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早稲田大学1年生の古賀由教が語る、エースの仕事とは。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
秋はこの隊列に加わるか(写真は昨年度)。(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

早稲田大学ラグビー部の1年生である古賀由教は、7月、20歳以下(U20)日本代表の候補選手として「TIDキャンプ(U20)」の第3、4回合宿に参加。対外試合で存在感をアピールした。第4回合宿最終日にあたる9日の流通経済大学後、思いを明かした。 

身長176センチ、体重80キロ。おもにタッチライン際のウイングを務める。

前年度は東福岡高校の一員として高校日本一に輝く一方、7月には20歳以下7人制日本代表のキャプテンに就任(アジアラグビー U20男子セブンズシリーズ マレーシア大会に出場)。今年3月は15人制の2016年度高校日本代表に加わり、アイルランド遠征を経験した。

この日は前半に連続失点を喫するなどして17―33と大敗も、古賀はキックオフ時の鋭いチェイス(味方がキックした方向の相手へのプレッシャー)を貫く。

序盤に0-19とされた直後のチェイスは、補球した相手選手の間近に接近。その相手はキックを蹴り返すも、その弾道はハーフ線付近で待ち構える味方選手の真正面へ飛ぶ。

20歳以下日本代表候補が攻撃機会を得て、相手の反則をもらいながら得点した。

試合終盤には、得点につながる快走でも魅した。グラウンド中盤左で、飛び出す防御網の裏へ抜け出しタッチライン際を駆け上がる。右側を追う仲間にパスをつなぎ、逆側のウイングである松岡祐斗のトライを演出した。

以下、単独取材での一問一答の一部(編集箇所あり)。

――失点後のキックオフで、ボールを深い位置まで追いかける。これを続けていました。

「高校日本代表でもずっとやってきたことです。僕には得意なプレーがないのですが、あれは、僕でもできる。ああいうプレーと、タックルすること。そこをアイルランドで評価してもらえていると思ったので、そこはしっかりやろう、と」

――松岡選手のトライの直前など、ランも繰り出す場面も多かった。

「あそこは、自分の目の前が空いた。声を出して、岸岡さん(智樹、早稲田大学のスタンドオフ)からいつものようにパスをもらって、あとは内側に(ボールを)返すだけでした。

山沢京平(明治大学1年で今回の合宿にも参加)はキックとかも蹴られるけど、僕はシンプルなことしかできない。きれいなステップとかも踏めない。でも、走って、身体を当てることはできる」

――このチームでの役割は。

「ボールをもらったらとにかく前へ。パスありきではなく、スピードでゲインライン(攻防の境界線)を越えようと言われています。このチームでは、それぞれのやることは決まっている。徹底してやったら、それがトライにも繋がる。自分の役割を意識したいと思います」

今年の20歳以下日本代表のメンバーは7月中旬をめどに発表され、8月にはウルグアイでの「U20トロフィー」に挑む。優勝すれば翌年度から上位トーナメントの「U20チャンピオンシップ」に昇格し、若年層強化の下地を強固にできる。

「TIDキャンプ」で指導にあたる中瀬真広バックスコーチは、古賀について談話を求められ、「強さ、ランナーとしてのポテンシャルはわかっている。ここからは(ボールを持たない時を含めた)本当のウイングの仕事をどう磨いてくれるか…です」と評する。

「ボールを持っていない選手がいかに前を見て、何を選択すればチャンスが作れるか。古賀に限らず、バックスの選手にはそうしたこと(成長)を期待しています」

この国では、団体競技の点を取るポジションに期待の若手が出ると盲目的に称賛される傾向がある。大学選手権で歴代最多15回の優勝を誇る伝統校にあって、古賀はぶれずに戦い続けられるか。

当の本人は「中瀬さんからは、どこに走ったらゲインラインを越えられるかを教えてもらっています。ボールをもらう前に(防御の目の前から空いている場所へ)動いたら、(目の前が)空く。(対外試合で)そういうことも、狙えたとは思います」と成長を実感しつつ、目の前のタスクに没頭する。

「1つひとつの合宿で、必死です」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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