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【統一地方選】あなたの自治体は「計画」を作ってますか?

大西連認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 理事長

【統一地方選】あなたの自治体は「計画」を作ってますか?

遅きに失した感があるのですが、現在統一地方選がおこなわれています。僕が住んでいる自治体でも、駅頭で立候補予定者が演説していたり、ポストに区政レポート的なリーフレットが投函されていたり。僕の自治体では公示日前なので、何だか騒がしくて眉をひそめたくなる気持ちに……とはいえ、月並みですが地方議会ってすごく重要なんです。

どうして重要なのかとかはポリタスなどを参照していただくとして、ここでは僕が関わっている生活困窮者支援の文脈から地方議会の重要性を提案したいと思います。

4月から新しい支援制度がスタート

4月1日から全国で一斉に生活困窮者自立支援制度という新しい制度がスタートしました。この制度は生活保護の手前に新たなセーフティネットを作ろう、というもので、各自治体に相談窓口が開設され、生活困窮者を包括的に支援する拠点としての機能が期待されています。

この新しい制度が各自治体でどのように準備され、運営され、施策が実施されるのかを調べるべく、僕が所属する<もやい>では、制度スタートの4月1日に東京23区の各区にアンケートをおこないました。

本日(4月1日)より「生活困窮者自立支援制度」がスタート!(大西連) - Y!ニュース

民間委託で運営するところ、派遣会社に就労支援を委託するところ、自治体ごとにやるかやらないか決められる任意の事業の実施状況など、それぞれの区に特色がでました。

この生活困窮者自立支援制度は、必須事業と任意事業とに分かれており、例えば、子どもの学習支援などの事業は任意事業とされていて、おこなうかどうかは制度上、自治体ごとに判断していいとなっています。

23区のなかで子どもの学習支援をおこなう自治体は72%。では、残りの28%の自治体では、なぜおこなわないという選択をしたのでしょうか。また、どういう議論を経て、その選択にいたったのでしょうか。

住民投票をやったとは聞いていません。区長が決めたのか、議会で議論をしたのか。はたまた実務担当者の課長や係長クラスで議論して決定されたのか。そして、その過程は市民にどの程度可視化されていたのか……。

7割が計画や方針を「たてていない」と回答

上記のアンケートのなかで、「区として生活困窮者の支援に関する方針、実施計画をたてているかどうか」という質問に対しては、7割が「たてていない」という回答でした。

ビジネスパーソンには釈迦に説法ですが、何事もPDCAサイクルが必要です。対象者を定義し、ニーズを調査し、どのような施策、体制でおこなうか計画(P)を作る。そして、施策を実施(D)し実施状況などをこまめにチェック(C)して政策評価をおこない、必要なら改善(A)をおこなっていく。

そして、計画作りに外部の有識者を招いて委員会をおこなうこともあれば、市民の意見を聞くためにパブコメやタウンミーティングを開くこともある。また、議員が議会で質問して予算の使われ方をチェックすることも。

このように、税金を使って施策を整える以上、公平で公正な意思決定、運営になっているかを明らかにするためにも、計画作りはその前提として必須なはずです。

2014年3月27日の厚労省通知「市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画の策定について(平成26年3月27日社援発0327第13号)」において、

市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画に生活困窮者自立支援方策を盛り込んでいただくようご配慮いただくとともに、都道府県においては、市町村地域福祉計画の策定について管内市町村への周知及び支援と、市町村地域福祉計画が未策定の市町村に対しては早急に計画策定が行われるよう支援願いたい。

と明記されており、全国の各自治体には別添として

・生活困窮者の把握(調査)

・既存の地域福祉施策との連携

・生活困窮者への支援の実施とその成果の把握

などについて、具体的な方策に踏み込んだ計画作りを求めています。

しかし、実際には7割の自治体では計画は作られていません。なぜでしょうか。

計画作りは自治体の仕事

この通知の末尾には、なお書きとして、

なお、この通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的助言に当たるものである。

と書かれています。そう、地方分権なので、この通知はあくまで厚労省からのアドバイスでしかないのです。

厚労省通知は1年前に出ているにも関わらず、多くの自治体では計画作りがおこなわれていない。そして、大半の自治体では市民の意見を聞くこともなく新しい支援制度がスタートし、自治体ごとに意思決定のプロセスが不明なまま事業が実施されています。う~ん。これってどうなんでしょうか。

地方分権の時代に地方議会の役割は重要度を増す

生活困窮者自立支援制度の実施状況の自治体差からも見てとれるように、これからの地方分権の時代に、地方議会の役割はますます大きくなります。そして、地味に僕たちの生活に影響する施策についても、なかには気づいたら自分の自治体ではやってない、などもあり得るのです。

と、ここまで偉そうに書きましたが、僕も正直、自分の住んでいる自治体の議員の名前を一人でもいいから言え、と言われると困ってしまいます……。

しかし、これを機会に地方議会にも関心を持っていきたいところです。みなさまもぜひ、投票行動を!

認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 理事長

1987年東京生まれ。認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長。新宿での炊き出し・夜回りなどのホームレス支援活動から始まり、主に生活困窮された方への相談支援に携わっています。また、生活保護や社会保障削減などの問題について、現場からの声を発信したり、政策提言しています。主著に『すぐそばにある貧困」』(2015年ポプラ社)。

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