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ニキビと食事の関係 - エビデンスから見る最新の知見と注意点

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:アフロ)

ニキビは思春期の人だけでなく、成人になっても悩まされる人が多い皮膚疾患です。その原因は複雑で、ホルモンバランスの乱れや、ストレス、遺伝的要因など様々ですが、近年、食生活もニキビの発症や悪化に関与していることが明らかになってきました。

しかし、ニキビと食事の関係性については、まだ研究の途上であり、確実なエビデンスが得られているわけではありません。そのため、食事療法はあくまで補助的な位置づけであり、基本的には医師の指導のもと、標準的な治療を受けることが大切です。

その上で、現時点でのエビデンスを踏まえ、ニキビを予防・改善するための食事法について解説します。

【ニキビを悪化させる可能性のある食品】

ニキビを悪化させる可能性のある食品として、乳製品、チョコレート、飽和脂肪酸が挙げられます。

乳製品に含まれるホルモン様物質や、チョコレートに含まれる炎症を引き起こす成分が、ニキビの原因となる可能性が指摘されています。飽和脂肪酸は皮脂の分泌を促進し、毛穴づまりを引き起こすことが知られています。

ただし、これらの食品とニキビの関係性については、まだ議論の余地があります。個人差も大きいため、一概に避けるべきとは言えません。自分の肌の状態を観察しながら、適量を心がけることが賢明でしょう。

【ニキビと関連する生活習慣】

食事以外の生活習慣も、ニキビに大きな影響を与えます。

不規則な生活リズムは、ホルモンバランスを乱してニキビを悪化させます。特に成長ホルモンの分泌が盛んな思春期は、十分な睡眠が大切です。

ストレスもニキビの大敵です。ストレスにより分泌されるホルモンの影響で、皮脂の分泌が増えたり、肌のターンオーバーが乱れたりします。上手にストレスを発散する方法を見つけましょう。

喫煙も肌に悪影響を及ぼします。喫煙により、肌の血流が悪くなり、ニキビができやすくなると言われています。禁煙は美肌への第一歩です。

洗顔やスキンケアも肌に直接影響するため、肌に合ったケア方法を選ぶことが大切です。皮膚科専門医に相談しながら、自分に合ったスキンケア方法を見つけていきましょう。

【ニキビ改善に役立つ可能性のある食品】

一方で、ニキビ改善に役立つ可能性のある食品もあります。

野菜や果物に含まれるビタミンやミネラルは、肌の健康維持に欠かせない栄養素です。ビタミンCは肌のコラーゲン生成を助け、ビタミンEは抗酸化作用により肌を守ります。ビタミンB群は肌の新陳代謝を促進する働きがあります。

また、魚に含まれるオメガ3脂肪酸には、炎症を抑える効果が期待できます。肉や卵、大豆製品などに含まれる良質なタンパク質も、肌の修復を助ける重要な栄養素です。

バランスの取れた食事を心がけ、偏った栄養にならないよう気をつけましょう。また、体質に合わせて、ニキビに良い食品を選ぶことも大切です。かかりつけの皮膚科医や管理栄養士に相談するのも良いでしょう。

最後に重要なのは、ニキビの治療には個人差があるということです。食事は万能ではありません。まずは皮膚科を受診し、自分に合った治療法を見つけることが大切です。その上で、食生活を見直すことで、より効果的にニキビを改善できるでしょう。

ニキビは一朝一夕には治りません。長い目で見て、生活習慣を整えていくことが重要です。皮膚科専門医と相談しながら、自分に合ったニキビケアを続けていきましょう。

〜参考文献〜

- Aalemi AK, Anwar I, Chen H. "Dairy consumption and acne: A case control study in Kabul, Afghanistan." Clin Cosmet Investig Dermatol. 2019;12:481-487.

- Juhl CR, Bergholdt HKM, Miller IM, Jemec GBE, Kanters JK, Ellervik C. "Dairy Intake and Acne Vulgaris: A Systematic Review and Meta-Analysis of 78,529 Children, Adolescents, and Young Adults." Nutrients. 2018;10(8):1049.

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- Nutrients. 2024 May 14;16(10):1476. doi: 10.3390/nu16101476.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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