バリカタ2秒”で上がる細麺を特注している。

しなやかなコシがある細ストレート麺
しなやかなコシがある細ストレート麺

「青木食産」謹製の木札が飾られる
「青木食産」謹製の木札が飾られる

また、同店は“7色の豚骨ラーメン”があることでも有名。

「白」(基本)、「黒」(マー油)、「赤」(唐辛子)、「茶」(黒+赤)、「青」(煮干し)、「黄」(カレー)、「緑」(ネギ盛り)という具合だ。「初期は白、黒、赤のみだったのですが、お客様の要望に応えながら、また自分の食べたい味変を試しながら徐々に増えていって7色に。ちなみに青は海を連想する煮干しです。他にもこれまで桜エビを入れた桃色、あっさり味のHKT(博多豚骨ラーメン)も限定で作ったことがありましたね」と、ちゃめっけたっぷりで話す柴田さん。

チャーハンも、ほんなこつうまい!
チャーハンも、ほんなこつうまい!

「拉麺 空海 那珂川本店」は2024年6月に20周年を迎える。

6月16日(日)に、くじ引きでラーメンが無料、100円などになる20周年イベントを予定しているので、“ほんなこつ”うまか濃厚豚骨を味わいに、足を伸ばしてもらいたい。

柴田さんと奥さん。現在2代目候補の息子も店に入る
柴田さんと奥さん。現在2代目候補の息子も店に入る

2024年6月16日(日)に創業20周年祭を開催する
2024年6月16日(日)に創業20周年祭を開催する

【拉麺 空海 那珂川本店】
住所:福岡県那珂川市松木1-1-1
電話:092-953-7111
時間:11:00〜14:50、18:00〜21:50
休み:月曜
席数:20席(カウンター8、テーブル12)
駐車場:10台(無料)

ラーメンライター

1976年鹿児島市生まれ。株式会社J.9代表取締役。2002年、福岡でライター業を開始。同年九州ウォーカーでの連載「バリうまっ!九州ラーメン最強列伝」を機にラーメンライターとして活躍。各媒体で数々のラーメンページを担当し、これまで1万杯以上完食。取材したラーメン店は3000軒を超える。ラーメン界の店主たちとも親交が深く、ラーメンウォーカー九州百麺人、久留米とんこつラーメン発祥80周年祭広報、福岡ラーメンショー広報、ソフトバンクホークスラーメン祭はじめ食イベント監修、NEXCO西日本グルメコンテストなど審査員も務めてきた。その活躍はイギリス・ガーディアン紙、ドイツのテレビZDFでも紹介

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