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吉田正尚を逃した球団が「吉田と共通点の多い」このFAに殺到する!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ブランドン・ニモ Aug 30, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 吉田正尚が在籍する、メジャーリーグの球団は、あっという間に決まった。ポスティングの公示から、ボストン・レッドソックスとの契約合意が報じられるまで、24時間経っていなかったのではないだろうか。

 吉田を狙っていた球団は、レッドソックスだけではなかったはずだ。それらの球団は、ニューヨーク・メッツからFAになっている、ブランドン・ニモに殺到するかもしれない。

 ニモと吉田は、共通点が多い。どちらも右投げ左打ちの外野手で、同じ年に生まれた。生年月日は、ニモが1993年3月27日、吉田は1993年7月15日だ。

 もちろん、それだけではない。ニモは、パワーを売りにする打者ではない。シーズン本塁打は、2018年の17本が最も多い。今シーズンは16本だ。ただ、パワーレスではなく、今シーズンは、二塁打30本と三塁打7本を記録した。吉田は、2019年に30本塁打まであと1本に迫ったが、ここ3シーズンの本数は、14本、21本、21本だ。日本プロ野球からメジャーリーグへ移り、シーズン本塁打は20本に届かない可能性が高い。

 一方、こちらも吉田と同じく、ニモは出塁率が高い。メジャーリーグ1年目に80打席で記録した出塁率.338を除くと、今シーズンの出塁率.367はワーストながら、2018年以降の5シーズン中3シーズンは出塁率.400を超えている。

 5シーズンのトータル出塁率.388は、このスパンに2000打席以上の112人中6位に位置する。ニモの上にいる5人は、いずれもこのスパンに125本以上のホームランを打っているのに対し、ニモは半数以下の57本だ。相手に長打を警戒され、あるいは勝負を避けられ、それによって出塁率が上がっているのではない。

 故障については、似ているというわけではないが、評価としては同じ程度だろう。2019年と2021年のニモは欠場が多かったが、その前後の3シーズンは、いずれもメッツの試合の85%以上に出場している。吉田の出場は、ここ2シーズンとも、オリックス・バファローズの試合の85%未満だ。

 違うのは、ポジションだ。同じ外野でも、ニモはセンター、吉田はレフトを主に守ってきた。レッドソックスでも、吉田の定位置はレフトになるはずだ。

 ESPNのジェフ・パッサンらによると、吉田は5年9000万ドルの契約を得た。ニモの契約は、それと同水準か、ポジションとメジャーリーグにおける実績の分、少し上が妥当のように思われる。

 吉田に代わる「プランB」ではなく、最初からニモを手に入れようとしている球団もあるに違いない。ただ、吉田が市場からいなくなったことで、相対的にニモの人気が上がり、契約は高騰する可能性もある。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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