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られあう時代へ。豊かでピースフルなアクションが始まる。

佐多直厚コミュニケーションデザイナー
られ音マークはアクションのシンボルと言えるもの。その詳細は記事にて。

「られあいませんか?」その呼びかけから見えるもの

 オリンピック・パラリンピック東京開催が迫ってきました。日本らしさとは?あるべきオモテナシつまりコミュニケーションのカタチを求めて様々な取り組みが動いています。連携するように公共空間、交通機関利用時における多様な利用者対応も検討&トライアルが進められています。これは行政、企業などの社会的組織に任せればよいのでしょうか?利用者側からの積極的な提案と体系づくりが必要なのです。典型的なものが募金活動。歳末助け合い募金はだれもが知っていて、関わりのある活動です。この『助け合い』を資金調達だけでなく、もっと深めて、熱いものにしようと動き出した民間活動があります。2018年2月にスタートした助けられあいプロジェクトです。略して、られPJです。

「られあいませんか?」

これは活動の呼びかけワードです。助けあいは聞き馴染んでいますが、なんとなく助けてあげるとか、弱者救済のような上から目線で、我がことではない慈善行動、社会貢献活動と感じてしまいます。助けることができる自分もいつ助けられるかしれない…そういう受け側視点で考えた『助けられるの連環』と考えればハードルも下がり、もっと社会を厚くつなぐ仕掛けのある社会がみえてくるのです。助けられあうとできること、られPJが。

5月開催東京レインボープライド2018にてチラシ配り。「られあいませんか~」笑顔が広がりました。 写真:筆者撮影
5月開催東京レインボープライド2018にてチラシ配り。「られあいませんか~」笑顔が広がりました。 写真:筆者撮影

られPJは席のゆずられあいから始められた

 マタニティマークや首都圏から活用が広がってきたヘルプマークなど『手助けが欲しいサイン』が存在しますが、当事者の助けてほしい気持ちが届きにくい状況です。たとえば優先席で健康そうな人が座っていて譲ってくれないという苦言を聞きます。でもられ視点で考えてみましょう。その人は本当に健康なのでしょうか。実は義足かもしれません。内部障害を抱えているかもしれません。パニック症候群で必死に耐えながら乗っているかもしれません。

 助けるられ視点でも考えてみましょう。席を譲ろうと目の前の初老の男性に声を掛けたら、

「失礼な!」と、睨まれた。

必死の思いで振るった勇気がしぼみます。マタニティマークを発見し、声を掛けるタイミングを計っているうちに他の人が譲った。

助けようとしたけど、自分には何のスキルもない。もう次に声を掛ける勇気はない…かもしれません。

 欧米ではハッキリと声に出して相手に問いかけるのが当たりまえですが、日本では察すること、そして波乱なく場を保つことが社会マナー。この特性をポジティブに捉えれば、

<自分だっていつ助けられる立場になるかもしれない。それはみんなが察してくれる。だから助けるサインを出せば理解できるはず>

声を掛ける代わりに助ける気持ちを示すツールと譲り合う人同士を引き合わせるデジタルソリューションを当事者組織、支援組織が開発し、世に送り出しています。この動きをつないで大きなアクションにしようと立ち上がったのが、この助けられあいプロジェクトです。

助けられあいプロジェクトロゴマーク。「られ」で助けられあいをビジュアル化。英文スローガン「me for you,you for me」に思いが込められています
助けられあいプロジェクトロゴマーク。「られ」で助けられあいをビジュアル化。英文スローガン「me for you,you for me」に思いが込められています

助けられあいプロジェクト案内HP:ダイバーシティウェブマガジンcococolorはこちら

助けられあいプロジェクトfacebookコミュニティページはこちら

 スタートから10ヵ月。啓発・普及に少しづつ前進しています。実感するのは助けたい人の行動や気持ちを助けるツールになれること。いつもは助けられている人も助けたいと思い、その機会を待っていること。それを支え、繋ぐことが助けられあいなのです。

さらに助ける時のスキル取得に貢献するメンバーも加わり、思いを込めたテーマソング「あたたかい未来」(作詞作曲・演奏 吉崎さとし)も生まれました。

られPJを支えるために、さらにユニークなアクションがスタート

 民間組織の少ない資金では助けるマークの開発、大量製造は難題です。この取り組みに賛同してバッジやタグが欲しくても、手に入らないのでは夢物語で終わってしまいます。クラウドファンディング、協賛社募集以外にできることはないか?啓発イベントもやりたい!メンバーたちの思いの中から生まれたのがユニークなアクション『助けられあい音楽祭~あなたの曲が社会を変えるチカラとなる~』です。

音楽作品提供・購入によるクラウドファンディング&チャリティイベントという、とてもユニークな音楽祭なのです。

ユニークポイント~その1

曲のタイトルを統一「me for you, you for me」とします。

曲に込める想いも統一「自分も助けられる人間の一人であり、共に助け合って生きていく」

ユニークポイント~その2

様々な人が存在するように募集する音楽も多様。カテゴリー、スタイル全て自由です。

ユニークポイント~その3

応募した楽曲をチャリティー販売し、プロジェクト参加団体に寄付されます。

助けられあい音楽祭公式ウェブサイトはこちら

もちろん曲を購入し、楽しんでの応援が重要です。集まった楽曲によるコンサート第一回「助けられあい音楽祭」は2019年4月1日(月)東京都八王子市のオリンパスホールにて開催されます。同じタイトルの多様な曲を多様な演奏家と観客で楽しむ音楽祭が楽しみです。

 主催する意義をNPO法人シェイクハートプロジェクトの代表、白井長興さんに聞いてみました。

左:白井長興さん 15歳の時に水泳プール事故で脊椎を損傷し、車椅子利用者に。社会活動のきっかけは3.11。障害を越える貢献と働き方を創造する活動に邁進中。右の筆者とお揃いで041レインコート着用。
左:白井長興さん 15歳の時に水泳プール事故で脊椎を損傷し、車椅子利用者に。社会活動のきっかけは3.11。障害を越える貢献と働き方を創造する活動に邁進中。右の筆者とお揃いで041レインコート着用。

「NPO法人シェイクハートプロジェクトを仲間と立ち上げ、様々な人が交流するイベントをいくつも実行し、沢山の方に助けられてきましたが、やっと助けられる~助けることができる立場になってきたことを感じています。様々な社会貢献をしている団体は数限りなくありますが、多くの団体が問題に直面して活動を縮小してしまう実態があります。一番大きいと考えているのが資金面です。

私が助けられあいプロジェクトと、このられ音アクションに力を入れているのは、団体同士で助けられあう環境を作ることで、その先にある社会の姿に希望が見えるからです。

助けられあいの土壌を社会に広め、少しだけでも笑顔が増えて、お互いを尊重する柔らかな社会になればいいなと考えています。」

改めて、られあいましょう!

 助けられあいの「られ」は、助けてもらうという意味と同時に助けることができるという意味もあります。助けられる人と書いた時に、あなたはどちらに感じましたか?今、健康そのものでも、明日は風邪をひくかもしれません。転んで怪我をするかもしれません。徹夜仕事帰りの電車で立っていられないかもしれません。

白井さんは車椅子で埼玉県川越市の観光ガイドを実施。観光客が車椅子を押し、白井さんが案内。観光を超えた体験に笑顔が溢れたのでした。つらさを我慢できない時に頼ってもいい社会。自分の可能性を提供できる社会。られPJはそれを目指しています。

 られ音の音楽募集もかなり「られ」なもののようです。基本は映像にしてyoutubeにアップですが、演奏ができないなら楽譜提供でもOK。楽譜も無理なら鼻歌でもOK。音痴だし…でもOK。(前衛音楽なんて音痴にしか聞こえないと思いませんか?) 

11月30日スタートからすでに多数の応募が届きました。具体例としてご紹介しましょう。

応募第一号は磯中ゆうきさんの<me for you, you for me 〜徒競走〜>

気軽な応募も可能です。シンガーソングライターEmi Nakamuraさんのサウンドロゴのような超短い曲とフラッシュモブが得意なうんちマンの即興曲をご覧ください。

最後は訪問介護を受けている田中直樹さんの作品<Me for You You for Me 〜君らしく〜>。田中さんは知的障害者ですが、紡ぎだす優しさ溢れる音楽で周りの人々を魅了しています。

られ音公式ツイッターページはこちら

動画作成ならびにコンサートでの演奏協力も募集しています。詳しくは事務局へご相談ください。

られあいは多様性社会のあらゆる課題解決を目指して

 られPJが目の前の課題として取り組む公共空間、交通機関利用での助けられあい。2020年オリパラ開催時には関係者やボランティアメンバーだけでなく、すべての市民が助けられあうことが必要です。 その先には様々な生活場面での課題解決が待っています。子どもの貧困、高齢者課題、フードロスなどなど。そして首都圏においても緊急課題である防災、災害への対応。災害ボランティアが多発する災害現場で活躍する様子が報道されました。しかしそのボランティアも実は生活環境や資金難に忍耐を強いられています。かつそういう修験者のような人材でなければ参加できないようでは人材難に陥ってしまいます。だれもが安心して参加し、助けることができる人を組織化し、助けてもらう人が可能な限り早く立ち直り、新しい日々を歩めるようなそんな「られ」社会を目指しましょう。

*筆者は所属する電通ダイバーシティ・ラボ活動から展開しているられPJを推進するメンバーであり、られ音についてはプロデュースをサポートしています。

ボランティアの宿舎。現地で提供いただく教室、会議室などで仲間たちと就寝。食事は自費で三食お弁当のことも多い。連日の活動を長期続けるのは大変です。写真:筆者撮影
ボランティアの宿舎。現地で提供いただく教室、会議室などで仲間たちと就寝。食事は自費で三食お弁当のことも多い。連日の活動を長期続けるのは大変です。写真:筆者撮影
真備町ボランティア現場にて 筆者撮影
真備町ボランティア現場にて 筆者撮影
コミュニケーションデザイナー

金沢美術工芸大学卒。インクルーシブデザインで豊かな社会化推進に格闘中。2008年、現在の字幕付きCM開始時より普及活動と制作体制の基盤構築を推進。進行ルールを構築、マニュアルとしての進行要領を執筆し、実運用指導。2013年、豊かなダイバーシティ社会づくりに貢献する会議体PARADISを運営開始。UDコンサルティング展開。2023年7月(株)電通を退職後2024年1月株式会社PARACOM設立。 災害支援・救援活動を中心に可能な限りボランティア活動に従事。ともなってDX事業開発、ノウハウやボランティアネットワーク情報を提供。会議体PARADISの事業企画開発を担います。

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