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イラン人記者が語るアジア杯準決勝と日本代表 イラン、韓国との差は?

杉山孝フリーランス・ライター/編集者/翻訳家
(写真:ロイター/アフロ)

差を生んだ先制点と組織力

日本代表はアジアカップ準決勝で、イラン代表に3-0で勝利した。今大会最強との呼び声も高かったチームを相手にしての快勝だった。この試合では、国内外から日本代表に称賛が寄せられた。では、相手国となったイランの記者は、この試合をどう見たのだろうか?

イランメディアの記者としてアジアカップを取材しているペジマン・ラフバル氏は、やはりこの大敗には衝撃を受けたと語っている。「(グループステージ最終節で)イラクとは引き分けたものの、イランはこの大会の最強チームだと思っていたからね」。ここまでの歩みを振り返れば、そう考えるのも当然で、だからこそ試合前にはイラン優勢を予想する声が多かった(ただし、ラフバル記者は試合前、「五分の勝負」と見ていた)。

試合の分岐点については、カルロス・ケイロス監督と同じ見方をしていた。「試合序盤にうまくスタートしたのは日本だったが、最初につくったチャンスをGK(権田修一)に止められた後でイランは態度を変えてしまった。すると、大きなミスから先制点を決められて、選手たちは精神的に崩れてしまったとカルロス・ケイロスは語っていた。それは事実だと、私も思う」。

ただし、その1ゴールがすべてだったわけではなく、ラフバル記者が感嘆したのは、組織立ったチームとしての日本代表だった。「イランの方が、力はあったと思う。しかし、日本は素晴らしかった。とてもオーガナイズされていたからね。だから、先制点の後、日本がずっと試合を支配し続けられたのだと思う」。

韓国には個の力があるが…

試合後、イランの選手たちからはゲームに関することよりも、ケイロス監督についての発言が多かったという。敗戦直後のロッカールームで指揮官が直接、選手たちに辞任の意思を伝えたためだった。

イランを2度のワールドカップ本大会出場へと導き、その舞台で20年ぶりの勝利をもたらした指揮官だが、国内での人気はあまり高くないそうだ。もちろん支持者はいるとしつつも、ラフバル記者は「8年も代表チームを率いたし、協会との衝突もたびたびあった。監督交代すべき時だった」と冷静だ。

イランはすでに、先へと目を向ける。ラフバル記者は、指揮官のみならず「4-5人は選手を入れ替えて、もっと新顔も呼ばなければいけない」と、新たなサイクルを始める重要性を強調する。

一方で、日本の世代交代を称えた。「若い選手が増えているし、他に大会に参加するはずだった選手(負傷で辞退した中島翔哉)がいたことも知っている。それでもチームとして機能しているのは素晴らしい。代表チームへの誇りと愛情があるのだろうね」。

アジアカップの後も、勝負は続く。今大会で初の決勝に進んだカタール以外にも、ベスト4には残らなかったもののオーストラリア代表や韓国代表と、今後も気の抜けない相手は多い。

イランは前回のワールドカップ・アジア地区予選で、韓国代表と対戦している。この勝負は1勝1分けでイランに軍配が上がっているが、実際の対戦を見たからこそ感じる韓国代表と日本代表の差について聞いてみた。

「日本の方が、ずっと強いと思う。韓国には、ソン・フンミンといった強い個の力を持った選手が2-3人はいる。しかし、日本の方が技術の高い選手が多いし、何よりもとてもよくオーガナイズされている」。やはり、“チーム力”が日本の強みだと強く感じたそうだ。

日本代表はまず、次の大事な一戦に集中する。決勝についてラフバル記者は、「カタールは日本にとって、厳しい相手になるだろう。ただし、カタールよりも1日長く試合間隔が空くのは、日本にとって大きなアドバンテージになるはずだ」と語る。

イラン代表はすでに大会を後にしたが、ラフバル記者はこのファイナルを見届けてから、テヘランへと戻るそうだ。

フリーランス・ライター/編集者/翻訳家

1975年生まれ。新聞社で少年サッカーから高校ラグビー、決勝含む日韓W杯、中村俊輔の国外挑戦までと、サッカーをメインにみっちりスポーツを取材。サッカー専門誌編集部を経て09年に独立。同時にGoal.com日本版編集長を約3年務め、同サイトの日本での人気確立・発展に尽力。現在はライター・編集者・翻訳家としてサッカーとスポーツ、その周辺を追い続ける。

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