ジャニーズ事務所新社名の商標登録について
ジャニーズ事務所の新社名が「SMILE-UP.」に決まったとのことです(参照記事)。「イマイチ新鮮味に欠ける」「略称”スマップ”ですよね」等の意見も聞かれますが、私としては商標登録をどうするのかが商売柄気になるところです。
旧社名の「ジャニーズ」について言うと、登録3016145号として1994年12月22日に登録されています(思ったより最近でした)。指定役務は41類の「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営」等です。その後、2020年5月11日に登録6250663号として35類の小売関連を指定役務にしても登録されています。
一般的に言えば、社名は必ずしも商標登録しなければならないわけではありませんが、商標的に(商品やサービスのブランドとして)使用されるのであれば商標登録すべきです。「ジャニーズ」の場合は、たとえば、「ジャニーズショップ」のように商標的に使われることはあったので、商標登録したのは適切だと思います。
「SMILE-UP.」については、被害者救済のための存続会社であり、ブランドとして使用されることはおそらくないことから、商標登録する必然性は薄いと思います。なお、仮に登録するとしても35類(小売役務)と41類(興行)であれば、登録は可能と思います。プリマハムの商品名(商標登録出願中)とかぶっているという指摘がありますが、どちらにしろ肉類は商品として非類似なので商標登録的には問題ありません。また、スマイルアップという言葉自体(あまり英語では聞かない表現です)は、2018年にジャニーズが行った慈善活動”Smile Up!Project”(登録6188879号として商標登録されています)に由来すると思われますので、名前をパクったということにもならないでしょう。
商標登録するとすれば、今後、ファンクラブの公募で決まる新会社(タレントマネジメント会社)の名称の方です。こちらは「ジャニーズ」同様に少なくとも35類と41類で商標登録しておくのが適切だと思います。
ここで注意すべきは商標登録出願のタイミングです。発表の後に新会社名を商標登録出願すると、商標ゴロ的な人々に先に便乗出願されてしまう可能性があります。なお、発表と同日の発表前に出願しても、先願の判断は時刻ではなく日付で行われますので、発表を聞いてその日のうちに便乗出願する人を排除できません。逆に、あまりに早く出願してしまうと、特許庁が公表する商標公報によってネタバレしてしまうリスクが生じますので、前日か数日前に出願しておくのがベストプラクティスです。
仮にですが、ジャニーズ側が新マネジメント会社名の発表前に商標登録出願しなかったとします(社内的に相当な混乱があると思いますのでその可能性はゼロではありません)。そして、商標ゴロの皆さんが便乗出願するとどうなるでしょうか?ほぼ確実に「ジャニーズ新会社との混同を招く」「不正目的で出願したものである」といった理由により拒絶になります。先願主義とは言っても、先に出した人が必ず勝つわけではなく、特許庁が不正目的を認定すれば、先に出願していても拒絶になります(出願料金が無駄になるだけです)。ネット系のスラングだったりすると特許庁審査官が見落として登録してしまう可能性もありますが、ジャニーズ新会社名についてはマスメディアでめちゃくちゃ報道されるでしょうからそのような可能性はないでしょう。