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日本風に自然に流される仕事人生もアリ! セレンディピティ(幸福な偶然)をつかまえる方法

横山信弘経営コラムニスト
自然と共生するキャリアデザイン(写真:アフロ)

日本的な「自然」との向き合い方

自分の仕事人生を自分自身でデザイン(設計)することを「キャリアデザイン」と呼びます。「設計」というぐらいですから、建築物を思い出しますね。建物を設計するように自分のキャリアを設計し、その設計したとおりの建築物を築き上げていく方法です。設計するためには適当ではいけません。構造や素材、間取り、そこで生活する人の嗜好など、それなりの知識、技術を要します。それなりに配慮しなければならないことがあることでしょう。

日本建築と西洋建築とを比較すると、自然とどう向き合うのかでスタンスが異なると言われています。石造りをベースにした西洋建築は、強固で丈夫であり、自然と対峙していると言われています。いっぽうで木や竹、藁で構成された日本建築は、原始的。自然と対峙するのではなく、自然と溶け込む建造物を作ってきた歴史があります。

アニミズム的な思想かもしれませんが、自然をねじ伏せるのではなく、自然に身を委ね、その力を引き出す知恵を日本人は発達させてきたと言えるでしょう。昨今は日本建築にも西洋の価値観が浸透し、自然と真向い、明確に切り分けようとする住宅や建築物が増えていると言えますが。これは建築物のデザインのみならず、キャリアデザインのスタンスにも表れていると言えます。

自然や偶然に身を任せたうえで、職場環境と調和し、自分の力を最大限を生かそうという仕事スタンスではなく、自分の人生は自分で切り開くもの、自分が置かれた環境は関係がない、自分の仕事人生は自分でデザインするのだという西洋的なスタンスが浸透しつつあります。

建築物同様、どちらがいいとか悪いとかではなく「相性」の問題と捉えたらいいと私は考えています。

「山登りの人生」と「川下りの人生」

私はよく「山登りの人生」と「川下りの人生」の話を講演などで語ります。「山登りの人生」は、山の頂上を見据えて一歩一歩登っていく人生です。反対に「川下りの人生」は、川の流れに身を委ねる人生です。比較すると山登りのほうが主体性が求められることでしょう。登るのをやめようと思えばやめられるし、他の山を目指そうと思えば、比較的スムーズに切り替えられます。いったん下山し、自分はどんな山を登りたいのかと思い悩むこともできます。

川下りのほうは、いったんスタートしたらなかなかやめられません。こちらも、「この川をどう下るべきか」とプランを設計しなければなりませんが、立ち止まって考える余裕はほとんどない。「出たとこ勝負」となりやすい。自然に逆らうことはできないため、自然の力を利用しながらも、舟が転覆しないように流れに乗る力量が試されます。

流行に敏感、周りの意見に流されやすい人は、自然に身を任せつつ、いろいろな出会いや偶然に感謝しながら、その中で自分がどう選択するかでキャリアを積んだほうがいいかもしれません。自分の考え、価値観がはっきりしていて、周囲に振り回されず主体的に物事に取り組むことができる人は、自然と対峙する西洋的なスタンスのほうが合っているかもしれません。どうキャリアをデザインするかは、自分の性格と向き合ってみることを私はお勧めします。

若いころに「どんな仕事をやりたいのか?」「どんな仕事をすることでやりがいを感じるのか?」を問い続けて、苦しくなるばかりの人は、いったんその自問自答はやめて自然の流れに身を委ねていいのではないかと思っています。

会社の中期経営計画は3~5年。個人のキャリアプランは10~20年?

私は企業の現場に入り、目標を絶対達成させるコンサルタントです。企業には事業計画があります。3~5年の中期経営計画から逆算した単年度の目標予算があり、これを絶対達成させることが私たちのミッションです。

ところが実際に現場に入ると、3~5年の経営計画を達成させるのも至難の業です。従業員の方々から「絵に描いた餅だ!」と非難されることもあります。外部環境の変化は予想ができません。ですからそのように言われるお気持ちもわかります。(それでも、目標を絶対達成させるために、どう行動し、どうリスクヘッジするか。私たちの手腕が問われているわけですが)

いっぽう、個人のキャリアプランを10年とか20年とかのスパンで考えようとする風潮もあります。企業でさえ3~5年の経営計画を立てても「絵に描いた餅だ!」と言われてしまうのですから、10年とか20年のスパンで仕事人生をデザインするのは非常に難しいと言えるでしょう。したがって、どうしても「抽象度の高い」言葉を並べることになります。

「お客様に感謝される仕事に就きたい」「英語を活用し、グローバルで活躍する人になる」「世界のモータリゼーションをリードし、社会に貢献する仕事に従事したい」

これらの抽象度の高い言葉は、企業でいうと、理念とか行動指針とかクレドとかミッション・ステートメントのようなもので「プラン」ではありません。細かい話になりますが、プラン、行動計画でない限りマネジメントサイクルをまわすことができません。「お題目」のようにいつも胸に抱いて、迷ったときに見返す指針のようなものにすぎません。

セレンディピティ(幸福な偶然)をつかまえる方法

セレンディピティという言葉があります。素敵な偶然、予想外の発見、素晴らしい掘り出し物、という意味合いがあります。主体的に自分でデザインする仕事人生もあるでしょうが、自然に身を任せ、セレンディピティに満ちたキャリアを満喫する人生もあると思います。

「自分はあの仕事をするために生まれてきたのだ」「あのテレビに出ている人みたいな仕事に就きたい」と頑なに考えていると疲れます。また、夢がないこと、人生の目標がないことに劣等感を持つ若者も増えていますが、そんなことはまったくないでしょう。

渡辺和子氏のベストセラー「置かれた場所で咲きなさい」で書かれているとおり、自分が今与えられた環境に感謝し、そこで根を張って一所懸命に目の前の仕事をしていれば、「素敵な偶然」に巡り合うことができると私は考えています。やはり「日ごろの行い」でしょうか。これがセレンディピティをつかまえる唯一の方法だと信じています。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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累計40万部を超える著書「絶対達成シリーズ」。経営者、管理者が4万人以上購読する「メルマガ草創花伝」。6年で1000回を超える講演活動など、強い発信力を誇る「絶対達成させるコンサルタント」が、時代の潮流をとらえながら、ビジネスで結果を出す戦略と思考をお伝えします。

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