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北京五輪終了で北朝鮮がミサイル発射を再開か 「Xデー」は?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
軍事パレードで登場したSLBM「北極星4型」(朝鮮中央テレビから)

 北京冬季五輪が終わった。五輪期間中は鳴りを潜めていた北朝鮮がミサイル発射を再開するのか、韓国の関心はその一点に向けられているようだ。

 北朝鮮のミサイル発射は今年1月5日から始まり、1月30日までの間、延べ8回行われたが、2月に入ってからは自粛していた。IOC(国際五輪委員会)が「五輪休戦」を呼び掛けていたこともあるが、何よりも五輪が同盟国の隣国・中国で開催されたことから北朝鮮は水を差すような行為を一切控えていたようだ。しかし、五輪が終われば、実施的に解禁となる。

(参考資料:北朝鮮が核実験とICBMの発射を予告!)

 では、北朝鮮は実際にこれからミサイルの試射を再開するのだろうか?再び、始めるとすれば、その時期はいつ頃になるのか、直近のケースから予想してみる。

 前回の平昌冬季五輪(2018年2月9日-25日)では金正恩(キム・ジョンウン)総書記がこの年の新年辞で北朝鮮の参加を表明し、これを機に敵対している米国との対話の道が開かれたことで五輪終了後はミサイル発射を中断させていた。しかし、その前のソチ冬季五輪(2014年2月7日-23日)では五輪終了から4日後の2月27日に短距離ミサイルを4発発射している。

 北朝鮮はソチ五輪には選手団を派遣しなかったものの開会式には当時、No.2の金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長が出席していた。しかし、米国が五輪終了直後(24日)から射程3000kmの巡航ミサイル・トマホークを搭載した原子力潜水艦「コロンブス」を動員した米韓合同軍事演習を実施したことから北朝鮮は対抗措置として射程200km以上の弾道ミサイル「スカッドB」を連射していた。弾道ミサイルの発射は2009年7月4日以来のことであった。

 北朝鮮はこれを機に3月3日には射程500kmの弾道ミサイ「スカッドC」を2発、4日に「KN-9」を7発、16日に射程70kmの短距離ロケット弾を25発、22日に同30発、23日に同16発、そして26日には平安南道・粛川付近から日本海に向けて中距離弾道ミサイル「ノドン」2発を発射していた。

 また、2016年のリオ夏季五輪(8月5日―21日)では開幕2日前に中距離弾道ミサイル「ノドン」を2発発射していたが、五輪期間中は1発も発射しなかった。しかし、終了から3日後の8月24日、北朝鮮にとっては「先軍の日」の前日に日本海に面した咸鏡南道の新浦付近の潜水艦弾道ミサイルを発射していた。この時も米韓が8月22日から夏恒例の合同軍事演習(乙支フリーダムガーディアン)を開始したことへの対抗措置であった。

 米韓合同軍事演習は9月5日まで実施されたが、北朝鮮は演習終了日のその日に中距離弾道ミサイル(スカッドER)を3発発射し、9日の建国記念日には5度目の核実験を強行していた。

 韓国は来月9日が大統領選挙投票日である。

 大統領選挙絡みでみると、保守系の朴槿恵(パク・クネ)大統領が当選した2012年の大統領選挙の時は投票日(12月19日)1週間前の12日に人工衛星と称して長距離弾道ミサイル「テポドン」を発射している。また、朴大統領就任(2013年2月25日)直前(2月12日)に3度目の核実験を実施していた。

 北朝鮮のミサイル発射が待機状態にあるならば、今月27日はハノイでの米朝首脳会談決裂3周年にあたることからそのあたりが「Xデー」になるかもしれないが、「五輪休戦」はパラリンピック(3月4日~13日)終了後の1週間後まで続くことから北朝鮮が厳守するならば、それまでの間はやらない可能性も考えられる。そうなると、次は金日成(キム・イルソン)主席生誕110周年を迎える4月15日あたりということになる。

 北朝鮮は10年前の生誕100周年の時は2日前の4月13日に「人工衛星」(テポドン)を発射していた。金総書記が昨年1月の党大会で「短期間内に軍事衛星を保有する」と公言していることもあって韓国の情報機関では衛星発射を予想しているが、北朝鮮は20年10月の軍事パレードと21年1月の軍事パレードで登場した潜水艦発射弾道ミサイル「北極星4型」「北極星5型」を含めまだテストしていないミサイルがあるだけに北朝鮮が何を持ち出すかは正直言って予測不可能だ。どちらにせよ、米韓合同軍事演習が予定どおり3月~4月に行われるかどうかにかかっているようだ。

(参考資料:「朝起きたら、北朝鮮がミサイルを発射していた」「悪夢」が蘇る! 「Jアラート」が鳴る日が来るのか?)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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