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ニキビ治療の最前線!米国皮膚科学会が発表した新ガイドライン

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(提供:イメージマート)

ニキビは思春期の人だけでなく、大人も悩まされる厄介な皮膚疾患です。ストレス社会と言われる現代では、大人のニキビ患者も増加傾向にあります。ニキビができると、自信を失い、人と会うのが億劫になったり、外出をためらったりと、日常生活にも支障をきたしてしまいます。そんなニキビの治療法について、2024年5月に米国皮膚科学会が新しいガイドラインを発表しました。今回は、このガイドラインの内容をわかりやすくお伝えするとともに、ニキビの原因と予防法についても詳しく解説していきます。

【ニキビの原因と症状について】

ニキビの医学的な名称は「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」と言います。思春期に増加する男性ホルモンの影響で皮脂の分泌が過剰になり、アクネ菌が増殖することで発生します。ニキビができやすい部位は、皮脂腺が多く存在する顔、胸、背中です。ニキビの症状は大きく分けて、黒ずみ(面皰)、白ニキビ(丘疹)、膿んだニキビ(膿疱)、赤く腫れたニキビ(結節)の4つに分類されます。重症化すると瘢痕(傷跡)が残ってしまうこともあるので注意が必要です。

ニキビの発生には、遺伝的な要因も関係していると言われています。両親のどちらかにニキビができやすい体質があると、子供もニキビができやすい傾向があるようです。また、ストレスや不規則な生活習慣、過剰な洗顔や不適切なスキンケア製品の使用も、ニキビを悪化させる要因になります。

【ニキビの治療法について】

ニキビの治療法は大きく分けて、外用薬(塗り薬)と内服薬の2つがあります。外用薬には、ビタミンA誘導体のレチノイド、過酸化ベンゾイル、抗生物質、アダパレンなどがあります。内服薬には、抗生物質のテトラサイクリン系薬剤、ホルモン剤のエチニルエストラジオール・ノルゲスチメート合剤、抗アンドロゲン薬のスピロノラクトンなどがあります。

米国皮膚科学会のガイドラインでは、重症度に応じた治療薬の選び方が示されています。軽症から中等症のニキビには、外用薬を組み合わせて使用することを推奨しています。代表的な組み合わせは、レチノイドと過酸化ベンゾイル、レチノイドと抗生物質、過酸化ベンゾイルと抗生物質などです。これらの外用薬を組み合わせることで、ニキビの原因となる複数の要因に同時にアプローチできるため、治療効果が高まると考えられます。また、外用薬は、ニキビの炎症を抑えるだけでなく、角質層の代謝を促進したり、アクネ菌の増殖を抑制したりする作用もあるため、ニキビの予防にも効果的です。

重症のニキビや、外用薬で効果が不十分な場合は、内服薬を使用します。第一選択薬は抗生物質のドキシサイクリンで、アジスロマイシンよりも効果が高いとされています。また、ホルモン剤やスピロノラクトンも有効とされていますが、副作用のリスクもあるため、専門医の診察のもと慎重に使用する必要があります。最も強力な内服薬はイソトレチノインで、重症ニキビに対する使用が推奨されていますが、催奇形性があるため、女性では妊娠時の服用は禁忌です。

ニキビ治療で大切なのは、早期発見と早期治療です。ニキビを放置していると、炎症が深部に及んで瘢痕を残してしまうこともあります。ニキビができたら、できるだけ早く皮膚科専門医に相談し、適切な治療を受けることが重要です。また、ニキビの治療には数ヶ月かかることもあるので、根気強く治療を続ける必要があります。

【ニキビの予防法について】

ニキビを予防するためには、日々の生活習慣を見直すことが大切です。まず、規則正しい生活リズムを心がけましょう。睡眠不足や過度のストレスは、ニキビを悪化させる要因になります。また、バランスの取れた食事を心がけ、過剰な糖分や油分の摂取は控えめにしましょう。

スキンケアも重要なポイントです。ニキビができやすい部位は、皮脂腺が多く存在する顔、胸、背中なので、これらの部位は特に念入りに洗浄しましょう。ただし、洗いすぎや擦りすぎはかえって肌を刺激してニキビを悪化させてしまうので注意が必要です。洗顔は1日2回、ぬるま湯で優しく洗うようにしましょう。洗顔料は肌に合ったものを選び、しっかりと泡立ててから肌に乗せるようにします。洗顔後は、化粧水や乳液でしっかりと保湿することも大切です。

また、ニキビができやすい人は、メイクアップ用品の清潔さにも気を配りましょう。パフやブラシ、スポンジは定期的に洗浄し、清潔に保つようにします。ファンデーションやパウダーなどのメイクアップ用品は、肌に合ったものを選び、できるだけ肌に負担をかけないようにしましょう。

ニキビは、思春期の人だけでなく、大人も悩まされる厄介な皮膚疾患です。ストレスや不規則な生活習慣、間違ったスキンケアなどが原因で、大人になってからニキビができてしまう人も少なくありません。もしニキビで悩んでいるなら、一人で抱え込まずに、皮膚科専門医に相談することをおすすめします。

参考文献:

・米国皮膚科学会(AAD)「Guidelines of care for the management of acne vulgaris」Journal of the American Academy of Dermatology, 2024.

・日本皮膚科学会「尋常性ざ瘡診療ガイドライン」2017年版

https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/acne_vulgaris.pdf

・Zaenglein AL, et al. "Guidelines of care for the management of acne vulgaris." Journal of the American Academy of Dermatology. 2016;74(5):945-973.e33.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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