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シリーズMVPのガルシアが「塗り替えた記録」と「塗り替えられなかった記録」。15打点は新記録

宇根夏樹ベースボール・ライター
アドリス・ガルシア(テキサス・レンジャーズ)Oct 23, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 誰が選んでも、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズ(LCS)のMVPは、アドリス・ガルシア(テキサス・レンジャーズ)が受賞していたに違いない。7試合に出場し、打率.357と出塁率.400、5本塁打と15打点、OPS1.293。第4戦から第7戦まで4試合続けてホームランを打ち、第2戦以降は6試合とも打点を挙げた。なかでも、第5戦以降の3試合は、それぞれ、3打点、4打点、5打点だ。

 これまで、1度のLCSで挙げた打点は、2011年にネルソン・クルーズが記録した13打点が最も多かった。12年前のクルーズもレンジャーズでプレーしていたが、他チームの選手を含めても、歴代トップ2はガルシアとクルーズだ。

 一方、ガルシアの5本塁打は、クルーズに1本及ばなかった。歴代2位タイに位置する。ガルシアが並んだのは、2020年のコリー・シーガー(当時ロサンゼルス・ドジャース/現レンジャーズ)と今年のカイル・シュワーバー(フィラデルフィア・フィリーズ)だ。フィリーズは、10月24日にアリゾナ・ダイヤモンドバックスとLCSの第7戦を行う。そこで、シュワーバーが2本のホームランを打つと、クルーズを抜いてトップに立つ。

 ちなみに、1度のLCSで30打席以上に立ち――ガルシアは30打席ちょうど――打率が最も高かったのは、2004年のアルバート・プーホルス、2007年のケビン・ユーキリス、2012年のマルコ・スクータロだ。3人とも、打率.500を記録した。2007年のユーキリスは、出塁率.576も1位。2004年のプーホルスは、OPS1.563もトップだが、今年のシュワーバーに抜かれるかもしれない。シュワーバーは、ここまでのシリーズ26打席で打率.368と出塁率.538、OPS1.749だ。

 なお、ガルシアは、ワイルドカード・シリーズとディビジョン・シリーズも含め、今年のポストシーズンで打率.327と出塁率.352、7本塁打と20打点、OPS1.102を記録している。こちらのホームランと打点は、2020年にランディ・アロザレイナ(タンパベイ・レイズ)が打った10本塁打と2011年にデビッド・フリーズが挙げた21打点が最も多い。

 12年前のフリーズは、セントルイス・カーディナルスの選手として、レンジャーズのワールドシリーズ(WS)初優勝を阻んだ。それについては、こちらで書いた。

「ワールドシリーズのヒーローが、球団殿堂入りを辞退する」

 この年、フリーズは、LCSとWSの両シリーズとも、MVPに選ばれた。ガルシアもそうなるかもしれない――フィリーズかダイヤモンドバックスの誰かにもチャンスがある――1度のポストシーズンで連続受賞は、フリーズの他に8人。1979年のウィリー・スタージェル、1982年のダレル・ポーター、1988年のオレル・ハーシュハイザー、1997年のリバン・ヘルナンデス、2008年のコール・ハメルズ、2014年のマディソン・バムガーナー、2020年のシーガーに、昨年のジェレミー・ペーニャ(ヒューストン・アストロズ)がそうだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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