どんどん休めと言われても〜休めないニッポンにつけ込むCOVID-19(新型コロナ)
広がるCOVID-19
もう封じ込めはできない。
新型コロナウイルス感染症COVID-19は日本国内に広がり、感染ルートが不明の感染者が出始めている。
厚生労働省は、COVID-19に感染した場合、受診の目安を以下のようにしている。
そして、以下のように述べる。
以下も参照されたい。
そう、体調悪ければ遠慮なく休めばいい。簡単なことだ…。
簡単?
そんなわけないだろう、という声が聞こえてくる。
休めない〜医師の場合
和歌山県の外科医が、体調不良を抱えたまま業務をし、感染を広げたケースが報道されたが、医師は簡単には休めない。
詳しくは山本健人先生の記事を読んでいただきたい。
山本先生は、医師が休めない理由に「主治医制という仕組み」を挙げる。
もう一つ、山本先生も指摘しているが、絶対的な人不足により休めないというのも大きい。
私は地方の病院に勤務しているが、一人しか医師がいない診療科がいくつかある。かくいう私も、病理診断科にたった一人しかいない一人病理医だ。
実は先月、私はインフルエンザにかかり、一週間休んだ。どうなったか。
交代要員がいないので、診断すべき標本は山積みになった。患者さんに病理診断の結果をお伝えする時間が延びてしまい、一部の患者さんを待たせてしまった。
このように、自分がいなければ仕事が滞るという場合、ちょっとくらいの体調不良では休むわけにはいかないという気になる。
ただ、今回は、遠隔病理診断など、大学から一部の業務支援を受けたので、とても急ぐ標本は大学病院の病理医に診断してもらった。以前遠隔病理診断がなかった時には、40度の発熱のなか診断せざるを得ない状態に陥ったこともある。緊急事態に陥る前の普通の時に備えておくことの重要性を感じる。
休めない〜非正規雇用の場合
私たち医師は、ある種の使命感と、「応召義務」(医師法19条1項に定められている「正当な事由」がない限り、医師は患者の診療の求めを拒否できないという規定)で休めない。
ただ、私たち医師が休んでも、生活の基盤が失われることはない。
休めないのは、休んだら収入が途絶える非正規雇用やフリーランスの方々だろう。
私の知人にも、インフルエンザで40度の発熱がありながら仕事をしていた人がいる。休むことを強く勧めたが、休んだら収入が途絶えて死んでしまうと言って仕事をしていた。
休んだらその分収入が減ってしまうという人は簡単には休めないし休まないだろう。
休めない〜その他の場合
ある程度安定した職業に就いている人も簡単には休めないのが現状だ。
こんな中、休みましょうと言ったところで絵に描いた餅になってしまう。
休める社会を作るには
通常の時にできていなかったことが非常時にできるはずはない。医師不足や簡単に休めない社会がすぐに変わるとは思えない。
医師不足はもう長いこと問題視されていたが、いずれ医師過剰になるからと、医学部定員の大幅増は行われていない。病院の集約化の議論も緒についたばかりだ。
しかし、感染拡大の危機にある今、できないでは済まされない。
これは今すぐ行わなければならない。政府は休んでくださいというだけでなく、休んでも大丈夫な制度を早急に整えるべきだ。
医療現場の崩壊を防ぐために
感染症コンサルタントの青木眞先生は、日本の医療体制について、トラックの荷台に凄まじい荷物が乗っている難民の写真を挙げながら以下のように述べる。
なかなか休めないほど過剰な仕事に苦しむ医療現場に、COVID-19がやってくる。ますます休めない悪循環に陥る可能性がある。
休めと口先だけでいうのは簡単だが、医師も含め、休める仕組みを作ることが、何より優先すべきことだと言うべきだろう。
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