ラ・レアルの光陰。求められる「質の高いサッカー」と崩し切れない守備ブロック。
判断が難しいシーズンに、なりそうだ。
リーガエスパニョーラ第26節終了時点、レアル・ソシエダは7位に位置している。5位のアトレティック・クルブとは勝ち点9差で、今季、チャンピオンズリーグ出場圏内(4位以内)でのフィニッシュは厳しい状況だ。
一方、ソシエダは、コパ・デル・レイで準決勝に進出している。チャンピオンズリーグでは、ベスト16に名を連ねた・マジョルカ、パリ・サンジェルマンとのセカンドレグを残しているが、コパに関してはタイトル獲得の可能性を十分に残している。
ここまで3大会で勝ち残っているのだから、スペインでは、希望のあるチームと言えるだろう。他方で、イマイチ評価しづらいのは、今季のソシエダがビッグマッチに弱いからだ。
先のパリ戦は言わずもがな、リーガのシーズン前半戦で、ソシエダはレアル・マドリー戦(1−2)、アトレティコ・マドリー戦(1−2)、バルセロナ戦(0−1)といわゆる3強との試合でいずれも敗れている。
チャンピオンズリーグ・グループステージのインテル戦では善戦したが、トータルで見れば、やはり分が悪い。
■過密日程
ソシエダは、現時点で、今季少なくとも53試合で戦うことが決定している。「53試合」だ。リーガ、コパ、CLの3大会で勝ち続けるのは伊達ではない。
そう、ひとつ、エクスキューズを考えたいのは、今季のソシエダは過密日程に追われている。本来、ビッグクラブが直面する課題に、ぶつかっているのだ。
とはいえ、「サッカーの質」で、ソシエダに問題があるのもまた事実である。
ソシエダの強いチームと対戦したときの試合を分析すると、多いのは、前から守備を行い、ガス欠になって、逆に仕留められるパターンだ。
先日のチャンピオンズリーグのパリ戦を例に挙げる。
ソシエダは前線からプレスを掛けた。「3枚プレス」で相手の4人のディフェンスラインに圧をかけ、余った1枚(SB)に対しては、自軍のS Bを打ち当てるという攻めの姿勢を見せた。
これは無論、悪い策ではない。だがリスクを伴った案ではある。
この時、重要なのはスライドだ。「縦スライド」と「横スライド」を機能させなければ、イマノル・アルグアシル監督のプレッシングは有効にならない。
左WG(バレネチェア)、左SB(ガラン)、左CB(ル・ノルマン)が連動してマークを受け渡し、同サイド圧縮の守備を可能にする。
前述の通り、リスクのあるアプローチではある。パリ戦では、相手の最も危険な選手、キリアン・エムバペがCBと1対1になる場面が何度もあった。
元来、このレベルの選手に対しては、数的優位な状況で対応すべきだ。スピード、テクニック、突破力、すべてが一級品である。一瞬でも隙ができれば、やられてしまう。
■ビルドアップの課題
また、ソシエダは依然としてビルドアップに課題を抱えている。こちらは強豪相手、だけの話ではない。
まずはパリ戦を振り返る。この試合、ソシエダはパリのプレッシングがきつくなってきた時、ロングボールをミケル・メリーノに当てるという手段を講じていた。
WG(バレネチェア)とIH(メリーノ)がポジションチェンジを行い、空いたスペースにフィードを送る。メリーノは空中戦にも強い。ミケル・オジャルサバルが不在だったという状況もある。
ただ、ここで多少ヘディングの強い選手を前線に送り競り勝たせようとしても、そうさせてくれるほどチャンピオンズリーグの舞台は甘くない。パリはマルキーニョスとダニーロが連携を取りながら、難なくボールを回収していた。
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■コンパクトなビジャレアルに苦戦した理由
強豪相手だけではない、と述べた。それは直近のビジャレアル戦でも、ソシエダのビルドアップの課題が見て取れたためだ。
共通する問題として認識すべきはソシエダの「プレス回避」の方法である。メリーノへのロングフィードもそうだが、「プレスを回避するために回避している」感が否めない。
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