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皮膚疾患患者の39.4%がストレス、27.2%がうつ病に苦しむ:世界規模のメタ分析で判明

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:アフロ)

【皮膚疾患患者の39.4%がストレス、うつ病は27.2% - 世界規模のメタ分析で明らかに】

皮膚は身体の一番外側にある臓器で、ウイルスや細菌、アレルゲンなどの侵入を防ぐ防御バリアの役割を果たしています。皮膚に何らかの異常が生じると、痛みやかゆみ、ヒリヒリした感覚などの症状が現れ、皮膚疾患と診断されます。

世界では毎年約9億人が皮膚疾患に悩まされており、特に発展途上国ではその有病率は20~80%にも上ります。欧州での調査では、白斑の有病率は1.9%、アトピー性皮膚炎は7.9%、乾癬は5.2%と報告されています。皮膚疾患は身体的な不快感だけでなく、社会的な偏見や生活の質の低下、ボディイメージの歪みやストレスなど、患者に重大な負担をもたらします。

今回ここで紹介する研究は、皮膚疾患患者における不安、うつ病、ストレスの世界的な有病率を調べたものです。PubMed、Scopus、Science Direct、Embase、Web of Science、Google Scholarのデータベースを検索し、最終的に113の研究が分析の対象となりました。

その結果、皮膚疾患患者全体のストレス、うつ病、不安の有病率は、それぞれ39.4%、27.2%、28.8%であることが分かりました。疾患別に見ると、ストレス患者の割合が最も多かったのはニキビ75.7%で、うつ病白斑38.3%不安ニキビ36.5%でした。これらの数字は、皮膚疾患患者の精神的な負担の大きさを如実に示しています。

【アトピー性皮膚炎、乾癬、ニキビ、白斑患者は精神疾患のハイリスク群】

疾患別のサブグループ解析では、アトピー性皮膚炎患者の20.8%がうつ病、20%が不安を抱えていました。乾癬患者の場合、うつ病は27.2%、不安は23.5%でした。一方、ニキビ患者ではうつ病が22.7%、不安が36.5%と、4疾患の中で不安の割合が最も高くなっています。そして白斑患者は、うつ病が38.3%、不安が34.7%でした。

慢性の皮膚疾患を抱える多くの患者が、一生のうちに何らかのうつ病を経験します。その原因として、皮膚疾患の治療そのものが考えられます。また、皮膚は目に見える臓器であるため、皮膚の状態の変化は容姿に直結します。それが生活の質の低下や自尊心の低下を招き、患者のストレスを高めるのです。

【患者の精神面のケアにも目を向けるべき】

本研究の知見は、精神疾患の診断、治療、予防を必要とする特定の集団を特定するのに役立ちます。皮膚科の臨床現場では、皮膚疾患だけでなく、患者の精神面の健康にも十分な注意を払う必要があるでしょう。

私たち皮膚科医は、患者の精神状態を注意深く観察し、必要に応じて質問紙などを用いたスクリーニングを行うことが望まれます。もしも患者に精神的な問題の兆候が見られたら、速やかに精神科医や心理カウンセラーなどの専門家に紹介・連携し、適切な治療やサポートが受けられるようにすべきです。

また、医療政策の決定者は、皮膚疾患患者の包括的なケア戦略の中に、心理的な治療とサポートの方策を組み込む必要があります。皮膚疾患は見た目の問題というだけでなく、こころの健康とも密接に関係しているのです。私たち皮膚科医は、身体と心の両面から患者の健康をサポートしていく使命があると言えるでしょう。

参考文献:

Salari, N., Heidarian, P., Hosseinian-Far, A., Babajani, F., & Mohammadi, M. (2024). Global Prevalence of Anxiety, Depression, and Stress Among Patients with Skin Diseases: A Systematic Review and Meta-analysis. Journal of Prevention. https://doi.org/10.1007/s10935-024-00784-0

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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