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廻るならぬ“泊まる寿司屋”は「鯛らーめん」も旨すぎる。糸島市で話題の心に沁みる新業態

上村敏行ラーメンライター
“泊まる寿司屋”「一力寿司」で食べられる話題の「鯛らーめん」

泊まって楽しむディープ糸島。バリうま鯛ラーメン、寿司、さらなる驚きが待つ!

サーフカルチャーと共に発展し、紺碧のビーチ沿いにはシャレたカフェやショップがずらり。山海とも魅力にあふれ、食材の宝庫としても知られる福岡県糸島市。福岡市街からアクセス至便であり天神・中洲エリアを拠点としても日帰りできる気軽さが多くの観光客を惹きつける。しかし昨今、インバウンドも含め気運が高まっているのが日帰りでなく“泊まって楽しむディープ糸島”。海、山、駅前と広く糸島市一円で宿泊施設も増え始めている。

今回紹介する糸島市・高田の「一力寿司」は屋号の通り寿司店だ。同時に糸島ステイの新しい選択肢となる“ゲストハウス”であり、“ラーメン処”であり、さらに旅の記憶に残る演出を行う“おもいで屋”でもある。何のことやらと思う人もいるかもしれないが、人間模様が交差するこのディープスポットでの“感動”は体感するほかには分からない。絶品の地モノのネタから締めの鯛ラーメンへと誘うコースと共に“泊まる寿司屋”の一夜をレポートする。

「一力寿司」のアプローチ。進むと非日常体験が待っている!
「一力寿司」のアプローチ。進むと非日常体験が待っている!

「一力寿司/鯛らーめん 穂と花.」は、JR周船寺駅と波多江駅の間の糸島市・高田エリア、国道202号から小路を南側へ入った先にある。淡い照明にボワリと浮かぶアプローチ。建物の右側に2階のゲストハウスへ直結する入口があるが、まずは寿司店の方から入りカウンターでチェックイン、宿帳に記入。16時からチェックイン可能だが、この日は19時に到着。

カウンターと広々とした座敷席。ゲストハウスへは店内奥からと、建物外からと2箇所の扉がある
カウンターと広々とした座敷席。ゲストハウスへは店内奥からと、建物外からと2箇所の扉がある

6席のカウンターと小上がりの座敷を備えた店内。伊万里焼の大皿の前で迎えてくれるのが大将の西原良史さん。糸島生まれ、糸島育ち。1978(昭和53)年創業の同店を父から継いだ2代目である。まずは、寿司だけじゃない、彼の“ラーメン職人”、“おもいで屋主人”としての顔も紹介しておかねばなるまい。

店主の西原良史さんと奥さん。あ・うんの呼吸で客をもてなす
店主の西原良史さんと奥さん。あ・うんの呼吸で客をもてなす

2017年、西原さんは魚の目利きや料理人としての経験を活かした新たな糸島名物を作った。それが「鯛らーめん」。ジャンルは清湯系ではなく、がっつりとした鯛白湯(たいぱいたん)である。糸島産メインの鯛を炊き、肉厚の鯛ハムをのせた一杯は瞬く間に人気となり、「鯛らーめん 穂と花.」という別屋号を立ち上げて寿司店や期間限定店などで販売してきた(ラーメンは後ほど詳しく紹介する)。

身震いするぐらい激うまの「鯛らーめん」を作ったこの人。やはり只者ではなかった
身震いするぐらい激うまの「鯛らーめん」を作ったこの人。やはり只者ではなかった

また、気になる「おもいで屋」であるが、こちらは分かりやすく言うと、寿司コースと合わせてお祝いサプライズを行うサービスのこと。西原さんと話してみるとホスピタリティ、遊び心に満ちあふれている人だと分かるだろう。その彼が趣向を凝らし繰り出すサプライズについてはネタバレとなってしまうので多くは言えないが、これまで3,000組以上を感動に包んできた実績がある。これら西原さんの十八番“寿司”“ラーメン”“お祝いサプライズ”の3要素に、構想を温めていた“ゲストハウス”をうまく融合させた業態が新生「一力寿司」なのだ。5室の客室を備えた建物を新築し、2023年に再スタートをきった。

この日はオランダ人の観光客、関東からの出張客、筆者の3人がカウンターで肩を並べる。西原さんの雰囲気作りのおかげで言葉の壁を超え、一期一会のお客さんともすぐに仲良くなれた。

糸島産のウニ、ヤリイカを使った握り。おいおい旨すぎるぞ! シ・ア・ワ・セ
糸島産のウニ、ヤリイカを使った握り。おいおい旨すぎるぞ! シ・ア・ワ・セ

カメノテから始まり、大ぶりの岩牡蠣、ヤガラ、イサキ、ミミイカなど、糸島産の鮮度特級魚介を堪能。筆者自身“シャコ”を“生”で食べたのは初めてであった。ボイルとは全く違う食感で、ゴマ油のタレともマッチしてうますぎる。糸島の地ビール、日本酒、リキュール、ワインと酒もススムぅ!

初夏が旬の糸島産岩牡蠣。添えられた柑橘も糸島のものだ
初夏が旬の糸島産岩牡蠣。添えられた柑橘も糸島のものだ

丁寧な手仕事が光る
丁寧な手仕事が光る

アルコールもメイドイン糸島をしっかりと押さえたラインナップ
アルコールもメイドイン糸島をしっかりと押さえたラインナップ

そして、締めに出てくる「鯛らーめん」である。この一杯、声を大にして言おう「うまっ!!」。糸島産中心の鯛のアラ、乾物のうまみ詰めたスープは、動物系素材はゼロ。澄んだスープではなく、あえてガッツリと白濁させた「鯛白湯」に仕立て、さらに鯛の油も生かし“鯛っぷり”を強調する。かつ、臭み、エグミはなく飲みやすい濃度、塩気にしてあるのも見事。具材は鯛やサワラ、ブリなど天然地魚の生ハム、赤味噌仕立ての鯛のほぐし身、糸島産の穂先メンマなど。鮮魚の生ハムは丼の中でスープの熱が徐々に入っていき食感、味わいが変化。「製麺屋 慶史」に特注する麺との相性も抜群である。

煎り酒風のカエシを作るときに使用した梅干し、多彩な節を味変調味料として用意する
煎り酒風のカエシを作るときに使用した梅干し、多彩な節を味変調味料として用意する

「鯛だけでも“めでたい”ですが、松の実、梅風味煎り酒、そして穂先メンマと“松竹梅”も盛り込んであるので、ご利益ありますよ」と笑いながら話す店主の西原さん。

そうそう、職人としての確かな腕だけでなく、こういう遊び心が西原さんの真骨頂だ。そういえば以前「鯛のタイラーメン」、つまり鯛ダシでトムヤムクン風のタイラーメンを作ったこともあった。「“廻る”ではなく“泊まる”寿司屋です」との言葉も、ちゃめっけたっぷりである。

隣に座っていたオランダ人の観光客も鯛ラーメンにはどハマりしたようで最後の一滴まで完食していた。

ーーー終盤に差し掛かり、ここから「おもいで屋」のサプライズが始まるわけだが、先にも言ったように、それはお楽しみということで詳細は伏せておく。ひと言“非日常の感動体験”であることは間違いない。現にサプライズを受けたオランダ人も涙目になって喜んでいた。おもてなしの心は万国共通で響くのだ。

ゲストハウスや寿司コースの予約は下記、公式インスタグラムから。

現在、平日の夜のみ、立寄りでも「鯛らーめん」を味わうことができる。

ゲストハウスの客室はシングル(写真)が3、ツインが1、トリプルが1の全5室。素泊まり利用も可能だ。
ゲストハウスの客室はシングル(写真)が3、ツインが1、トリプルが1の全5室。素泊まり利用も可能だ。

普段糸島ドライブは日帰りで楽しんでいる福岡近郊の方、また遠くからの観光、出張でもいつも天神、博多駅エリアに泊まっている人。そんな方々に、たまには趣向を変えて、この寿司&ラーメン&ゲストハウス&サプライズを体感してもらいたい。非日常の感動体験が待っている!

2階ゲストハウスの共用スペース。サーフィンや釣りを楽しむ人の利用も多い
2階ゲストハウスの共用スペース。サーフィンや釣りを楽しむ人の利用も多い

【一力寿司/鯛らーめん 穂と花.】

住所:福岡県糸島市高田5-20-8

電話:092-323-2015

インスタグラム@hotohana

ラーメンライター

1976年鹿児島市生まれ。株式会社J.9代表取締役。2002年、福岡でライター業を開始。同年九州ウォーカーでの連載「バリうまっ!九州ラーメン最強列伝」を機にラーメンライターとして活躍。各媒体で数々のラーメンページを担当し、これまで1万杯以上完食。取材したラーメン店は3000軒を超える。ラーメン界の店主たちとも親交が深く、ラーメンウォーカー九州百麺人、久留米とんこつラーメン発祥80周年祭広報、福岡ラーメンショー広報、ソフトバンクホークスラーメン祭はじめ食イベント監修、NEXCO西日本グルメコンテストなど審査員も務めてきた。その活躍はイギリス・ガーディアン紙、ドイツのテレビZDFでも紹介

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