巨大ブラックホールを周回して特異点へ落下する景色!NASAが最新シミュレーションを公開
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「巨大ブラックホールに接近・落下する最新映像」というテーマで動画をお送りします。
●ブラックホール落下の最新映像
2024年5月、NASAは「巨大ブラックホールに突入する際の景色」を詳細に表現したシミュレーション動画を公開しました。
日常世界では決して見ることができない、ブラックホールが織りなす常軌を逸した景色を垣間見ることができます。
○映像の概要
本映像では、天の川銀河中心にある、太陽の430万倍の質量を持つ超大質量ブラックホール「いて座A*」に接近、落下していきます。
ブラックホールの全質量が集中する中心の一点は「特異点」と呼ばれますが、特異点付近では重力が強すぎて、そこから離れるために必要な速度(脱出速度)が、宇宙の速度の上限である秒速30万kmの光速すらも超えてしまっていると考えられています。
特異点からある程度離れ、脱出速度が光速と等しくなる球面は、「事象の地平面」と呼ばれています。
その領域以内では重力が強すぎて、あらゆる物質も、光も、情報も出てくることはありません。
今回NASAは、超大質量ブラックホールであるいて座A*の事象の地平面内に落下する映像と、事象の地平面に接近したのちに離脱していく映像の2つを公開しました。
こちらは落下する方の映像です。
ブラックホールを取り巻く赤い構造は、超高温の物質から成る「降着円盤」と呼ばれる円盤状の構造です。
降着円盤は円盤構造のはずですが、ブラックホール周囲では時空が歪み、光ですら進路を歪められるため、あらゆる構造がそのままの形で見えなくなっています。
また相対論により、ブラックホール周辺のような非常に重力場が強い領域では、時間の進みが遅れることが知られています。
不思議なことに外から見ると、カメラは事象の地平面内部に落ちることなく、永遠にそこに留まるように見えるのです。
なお、小さいブラックホールに比べて、いて座A*のような巨大ブラックホールに
突入する方が、生きたまま事象の地平面内部に入れる可能性が高まります。
ブラックホールの事象の地平面以内は、「脱出速度が光速度を超えるほど重力が強い領域」なので、中心の特異点に集まった質量が大きいほど、ブラックホールの事象の地平面の半径も大きくなります。
太陽の数倍程度の質量しか持たない、比較的小柄なブラックホールの場合、事象の地平面は中心の特異点から数kmしかありません。
その場合、特異点からの距離がほんの少し違うだけで、その場所ごとにかかる重力の強さが桁違いに変化します。
一方、超大質量ブラックホールは事象の地平面の半径も巨大になるので、事象の地平面突入前だと、人間の身長程度の差ではかかる重力の差もほぼ0です。
そのため物凄く強い重力を受けて光速に近い速度でブラックホールに飲み込まれていくものの、体全体に均等に力がかかるので、体の形状を維持したまま事象の地平面の中に入ることができると考えられています。
NASAが公開したもう一方の映像では、カメラは事象の地平線の近くを周回しますが、越えることはなく安全な場所に離脱していきます。
強大な重力場の影響で、降着円盤が立体的に見えたり、ブラックホールが分裂して見えたりと、やはり奇妙な光景が広がっています。
このブラックホール接近の旅を終えて帰還した宇宙飛行士は、外部環境にいた同僚と比べて、36分だけ若くなって戻ってくるそうです。
もちろんよりブラックホールに接近したり、長い時間その環境に居続けた場合、時間の遅れの効果はより顕著になります。
あまりに極端な高密度に物質が集まることで、ブラックホールの周囲では常軌を逸した現象の数々が起きていることがわかっています。
ブラックホール本体やその周囲の異常な環境を、安全な地球から一部でも体験できるのは、まさに最新技術や研究成果の賜物と言えるでしょう。