慢性の痒みに悩む結節性痒疹患者に朗報!光線療法の有効性が明らかに
結節性痒疹は、激しい痒みを伴う硬結や結節が体の各所にできる慢性疾患です。痒みのために皮膚を掻きむしってしまい、皮疹が悪化するという悪循環に陥ります。原因ははっきりしておらず、治療に難渋することが少なくありません。
しかし最近、結節性痒疹に対する新たな治療法として、「狭帯域UVB光線療法」の有効性が注目されています。この療法は、特定の波長(311-315nm)の紫外線を患部に照射するもので、痒みの緩和と皮疹の改善に効果があるとされています。
【狭帯域UVB光線療法とは?皮膚科医が分かりやすく解説】
狭帯域UVB光線療法は、「ナローバンドUVB」とも呼ばれ、アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬などの治療に使われてきました。「バンド」とは「帯域」のことで、「ナローバンド」は「狭い帯域」を意味します。つまり、広い波長帯の紫外線ではなく、311-315nmのごく狭い波長域のUVBを選択的に照射するのです。
これにより、炎症を引き起こす免疫細胞の活性化を抑え、痒みの伝達に関わる神経伝達物質の放出を減らすことができます。副作用が少なく、全身に多発する皮疹の治療に適しているのも利点です。
【結節性痒疹に対する狭帯域UVB光線療法の有効性と安全性】
トルコの研究グループが行った今回の研究では、結節性痒疹患者30人に狭帯域UVB光線療法を実施し、その効果を評価しました。その結果、24人(80%)で皮疹がほぼ完全に消失し、6人(20%)でも部分的な改善が見られたとのことです。
光線療法を行った部位による効果の差も検討されました。体幹部や広範囲に皮疹がある患者の方が、手足などの末梢部のみの患者よりも、有意に高い改善率を示したそうです。
副作用については、4人(13.3%)に一時的な発赤や痒みの増強がありましたが、重篤なものはなく、全員が治療を完遂できたと報告されています。
日本でもすでに、尋常性乾癬やアトピー性皮膚炎に対する保険適用がある狭帯域UVB光線療法ですが、今のところ結節性痒疹への適用はありません。ただ、今回の研究結果は、本治療が結節性痒疹患者の新たな選択肢になり得ることを示唆しています。
【狭帯域UVB光線療法の実際と今後の課題】
実際の治療の流れとしては、週2~3回の頻度で病院に通院し、1回10秒~数分程度、全身の皮疹に紫外線を照射します。症状に応じて照射時間と回数を調整しながら、2~3ヶ月継続するのが一般的です。
ただし、光線過敏症など特定の皮膚疾患がある方や、光毒性・光アレルギー性の副作用のある内服薬を使用中の方は、適応を慎重に判断する必要があります。また、長期的な発癌リスクについても不明な点が残されており、さらなる検討が求められます。
日本人を対象とした臨床研究や、他の既存治療との比較試験などを重ねることで、結節性痒疹に対する狭帯域UVB光線療法の最適な適応基準や治療プロトコールが確立されることを期待したいと思います。
慢性の痒みに苦しむ結節性痒疹患者さんにとって、光線療法は新たな希望の光となるかもしれません。エビデンスの蓄積に尽力しつつ、一人一人に合わせたオーダーメイドの治療を提供していきたいと考えています。
参考文献:
Agaoglu E, et al. Efficacy and safety of narrowband ultraviolet B phototherapy for prurigo nodularis: a tertiary center experience. Anais Brasileiros de Dermatologia. (In Press) PDF