コロナ疲労を我慢する若者へ「ありがとう」政治家の言葉が反響を呼ぶ
北欧諸国といえば、世界の幸福度ランキングでトップ常連で有名だ。その理由の一つには、信頼できる腐敗の少ない政治体制と、市民と政治家の近い距離感にある。
新型コロナで、疲労や不安を感じている人が多い。国のリーダーである政治家の言葉や打ち出す政策は、市民の心の支えにもなれば、絶望感が増すきっかけにもなる。
「北欧の政治家たちは、若者とのコミュニケーションが上手だ」と、私は取材していてよく感じる。
ノルウェーやフィンランドでは、首相が子ども向けの記者会見を開催。「お誕生日会に行ってもいい?」、「いつになったら学校に行けるの?」。首相や大臣らは、子どもからの質問に丁寧に答えた。
- フィンランド公共局YLE「Finnish PM holds press conference for children」
- 「怖がってもいい」ノルウェー首相が異例の「子ども記者会見」
休校で心の不調を感じる子どもや若者
ノルウェーでは、3月中旬からおよそ1か月にわたり、幼稚園・保育園から大学まで、全ての教育機関が休校となっていた。
ずっと自宅にいることで、メンタルヘルスを崩す若者も多い。
狭い家の中には家族が全員いて、職を失って心が不安定になった親もいる。友達に会えず、学校に行けず、外で思いっきりみんなで遊ぶこともできない。家庭内暴力や複雑な家族関係などに悩む子どももいる。
さまざまな対策を行った結果、ノルウェーでは急激な感染者の増加を抑えられていることから、6日に政府は「感染拡大はコントロール下にある」と発表。
教育現場で感染の防止対策がとられている場合は、
- 20日から幼稚園・保育園の再開
- 27日から小学校1~4年生、学童保育、高校・大学の一部の学生を対象に再開
感染を心配して、子どもを通学させたくない保護者もいる。
27日、ホイエ保健・ケアサービス大臣は、かけがえのない青春時代がコロナによって激変している若者たちに、「あなたたちのことは忘れていない、ありがとう」という感謝の言葉を述べた。
大臣が卒業前の高校生に特に感謝するのには理由がある。卒業前の彼らは「ルス」と呼ばれ、本来であれば楽しいお祝いの時期を過ごしていたところだ。
ルスの集まりや行事が中止されている事態に、同情している人は多い。
大臣や国会議員らも、みんなルスだった頃があるから、その落胆がどれほどのものか理解できるのだ。
ホイエ大臣は、自身のFacebookに自分が若かった頃のルス時代の写真も載せた。
医療現場やスーパーなどで働く大人たちに感謝する動きはたくさんあった。でも、振り返ると、若者に感謝する動きはなかった。子どもも若者も、犠牲にしているものがあるのに。
記者会見での大臣の若者への感謝の言葉は、現地で大きくニュースになり、SNSでも反響を呼んだ。
大臣のスピーチは自身のFacebookにも投稿され、19時間の間に7800回シェアされ、1100以上のコメントがついている。
私個人のFacebookを見ても、「いい言葉だ」と投稿を共有しているノルウェー人の友人たちがいた。
- アフテンポステン新聞「ルス委員会の代表が大臣の言葉に 嬉しかった」
改めて思い出した人も多かったのだろう。「若い人だって、我慢しているのだ」と。
Text: Asaki Abumi