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カルト宗教のマインドコントロールから家族を守る方法、救出法:よくある大失敗の防ぎ方

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
イラストはイメージ:あなたも家族も狙われている(提供:イメージマート)

■信教の自由と破壊的カルト宗教による被害

私たちには信教の自由があります。新興宗教をはじめ、どんな宗教を信じるのも自由です。しかし、信者をだまし、悪質なマインドコントロールを使う「破壊的カルト宗教」は、許されません。そんな危険なワナから、家族を守りましょう。

まだ少しだけ話を聞いただけなら、離れるように言えば良いでしょうが、深く関わるようになってしまっていれば、引き離すのは簡単ではありません。

マスコミに取り上げられる事例は、氷山の一角です。カルト宗教のワナは、いつも私たちを狙っています。

■脱会を願う家族の良くある大失敗

子供や妻、あなたの愛する家族が、何かのサークルに入りました。あるいは、占いや、聖書や仏教の勉強をすると言っています。まあ、別に良いだろうと思っていると、次第におかしな言動が見られるようになります。

ここであなたは気づきます。怪しい団体ではないかと。あなたはすぐにネットで調べるでしょう。すると、良くない情報が次々と出てきます。

そこであなたは、慌てて家族に話すことになります。カンカンに怒っていることもあります。

「お前が信じている宗教は、こんなインチキ宗教だぞ!」「教祖は、ひどいペテン師なんだぞ!」

鬼の首を取ったように、勝ち誇ったように、その組織の悪口を言い立てます。

しかし、これはとてもまずい方法です。

このころには、あなたの家族はカルト宗教にどっぷりと浸かっています。家族が反対することも事前に教えられています。指導者が言った通りにサタンが家族を通して攻撃してきたと考えれば、宗教への信頼が増してしまいます。

家族がどのように攻撃してくれるか、どう反論したり、攻撃を交わしたりするか、すでに学んでいることもあります。

こんなに冷静になれなくても、すでに大好きになっている組織や教祖の悪口を言われたら、腹が立ったり悲しくなったりします。そんなことを言う人のことが嫌いになります。

激しい口ゲンカになれば、人間関係が悪化します。この大失敗のおかげで脱会がさらに難しくなり、後になってとても後悔している家族が大勢います。

■問題解決への準備

○人間関係を良くする。

家族全体の人間関係をよくしましょう。家庭内の他の問題も含めて、解決を目指しましょう。夫婦は円満か。暴力はないか。大きな心配事はないか。良い家族関係が必要です。

それまでに、カルトのことでケンカなどをしたことがあれば、こちらから謝り、人間関係を修復しましょう。

「この間は、父さんも短気を起こして、すまなかったな。お前のことが大好きで、心配だったんだよ」

この言葉が嘘では困りますが、多分本心でしょう。素直に、謝りましょう。

○情報を集め学習する

あなたは、カルト宗教など馬鹿げていると思うもしれませんが、相手は巨大で強力です。日本だけでも何十万人が信じ、何十億のお金が動き、何十年も活動を続けてきました。

大切なのは、情報を集め、学ぶことです。

○忍耐強くなる

「いい加減にしろ!」と怒りたくなるようなことが、度々あると思います。けれども家族の救出は大仕事です。時間をかける覚悟をしましょう。自分の心を落ち着かせましょう。

○家族の人間関係が悪いままでは、カルト問題は解決しない

家族や親友との人間関係が悪くなれば、その人はますます破壊的カルトの中へ入っていきます。

人間関係の良くない人と、有意義な話はできません。また、効果的な話し合いのためには、下準備が大切です。言いたいことは、山ほどあるでしょうが、一方的にお説教をしたり、叱ったりしても、問題は解決しません。

■破壊的カルトからの救出方法(マインドコントロールの解き方)

破壊的カルトについて学ぶほどに、その組織のウソ、偽り、教義の矛盾、社会とのトラブル、信者が受ける害について、次々と分かってきます。

しかし、そのようにして知った情報をただ相手に伝えても、効果はありません。その人自身が、教団組織の問題性について気づかなくては、破壊的カルトから抜け出すことはありません。

○本人がカルトの間違いに気づくために

・相手の話を良く聞く

その宗教団体のことを聞きたいと言えば、相手は喜んで話してくれるでしょう(ただし、ミイラ取りがミイラにならないように自zんのじゅんびをしっかりと)。

話を聞けば、関係は穏やかになり、会話がしやすくなります。

・教団組織への疑問が生まれるような、「適切な質問」をする

答えを押しつけるのではなく、本人の心に、カルト教団組織への疑問が生まれるようにします。言われるままに信じていることに対して、自分の頭で考えるようにしむけるのです。

ただし、適切な質問ができるためには、かなりの下準備と学習が必要です(私が出会ったカルト宗教の信者たち:マインドコントロール被害の実際:Yahoo! JAPANニュース有料)。

・自分の感情をコントロールする

怒りやいらつきを押さえ、その人に対する冷静さ、忍耐強さ、愛情を表現しましょう。 

・カルトが作った親子間や夫婦間のバリアを破る

家族や親友が反対することは、教団組織からすでに言われています。家族を、真理から引き離すサタン呼ばわりする教団組織もあります。単に反対したり、怒ったり、冷たくしたりすると、教団組織の正しさを証明するようなことになってしまいます。

本人に対し、愛と優しさを示すことが、教団組織の作ったバリアを破ることになるのです。

・カルトやマインドコントロールについての理解を深める

自分の宗教組織への批判は聞かなくても、一般的なカルトやマインドコントロールの話なら聞くこともあります。聞くことによって、自分が所属する教団組織にも似ている点があると気づくかもしれません。

実は身近な「洗脳」騒動 家族間やブラック企業でも 大事な人を守るポイントは

「すべての宗教は悪」といった極端で誤った考えでは、相手を説得できません。普通の宗教団体とは違うことに気づいてもらわなければなりません。

カルト宗教の見分け方:良い宗教と悪い宗教の違いは?

・カルトへの疑問が表現できるような環境を作る

心の中に疑問が生まれても、表面には表さないように訓練されています。また、プライドや不安が邪魔をすることもある。本人にとって、非難されたり、バカにされたりしない、安心できる環境が必要です。

・非カルトの世界へ目を向けさせる

カルト以前の人間関係、夢や目標を思い出させます。以前一緒に行った楽しい家族旅行のことなど、楽しく思い出を語るのも良いでしょう。

・選択させる

カルトの教団組織にとどまるか、脱会するか、様々な情報を知った上で、選択できるようにします。強制させられると思えば、その話し合いに近づきませんし、無理強いしても、すぐに戻ってしまいます。

・カルト教団組織にとどまることを選択した場合

それでも温かな人間関係を保つように努力しましょう。次のチャンスを待ちましょう。

・脱会を選択した場合

長くカルトの世界にいた人ほど、社会復帰は困難です。精神的な不安、普通の生活上の経験不足、学歴や職歴の問題、経済上の問題、人間関係の問題など、多くの問題が起きることがあります。

本人の社会復帰を援助し、支えましょう。支えることを本人に伝えましょう。脱会しても大丈夫なのだと、わかってもらいましょう。

あなたの家族は、道を誤りましたが、もう一度きっと幸せになれるはずです。

参考『カルト教団からわが子を守る法 』 (反カルト宗教緊急翻訳出版)

J.C.ロス、M.D.ランゴーニ 著  多賀幹子 訳 朝日新聞社

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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