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日銀の金利引上げで銀行の預金と住宅ローン金利はどうなった?

高橋成壽お金の先生/C FP/証券アナリスト/IFA
日銀植田総裁(写真:ロイター/アフロ)

日本銀行が金利を引き上げると報じられたのは、記憶に新しい2024年7月31日でした。この金利引き上げにより、円とドルの政策金利の差が縮小し、為替相場は急激に円高に振れました。また、円安で割安と見られていた日本株式も大幅に下落し、一時は株式市場の崩壊が懸念されました。本稿執筆時点では株式市場は回復しているように見えますが、金融市場には変化が始まっています。今回は、私たちの生活に身近な預金金利、個人向け国債、住宅ローン金利について見ていきます。

メガバンクの普通預金金利は三井住友銀行がリード

日本に住むほとんどの人が持っているであろう銀行口座。主要なメガバンクおよびゆうちょ銀行の普通預金金利を調べてみました。

•三井住友銀行 0.100%

•三菱UFJ銀行 0.0200%

•みずほ銀行 0.020%

•りそな銀行 0.02%

•ゆうちょ銀行 0.020%

※金利は2024年8月18日時点のものです。

スマホ口座「OLIVE」で若者の口座獲得に成功しているとされる三井住友銀行が、他行をリードする0.1%の金利を提供しています。この金利の高さが、OLIVE口座の開設を促す要因になっている可能性があります。今後、他行が三井住友銀行に追随するかどうかに注目です。

個人向け国債は金利上昇傾向

普通預金よりも金利が高く、かつ元本割れのリスクがないため安全性の高い個人向け国債は、以前と比べて徐々に金利が上昇しています。

•変動10年:適用金利 0.5~0.6%

変動金利であるため、今後の金利は令和5年~7年までの間に決まっていますが、銀行の普通預金金利よりも明らかに高い水準です。

住宅ローンの変動金利はりそなが優勢

家計に大きな影響を与える住宅ローンの変動金利の適用金利は以下の通りです。

•りそな銀行 0.340%~

•三菱UFJ銀行 0.345%~

•みずほ銀行 0.375%~

•三井住友銀行 0.475%~

普通預金で有利だった三井住友銀行が、住宅ローンでは相対的に高い金利を提示しており、りそな銀行が低金利で提供しています。銀行ごとの戦略として、貸出を優先するか、普通預金で顧客を増やすか、分かれているようです。

興味深い点は、住宅ローンの変動金利よりも個人向け国債の金利の方が高いことです。単純な計算では、頭金を入れずに全額を住宅ローンで借り、頭金相当額を個人向け国債で運用すれば、金利差による利ざやを得ることができる可能性があります。

ただし、実際の住宅ローンの金利計算は単純に「残高×金利÷12か月」ではないため、運用差益を得られるかどうかは、住宅ローンの適用金利、返済期間、借入残高に左右されます。

少なくとも、住宅ローンの返済額が上昇することで生活に影響がある一方で、預金や個人向け国債の金利上昇により、預金者には一定のメリットがあると考えられます。

現在は、物価上昇が2~3.5%程度見込まれているため、現状の普通預金や個人向け国債の金利水準では、物価上昇を完全に補うことは難しいでしょう。今のところ、これらの金利上昇は焼け石に水といった状況です。

9月にはアメリカが金利を引き下げる可能性もあり、その場合、日米の金利差がさらに縮小し、8月上旬の円高や株安のような現象が再び発生するかもしれません。

とはいえ、今回は日銀が当面はさらなる金利引き上げを行わないと発表しており、この発言が株式市場の回復に寄与しました。この点は非常に重要です。これまで日本の金利はゼロが基本で、引き上げ観測があっても実際には引き上げられないことが常でした。しかし、マイナス金利の解消とゼロ金利からの金利引き上げという二段階の措置が実施されました。

これにより、日本銀行が金利をコントロールする余地があることが、世界中で認識されるようになりました。従来は頑なに金利を上げなかった日本が、今後は諸外国と同様に、金利を使って物価の安定などを調整できるようになったのです。これが株式市場にも金利を通じて影響を与えることを意味します。

一度金利上昇という「アクセル」を踏むことが許された日銀は、今後、適切なタイミングで再び金利を引き上げる機会をうかがうでしょう。その際には、為替や日本株式がどのように変動し、私たちの生活にどのような影響が出るのか、注目すべき展開になりそうです。

お金の先生/C FP/証券アナリスト/IFA

日本人が苦手なお金を裏も表も解説します。お金の情報は「誰がどんな立場から発信したのか見極める」ことが大切。寿FPコンサルティング、ライフデザインセンター代表。無料のFP相談・IFA相談マッチングサービスとして「ライフプランの窓口」「住もうよ!マイホーム」「アセマネさん」を運営。1978年生神奈川県藤沢市出身。慶応大学総合政策学部卒業後、金融関係のキャリアを経て有料FP相談を開始。東海大学では非常勤講師として実務家教員の立場から金融リテラシー向上の授業を担当。連載:会社四季報オンライン。著書:ダンナの遺産を子どもに相続させないで。メディア出演、メディア掲載多数。

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