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独身と夫婦との間で新聞や書籍などへの支出傾向にはどのような違いがあるのか(2023年公開版)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
通勤時に新聞や雑誌を購入して読む人も少なくなった雰囲気(写真:イメージマート)

インターネットという新しいメディアの登場で、紙媒体のビジネスは一様に厳しいとの話を聞く。世帯の種類で新聞や書籍などの紙媒体への支出傾向にはどのような違いがあるのだろうか。単身世帯と二人以上世帯の違いについて、総務省統計局による家計調査の結果(年次分は2022年分が最新)から確認する。

まずは月次の世帯購入頻度(※)。今グラフに関しては「世帯単位での動き」であることに注意。単身世帯は当然世帯主本人のみ、そして二人以上世帯は夫か妻の片方どちらか、さらには子供が購入しても(子供の小遣いによる調達までは「家計」にカウントしきれていないので、あくまでも「世帯全体のお財布から買った」もののみとなるが)購入世帯として計上する。

↑ 単身・二人以上世帯の世帯購入頻度(月あたり、種類別)(2022年)
↑ 単身・二人以上世帯の世帯購入頻度(月あたり、種類別)(2022年)

2022年ではすべての種類で二人以上世帯の方が高い値が出ている。雑誌や書籍はほぼ同じ値だが、これは単身世帯は二人以上世帯と比べて、世帯の可処分所得のうち自身の趣味に投じる割合を自由に采配できる割合が高いからだろう。

「二人以上世帯は単身世帯と比べて、購入する機会を持つ人が2倍以上(少なくとも夫婦)なのだから、世帯購入頻度も2倍ぐらいの差が出るはず。そこまでいかなくとも、二人以上世帯の方が高くなるのは当然」との意見もあるに違いない。その考え方は一理ある。しかしいずれの媒体においても、両種類世帯間で差異はさほど大きなものではない。一方で前年比を算出すると、それぞれの世帯でどのような変化が起きたのかが分かる。

↑ 単身・二人以上世帯の世帯購入頻度(月あたり、前年比、種類別、ppt)(2022年)
↑ 単身・二人以上世帯の世帯購入頻度(月あたり、前年比、種類別、ppt)(2022年)

紙媒体は苦境の中にあるが、新型コロナウイルス流行により在宅時間が増えたため、時間を費やすための手段として購入する人が増えたとの指摘がある。今件の値を見ると、2022年においてはその恩恵も得られず、すべての世帯種類・種類別で前年比マイナスの結果が出てしまっていることが分かる。特に単身世帯では雑誌と書籍、二人以上世帯では新聞のマイナス度合いが大きい。

なお単身世帯の6割足らずが新聞を月ぎめで購読している計算になるが、この値を高いと思う人がいるかもしれない。これは高齢者比率の影響によるものの可能性がある。高齢層が新聞好きなのはよく知られている話だが、単身世帯では特にその傾向が強い。実際、2022年における単身世帯でその年齢階層別の新聞への支出金額を見ると(年齢階層別の世帯購入頻度のデータは公開されていないので、購入者・非購入者を合わせた支出金額から購入性向を推測するしかない。また新聞単価そのものは種類によって大きな違いはない)、若年層と高齢層との間で新聞購入への姿勢に大きな違いがあるのが分かる。

↑ 単身世帯支出金額(新聞、月あたり、年齢階層別、円)(2022年)
↑ 単身世帯支出金額(新聞、月あたり、年齢階層別、円)(2022年)

単身世帯では34歳までの場合、新聞には月に60.2円しか支出していない。他方60歳以上は2146.6円。65歳以上に区切るとさらに金額が上乗せされるため、より高齢になるに連れて新聞への支出金額が上乗せされることは容易に想像できる。

ちなみに家計調査における単身世帯での抽出率調整後の世帯分布を見ると、高齢層はおおよそ増加の一途をたどっていたが、ここ数年は横ばい、さらにわずかだが減少にすら転じている。

↑ 単身世帯・世帯数分布(抽出率調整、年齢階層別)
↑ 単身世帯・世帯数分布(抽出率調整、年齢階層別)

新聞をよく読む高齢層の回答者数比率が高ければ、単身世帯全体の世帯購入頻度の値が高いものとなっていても何ら不思議ではない。

■関連記事:

【雑誌や書籍の買われ方の移り変わりをさぐる(2022年公開版)】

【本屋の場所、大きさ別・雑誌やコミックの売上全体に占める割合(2015年)(最新)】

※世帯購入頻度

世帯購入頻度とは世帯単位での月あたりの購入頻度。例えば特定の世帯において該当期間中に誰かが2回雑誌を購入すれば、その世帯の期間中の世帯購入頻度は200%になる。非購入世帯も含めての計算であることに注意。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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