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父親の命日に宮殿参拝を欠席した謎! 金正恩総書記はどこで何をしているのか?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
金正恩総書記が欠席した父親の命日(17日)の党幹部らの宮殿参拝(労働新聞から)

 金正恩(キム・ジョンウン)総書記が恒例の父親・金正日(キム・ジョンイル)前総書記の命日(17日)の錦繍山太陽宮殿参拝をどうやら欠席したようだ。宮殿には父の遺体が安置されている。

 朝鮮中央通信(18日付)は金正日前総書記逝去11周忌に際して「党中央委員会、最高人民会議常任委員会、内閣、武力機関の活動家らが錦繍山太陽宮殿を訪れた」と伝えていたが、配信された写真をみると、政治局常務委員の金徳訓(キム・ドクフン)首相や朴正天(パク・ジョンチョン)党書記(軍事担当)、李炳哲(リ・ビョンチョル)党中央軍事委員会副委員長らを筆頭に党幹部だけが出席しており、金総書記の姿はなかった。

 金総書記は権力を継承した2012年から父親の命日には2017年を除き、欠かさず参拝していた。昨年の10周忌も党幹部らと共に出席していた。2周忌(2013年)と3周忌(2014年)には李夫人も一緒に参拝していた。唯一欠席した2017年の時も最側近の政治局常務委員の趙甬元(チョ・ヨンウォン)政治局常務委員は今回同様に姿を現さなかった。

 宮殿参拝は父親命日以外に年6回ある。新年の1月1日、父親の誕生日の2月16日、祖父・金日成(キム・イルソン)主席の誕生日の4月15日、祖父の命日の7月8日、建国記念日の9月9日、労働党創建日の10月10日である。

 金正恩政権が正式に発足した2012年から2022年までの参拝出欠を調べてみると、理由は定かではないが、欠席は決して珍しいことではない。これまでも度々あった。

新年の1月1日は2018年のみ欠席している。それ以外は「皆勤」である。ちなみに2013年と2014年、そして2017年は李雪主(リ・ソルジュ)夫人が同伴していた。

父親の誕生日の2月16日は昨年まで欠かさず参拝していた。李夫人も2013年と2016年に同伴していた。奇妙だったのは一昨年の参拝の際に随行した党幹部全員が室内ではオーバーやコートを脱いでいたにも関わらず、金総書記だけが革のコートを脱がず、一礼していたことだ。年始と父の誕生日の参拝でコートを脱がなかったのは初めてであった。今年はどういう訳か、参拝を見送っている。父親の誕生日を欠席したのは極めて異例なことであった。

祖父の誕生日の4月15日は、一昨年(2020年)に限って「参拝した」との報道はなかった。この時は重病説が飛び交っていた。ロイター通信が4月12日に「金正恩が心臓手術を受けた」との情報を流したからだ。情報には尾鰭が付き、「金正恩重篤説」は米NBCのニュースの記者までもが「正恩氏は脳死状態にある」とツイートしたことで世界に伝播されていた。昨年は李雪主夫人と実妹の金与正党副部長、趙甬元政治局常務委員と朴正天軍総参謀長、それに玄松月党副部長の5人だけを伴って参拝していた。2か月前の金正日総書記の生誕日の参拝の時は100人以を連れ立っていたのとは好対照だった。

祖父の命日の7月8日は2018年のみ欠席で、それ以外は「皆勤」だった。

建国記念日9月9日は参拝しないケースが多い。参拝したのは2012年の建国64周年と翌年の建国65周年、2018年の建国の70周年、それに2021年の73周年に李夫人を連れ添った4回だけである。ちなみに2014年の年も9月3日からほぼ40日間にわたって公式の場に姿を現さなかったためこの時も「健康不安説」が流れたことがあった。加えて、9月25日に招集された最高人民会議も翌月の党創建日の参拝も欠席したことから一時は大騒ぎとなった。

 党創建日の10月10日も参拝したのは2012年、13年、党創建70周年の15年、18年、19年の5回だけで、それ以外は欠席している。一昨年の党創建75周年も欠席したが、この時は10日午前0時から始まった軍事パレードに出席していた。ちなみにこの3年間は10月10日の参拝を回避している。

 父親の命日の参拝を2017年以来5年ぶりに欠席した理由については▲固形燃料大陸間弾道ミサイル開発のための固形燃料エンジン噴射試験を参観するため15日に平安北道鉄山郡東倉里衛星発射場を訪れたまま、平壌に戻らず、18日に同じ場所で偵察衛星発射の試験発射を見届けていたため▲12月末に開催される第8期第6回党中央委員会全員会議や来年1月17日に開催される最高人民会議の準備のため趙甬元政治局常務委員や崔龍海(チェ・リョンヘ)最高人民会議常任委員長、それに妹の金与正(キム・ヨジョン)らと共に両江道の三池淵の別荘に滞在しているため▲健康不安による療養のためなど様々な憶測が流れているが、何一つ、正確なことはわかっていない。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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