【マラソンで疲れるのは足だけではなくて】運動誘発性心臓疲労について
読んで頂いてありがとうございます!
たくや/ランナーです。都内で医師&ランニングコーチをしています。
今回は心臓疲労~運動誘発性心臓疲労~マラソン誘発性心臓疲労についてまとめます。
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はじめに
心臓は一生止まらずに動き続けることから、一般的に「心臓は疲れない」と言われています。ですが超持久力競技のゴール後に、心臓の働きが低下していることが報告されています。これを心臓が疲れている~心臓疲労(Cardiac fatigue)と呼んでいます。
運動の後なので運動誘発性心臓疲労(Exercise-Induced Cardiac fatigue)、マラソンの後の場合はマラソン誘発性心臓疲労(Marathon-Induced Cardiac fatigue)とも呼ばれています。
具体的に文献からみてゆきましょう。
文献①
2010年1月1日から2021年8月1日までの10年間に公開された「マラソン誘発性心臓疲労」の論文24編をまとめた文献をみてゆきます。
その中の7編の論文では、スタート前とスタート後の心臓の動きを、超音波検査やMRI検査を用いて調べています。結果、心臓の収縮する能力は低下していなかったそうですが、拡張する能力が低下していたとのことです。
この結果からおそらく、マラソンの後半に心臓の働きが低下していたことが予想されます。拡張できないと、心臓から拍出する血液量は低下します。なので、心臓自体の働きは低下してパフォーマンスも低下してしまったのではないでしょうか。
文献②
次に標高2000mの高地での55kmのウルトラマラソンにおいて、19人の男性市民ランナーの心臓疲労を調べた2022年の文献をみてみます。
ここでは心臓の働きが5%低下することを心臓疲労と定義しましたが、14人中10人のランナーで心臓疲労がみられました。そして面白いことに、そのなかの6人は一方の心室のみ心臓疲労の状態であったとのことでした。
要は心臓のつかれる場所は人によって異なるようです。おそらく症状の出かた(動悸がしたり、息苦しくなったり、脚がだるくなったり)にも、個人差があるんではないかと思います。
さらに文献では、心臓疲労の予測因子は唯一年齢(高齢)であったとしています。
どうやって心臓疲労を検出するか
とはいえマラソンでは、極度に疲弊してしまいます。なので心臓の疲れ自体を察知・感じとるのは非常に困難です。どうやって感じとったらよいのでしょうか。
筑波大学の鍋倉先生は著書の「続・マラソンランナーへの道」のなかで「ドリフト現象」とよばれるものの原因の一つに、「心臓(心筋)の疲労によるポンプ機能の低下がある」としています。
「ドリフト現象」とは、一定のペースで走っているにも関わらず、徐々に心拍数が速くなる現象のことです。この現象は主に発汗などによる循環血漿量の減少が原因とされていますが、前述のように心臓疲労によっても起こるようです。
しっかり水分は摂取しているのに、徐々に心拍数が上がってきて息が上がってくる。そんな時は心臓疲労を起こしている可能性があります。
まとめ
マラソンで疲弊するのは脚だけではありません。心臓も酷使され疲労します。
しっかり水分を摂っていても、中終盤に心拍数が上がってきたら心臓疲労かもしれません。そんな時はタイムが出ないとも言われています。そして心停止の原因になる可能性もあるかもしれません。
心臓が疲労したら、無理をせず減速して心臓への負担を和らげましょう。
以上、最後まで読んで頂いてありがとうございました。
もっと詳しく書いているので、興味があれば自分のNOTEも参照下さい:
(ビアランニングドクターのNOTE:心臓が疲れる?「マラソン誘発性心臓疲労」~マラソンの時に疲れるのは脚だけではなくて~)
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たくや/ランナーについて
中学・高校・大学と陸上競技部で、そして卒業後もランニングを続けています。フルマラソンのベストは2時間50分。
今は都内の病院で勤務をしつつ、ランステでコーチをしています。
発信はおもにNOTEでしています(ビアランニングドクターのNOTE)