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「男子刑務所で服を脱がされ…」ロシアに拘留された米女子プロバスケ選手の獄中回顧録

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
22年10月、ロシアの法廷で審理中のグライナー選手の映像。(写真:ロイター/アフロ)

違法薬物所持でロシアに拘束後、釈放された女子プロバスケ選手、ブリトニー・グライナー【その後】

2022年にロシアで拘束され、10ヵ月後に釈放された米WNBA(女子プロバスケットボールリーグ)所属のブリトニー・グライナー選手。釈放から約1年半となる今、10ヵ月間にわたるロシアの刑務所での体験を綴った回想録が14日、本になって発売される。

本の題名は『Coming Home』(家に戻る、帰国するという意味)。作家ミッシェル・バーフォード氏との共著だ。

グライナー選手は2022年2月、違法薬物所持でモスクワの空港でロシア当局に逮捕され、8月に禁錮9年の判決が下された。12月に米露の囚人交換という形で釈放され、その後アメリカに無事帰国した。

本の発売を前に、ESPNのインタビューを受けたグライナー選手。それによると、グライナー選手が入れられていたのは男子刑務所だそうだ。(注:女子バスケリーグに所属するグライナー選手は2013年に同性愛者であることを公表し、現在は同性婚をしている。また同性婚したシェレルさんを「妻」と呼んでいる)

インタビューによると、男子用の刑務所に連れて行かれた際、グライナー選手が中にいる男性受刑者を見て「これは違う」と首を振ると、ほかの刑務官が同様に首を振り「ドアを閉めろ」と言って中に入れられたという。

収監中はいじめや嫌がらせ、からかいのような行為が度々あったと語り、インタビュアーにこのように告白した。

「彼らは私の服を脱がせ、男たちを集めた。私が服を着ようとしたら制止し『体の向きを変えろ』と言った。そしてポラロイドで写真を撮った」

グライナー選手は見世物のように扱われたようで、グライナー選手の服を脱がせた刑務官から「じろじろ見られた」「尊厳を奪われた」とも語っている。

この時の心の持ちようについて、「私はプロスポーツをしていてよかったと思った」と回顧した。

「ロッカールームでは人前で裸になることが普通だったから」。それまでのちょっとした経験が刑務所内で心の支えになったという。「大丈夫でない状況であったとしても、心理的に大丈夫だと感じられるようになった」。

昨年5月にニューヨークでのイベント「METガラ」で元気そうな姿を見せたブリトニー・グライナー選手。妻のシェレル・グライナーさんと。2人の間にはもうすぐ子どもが誕生する。
昨年5月にニューヨークでのイベント「METガラ」で元気そうな姿を見せたブリトニー・グライナー選手。妻のシェレル・グライナーさんと。2人の間にはもうすぐ子どもが誕生する。写真:REX/アフロ

収監中は労働に従事させられたと語ったグライナー選手。「これはまるで奴隷だ」と、本気で自殺を考えたと告白。「生きていることを感じなかった。何の感情もなくなっていた」。

釈放され帰国した後も昨年一年間は不眠症に悩まされたという。経験談を本に書くのは容易ではなかったが、心理カウンセラーに助けてもらいながら「一番大変な時期をやり遂げた。そして今、世界は自分の意見やあらゆることを見たり聞いたりできるようになった」とし、上梓へ自らを奮い立たせたという。

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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