遅れに遅れた平壌総合病院がやっと完成へ 計画では2020年10月が完成予定
韓国のメディアは今朝の北朝鮮の国営通信が報じた金正恩(キム・ジョンウン)総書記の南浦造船工場視察を大きく取り上げていた。
金総書記が戦闘艦を前に「戦争準備を進める上で海軍武力の強化が最も重大な問題である」と強調し、「重要戦闘艦船を世界的水準で建造せよ」と訓令していただけに特筆大書するのは当然だろう。
「朝鮮中央通信」によると、同じ日、党序列No.2の金徳訓(キム・ドククン)総理も平壌総合病院の建設現場を視察していた。
金総理も工事関係者らに「現代的な医療奉仕基地を一日も早く建設し、人民への贈り物とする党中央の崇高な思いを高く受け止め」工事に一層拍車を掛けるよう指示していた。
党機関紙「労働新聞」をみると、金総書記の南浦造船工場の視察は1面トップに、金総理の平壌総合病院建設現場視察は2面に掲載されていた。また、朝鮮中央通信が配信した二人の視察写真は金総書記が9枚で、金総理はたったの1枚だった。段違いの対応である。
労働党の序列は1位、2位であっても最高指導者の金総書記と行政担当の総理とでは格が違いすぎるので当然と言えば、当然の扱いだが、その一方で、北朝鮮が今、民生よりも軍事を優先していることがこのことを一つとってもわかる。
それにしても、平壌総合病院がニュースで取り上げられたのは久しぶりだ。
平壌総合病院の建設は2019年12月に開催された朝鮮労働党中央委員会で決定した、鳴り物入りのプロジェクトである。
確か、翌年の2020年3月17日には早くも金総書記の出席の下、着工式が行われ、式典での演説で金総書記は驚いたことに、この年の10月10日の労働党創建75周年まで完成させるよう命じていた。
それというのも、平壌総合病院は▲元山とカルマ海岸観光地区開発▲三池淵郡開発▲漁郎川水力発電所の建設と並ぶ、党創建75周年記念事業、即ち、北朝鮮の4大国家プロジェクトの目玉だったからだ。
計画では、医療サービスを人工知能化(AI)、情報化(IT)して、最上級の先進医療サービスを提供できる世界レベルの病院にすることになっていた。
着工から僅か7か月で世界に誇れるような近代的な病院建設はどう考えても不可能とみていたが、案の定、4か月後の7月20日に建設現場を訪れた金総書記は「今になっても建設予算を立てておらず、めちゃくちゃに経済組織事業を行っている。設備や資材の保障事業が政策的に脱線している」と建設が捗っていないことに激怒し、幹部全員を交代させてしまった。
この時から3年半経った先月15日に開かれた最高人民会議での報告で金総書記は「保健医療部門でも人民に対する医療サービスの質を高めるための活動をよくしなければならない」と述べた部分で「今年、平壌総合病院を完工して開院する」ことを明らかにしていた。
ロシアへの武器売却で財源が確保できたのか、新型コロナウイルスに伴う国境閉鎖が解かれ、資材や設備、医療器具などが中国やロシアから調達できたのか定かではないが、今回、金徳訓総理が事前視察したところをみると、病院はどうやら完成目前のようだ。
北朝鮮はミサイルなどの兵器開発は想像を絶するぐらい早いが、経済建設に限っては遅れが目立つ。このことを一つとっても経済よりも軍事最優先であることを窺い知ることができる。
完工式は早ければ、金日成(キム・イルソン)主席の生誕日(4月15日)か、30周忌(7月8日)あたりが考えられるが、遅くとも金総書記が新型コロナウイルスとの戦いに「勝利」宣言した日(8月10日)までにはやるのではないだろうか。