米ボーイング内部告発者2人の突然死の怪 今月も福岡など世界中で相次ぐ事故やトラブル
米ボーイング製の飛行機の事故やトラブルが本国アメリカのみならず世界中で多発している。原因は究明中だが、ここ数日だけでも確認できる範囲内で事故やトラブルが立て続けに起こった。
今年に入って発生した米国内の主な事故やトラブル
1月、米アラスカ航空運航のボーイング737MAX9
飛行中、側壁のドアプラグが機体から剥がれ落ち、機体に穴ができる(詳細は下記)
3月、米ユナイテッド航空運航のボーイング737-800
外板パネル脱落が確認される
4月、米サウスウエスト航空運航のボーイング737-800
離陸中、エンジンカバーが外れ翼のフラップに直撃
4月、米デルタ航空運航のボーイング767
離陸直後に非常脱出用スライドが落下
今月に入ってもボーイング関連のニュースが世界中で報じられている。ここ数日で発生した事故、トラブル、不具合など。
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5月8日、トルコのイスタンブールの空港でフェデックス貨物機ボーイング767
着陸後に前輪が下りず、滑走路に胴体着陸。炎が上がったが操縦士2人は無事。
5月9日、トルコのガジパシャの空港でコレンドン・エアラインズ運航のボーイング737-800
着陸の際に機体のタイヤが破裂。乗員・乗客190人が避難。
5月9日、セネガルの空港でトランスエア運航のボーイング737-300
離陸の際に滑走路から外れ機体が地面をこすり火災が発生。パイロット含む10人負傷。油圧系統に不備があったという報道もある。
5月10日、福岡空港でユナイテッド航空運航のボーイング737-800
離陸後に機材不具合のため福岡空港に引き返す。
数年前には墜落死亡事故も
2018年と2019年には5ヵ月の間にライオンエアとエチオピア航空が運航するボーイング737MAX8が相次いで墜落し、合わせて346人が犠牲となった。
エチオピア航空墜落で47社中33社が運航停止。日本 - 韓国間も飛行のボーイング737MAX8
一夜明け「アメリカも運航停止に」。トランプ大統領も心配する米最新鋭機
2020年運航が再承認
2度墜落の米ボーイング737MAXの運航がついに承認 株価上昇はワクチン開発も関連か
内部告発者2人 2ヵ月間で相次ぐ突然死
そんな中、アメリカでは今年3月9日、ボーイング社の内部告発者、ジョン・バーネット氏(享年62歳)が米チャールストンで死亡しているのが見つかった。遺体は、法廷での証言のため滞在していたホテルの駐車場のトラック内で見つかった。死因は銃による自殺と見られている。
バーネット氏はボーイングの元従業員で、在職中は品質コントロールマネジャーとして32年勤務。2017年に健康上の理由で退職した。
遺体が見つかる数日前、同社に対する内部告発訴訟で証言し、同社の生産基準や安全性への懸念を表明していた。2019年にもBBCに対して、厳しい製造スケジュールのプレッシャー下で同社の従業員が機体の製造ラインで意図的に規格外の部品を取り付け、安全性が損なわれているなどという趣旨の発言をし、同社はこれを否定していた。
バーネット氏の死からわずか2ヵ月後の先月末には、2人目の内部告発者の死亡が再び伝えられた。
亡くなったのは、ボーイングのサプライヤーであるスピリット・エアロシステムズの元品質監査員で、737MAXの製造上の欠陥の指摘をスピリット首脳陣が無視したと告発していたジョシュア・ディーン氏(享年45歳)。ディーン氏は2023年4月に同社を解雇され、労働省に苦情を申し立てていた。
死亡したのは4月30日で、死因はMRSA感染症による突然死というやや不可解なもの。それまでの健康状態は良好だったというが、2週間前に突然呼吸困難になったという。
2人の死亡に関しては警察が捜査を続けているが、現時点で2件の関連性はわかっていない。ボーイング社の内部告発者はほか10人おり、2人が短期間で立て続けに亡くなったことで「内部告発者の命が危険にさらされている」などと陰謀論も囁かれている。
(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止