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「竹島上陸」の韓国議員をブラックリストに載せ、入国禁止措置は可能か?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
現職大統領として2012年8月に初めて竹島に上陸した李明博元大統領(青瓦台配信)

 竹島(韓国名:独島)を巡っては今年も日韓の間で外交戦が展開されている。

 日本の外交青書や防衛白書に竹島が日本の固有の領土として記述されたことに韓国が抗議し、最大野党の「共に民主党」(民主党)の閔炳徳(ミン・ビョンドク)議員ら3人の国会議員を含む同党の京畿道支部「対日屈辱外交対策委員会」のメンバー、17人が4月30日竹島に上陸すると、日本が韓国に抗議するという相変らずのバトルが続いている。

 今月13日には先の総選挙で第3党に躍進した「祖国革新党」の曺国(チョ・グク)代表が10日に予告していた竹島上陸を決行した。

 韓国IT大手「NAVER(ネイバー)」がLINEヤフーに株式を売却するよう日本政府から圧力を掛けられている事態を尹政権が傍観していることへの抗議の意思表示だとのことだが、昨年6月に立憲民主党を離党した松原仁衆議院議員(無所属)が予告があった日に国会外務員会で韓国国会議員の竹島上陸を取り上げ、上川陽子外相に竹島に上陸した韓国人をブラックリストに載せ、入国禁止措置を取るよう迫ったことを全く意に介していなかった。

 松原議員は上川外相に韓国政治家らの竹島上陸が「不法入国、不法上陸である」として罰則(3年以下の懲役もしくは300万円の罰金)を掛けるべきと質し、これに対して外務省は入国審査官から上陸の許可を受けず無断で上陸していることから不法入国の対象であることは認めつつも「竹島については現実に日本が施政を行えない状況にあるので不法入国と不法上陸に関する現行入管法が適応できない」と答弁していた。

 「管轄権を行使できないので入管法を適用できない」との政府の答弁に納得のいかない松原議員は「ならば竹島に上陸した韓国国会議員をブラックリストに載せ、入国禁止措置を取れないのか」と質すと、入管担当者は「我々の一存ではできない」と答え、外務大臣官房参事官は「ブラックリストに載せる、載せないの個別の案件については答弁を控えたい」と回答を拒否した。

 上川外相は韓国国会議員の上陸は「法的正当性はない。政府は日本の領土、領海、領空を守るという点から毅然と対応していく。更なる検討をしていく」と繰り返し述べるのにとどまり、松原議員が指名手配にして、ブラックリストに載せることについては言及しなかった。

 日本政府は原則的に韓国国会議員の竹島上陸は日本の法に反する「違法行為」であり、主権侵害であると捉えているが、現実的には罰則など法の執行を行ったことはない。

 入国禁止措置についても選別的に竹島に上陸した過去のある歌手やタレントらの入国を許可しなかったケースは多々あるが、日本の自制要請を無視し、堂々と竹島に上陸した韓国の政治家に対する入国禁止措置は皆無である。また竹島上陸歴のある韓国政治家を日本入国時に事情聴取したこともない。お咎めのないままの状態が続いている。

 しかし、現実に入国禁止など制裁措置を取れば、その影響は計り知れない。ここに竹島に上陸した主な韓国の有力政治家らのリストを上げてみる。

▲大統領経験者

 李明博(イ・ミョンパク)(2012年8月現職大統領としては初の上陸)

 朴槿恵(パク・クネ)(2005年10月野党代表としては初の上陸)

 文在寅(ムン・ジェイン)(2016年7月野党大統領候補時代に上陸)

▲国務総理経験者

 韓昇洙(ハン・スンス)(2008年7月現職総理としては初の上陸)

 丁世均(チョン・セギュン)(2008年7月民主党の初代代表の時に上陸)

▲国会議長経験者

 金炯旿(キム・ヒョンオク)(2010年4月国会議長としては初の上陸)

 金振杓(キム・ジンピョ)前議長(2008年8月民主党最高委員時代に上陸)

 禹元植(ウ・ウォンシク)現議長(2019年8月民主党議員として上陸)

▲閣僚経験者

 兪弘濬(ユ・ホンジュン)元文化財庁長(2005年3月上陸)

 陳大濟(チン・デチェ)元情報通信部長官(2005年5月上陸)

 柳仁村(ユ・インソン)元文化観光部長官(2008年7月上陸)

 鄭鍾煥(チョン・ジョンファン)元国土海洋部長官(2008年7月上陸)

 李周浩(リ・ジュホ)元教育科学技術部長官(2011年4月上陸)

 李在五(リ・ジェオ)元特任長官(2011年4月と8月に2度上陸)

 白喜英(ペク・キヨン)元女性部長官(2011年5月上陸)

 孟亨奎(メン・ヒョンギュ)元行政安全部長官(2011年6月上陸)

 劉栄淑(リュ・)元環境部長官(2011年8月上陸)

 崔光植(チェ・グァンシク)元文化体育観光部長官(2011年8月上陸)

 朴振(パク・チン)前外務部長官(2010年4月国会外交委員として上陸)

▲その他の要人

 姜昌一(カン・チャンイル)前駐日大使(2005年7月議員時代に上陸)

 魚淸秀(オ・チョンス)元警察庁長官(2008年8月上陸)

 金昌龍(キム・チャンリョン)元警察庁長官(在任中の2021年11月上陸)  

 金漢吉(キム・ハンギル)現国民統合委員長(2013年8月民主党代表時代に上陸)

▲政党有力者

 朴贊大(パク・チャンデ)民主党院内総務(2019年8月 議員として上陸)

 羅景垣(ナ・ギョンウォン)「国民の力」元院内総務(2016年と18年に2度上陸)

 洪碩晙(ホン・ソクジン)尹錫悦大統領系議員(2021年8月上陸)

 成一鍾(ソン・イルジョン)韓日議員連盟所属議員(2016年と18年に2度上陸)

 劉承旼(ユ・スンミン)「国民の力」元議員、元大統領候補(2012年 議員時代に上陸)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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