聖火の動画関連ルールに関するまとめ:「一般人はSNSへのアップ禁止」はデマ
「聖火リレー撮影動画、一般人はSNSへのアップ禁止」という昨年(2020年)の2月28日付けの日刊スポーツの記事が今になってツイッターで拡散してしまい、真に受けて怒りのツイートを行なっている方(有名人の方も含む)がいるようです。かく言う私も一瞬勘違いしてツイートしてしまい、1分後に消しました。
上記日刊スポーツの記事公開後、組織委はこの見解を撤回し、「過去同様、商用・販促利用を除き、IOCは個人が聖火リレーでの経験を個人使用の目的で撮影し共有することを積極的に推進する」と表明しています(参照記事(2020年3月2日付))。そもそも、公道で大衆に向けて行なっている行為を撮影して、個人が非商用で公開することを禁止できる明確な法的根拠があるとは思えません。こちらの記事では、福井健策弁護士が肖像権等を侵害するような状況でなければ禁止することは困難との見解を表明されています。なお、過去の五輪では特別法を立法して、五輪の宣伝関係で一般市民の行動を制限していた理不尽とも思える事例がありましたが(関連過去記事)、今回の五輪ではそのような措置は採られていません。
上記の過去記事が拡散した背景には、東京新聞の聖火リレーの報道ツイートにおいて「新聞メディアが撮影した動画を公開できるのは走行後72時間以内」というIOCの「ルール」に触れられたことがあると思います。
メディアでの公開についても、このようなルールを強制できる法的根拠が乏しいのは個人の場合と同様と思いますが、IOCとの力関係においてメディアが従わざるを得ないという事情はあるでしょう。もし、出禁になっても問題なしと考える一部メディアがルールを無視したときに、組織委/IOCが何らかの法的手段を採れるのかは興味深いところです。
なお、ここまでは、公道で行なわれる聖火リレーの話であって、会場(クローズドなスペース)で行なわれる競技はまた別です。この場合、組織委/IOCには施設管理権がありますので、常識的な範囲内で入場者にルールを強制することができます。サンダル履きで食事をしてはいけないという法律はありませんが、ドレスコードがある高級レストランがサンダル履きの客を退店させるのが施設管理権に基づいた正当な行為なのと同じです。
この会場内のルールについては、会場内の写真・動画撮影は自由だが、その著作権をIOCに譲渡することを義務付けるというなかなか強烈なルールになっています。つまり、会場で撮影した写真・動画をSNS等にアップするのは、(自分が撮った写真・動画であるのに)IOCの許諾があるからこそアップできるという仕組みになっているわけです。IOCがその写真・動画を(撮影者に断りなく)転用することは自由ですし、場合によっては撮影者自身の利用を禁止することもできます。めちゃくちゃな俺様ルールのようにも思えますが、実は現実的なのかもしれないというピッチで過去記事を書いています。
ということで、まとめると、
- 聖火リレー(公道)の写真・動画の個人による非商用公開→OK(むしろ奨励)
- 聖火リレー(公道)の動画のメディアによる公開→IOCルールあり(従うかどうかはメディアとIOCの力関係)
- 会場内の写真・動画の個人による公開→施設管理権に基づくIOCルール(著作権強制譲渡)あり
ということになります。